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「10惑星ミールス」

(写真は関係ありません)
夕方の便で沖縄に帰ってきた。
どどどどっグィーンって、飛行機の機体がいつもよりも大きく感じられたのは(ジャンボじゃないのに)、たぶん1週間の旅でわたしがちいさくなったからだろう。
概ね旅で起こること、見ること聞くこと逐一に、「なにそれなにそれ」とざわめき立つから、結果しっかりと消耗する。もちろんそれを、「たのしさ」と呼ぶのだけれども。
「飛行機に乗れば那覇だー」と思ったら、たちまち安心して飛んだそばから寝てしまった。

で、到着。
ゲートをくぐればたくさんの蘭の花のお迎え。むあーっとした湿気、甘い匂い。タクシー乗り場やバス停留所にたむろしてる人たちの気だるくってゆるい感じ。
ただいま沖縄!

福岡から大分を経由して宮崎へ。そして鹿児島空港から那覇へ。なんだかいろいろあり過ぎて、もうずいぶんと前のことのよう。
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毎年この夏の時期は、子どもたちの乗馬の国体が九州のどこかであるので、それに合わせて休みをとっている。
今年は宮崎、綾町の馬事公苑で開催だった。
とても緑豊かな公園で芝生がふかふか、土も真っ黒で、さぞかし味の濃い野菜が採れそうである。綾町の「ほんものセンター」で並ぶ野菜や果物、お弁当の煌めきに、心ときめくときめく。

少なくともわたしの場合、「暮らしの健全さ」というものがあるとしたら、それは子どもたちのおかげでなんとか担保できてるようなものなので、そんな子らが活躍する貴重な場面は見逃せない。
「たった70秒かそこらの試合のために、いったい何時間練習するのか」と、一足先に10日前から鹿児島の牧場入りしていた子らは、ため息をもらしていたけど。
そうなのだ!
2年の歳月をかけて育ったパイナップルも食べるのは一瞬である。
コツコツ貯めたお金だって一夜で使い果たせる。
だからこそプロセス。その過程を思い存分味わおうじゃないか。今、尊い今です。

今回は仕事も兼ねて、大分耶馬溪の「レストランサルディナス」で「カレー、ときどき水餃子」重版記念イヴェントなるものを開催してきた。
わたしが拵えたのは、「10惑星ミールス」。
(独断と偏見に満ちた)太陽系の惑星をイメージした南インドカインド料理をワンプレートに仕立て、みなさんに召し上がっていただいた。

太陽=全てにエネルギーを与える。
獅子座の守護星。
まずは米、ごはん。
真ん中にはカレーリーフの黒い実を飾った。黒点みたい。それがあると占星術の太陽のマークになるよ。ターメリックで黄色に、カラキとカルダモンで香り付け。
「ゴールデンライス」。

月=神秘的な満ち欠けの星。冷たく、やさしい。
蟹座の守護星。(松村潔説では牡牛座)https://www.youtube.com/watch?v=P6TREICJh_Q
女性の月経周期と連動していたり、臓器に関する漢字のにくづきにも多用されている。
雌牛の乳を発酵させたヨーグルトをバタフライピーで怪しい薄紫に色付けした。
「月のミルク」

水星=太陽系ぶっちぎりの瞬足の星。快活で爽やか。機転が効く。
双子座と乙女座の守護星。
ミントやコリアンダーなど爽快感あるハーブでチャトニ。ライムでキリッと感を。
「グリーンチャトニ」。

金星=愛とエロスと芸術の星。ちょっと頭がおかしい星。
牡牛座と天秤座の守護星。(マツキヨ説では蟹座)
ならば旬のマンゴーでしょ。特にアーウィン種。豊満な曲線美、果肉のねっとり感。赤、黄、緑、黄緑のグラーデーションがゴーギャンの絵画を彷彿させる。すなわち熱帯の艶っぽさと哀しさ。「ウルシ科」というもの十分そそる。合わせたのは島南瓜。こちらも豊満ボディで色はオレンジ。
「マンゴーと島南瓜のコランブ」

火星=好戦的で瞬発力がある赤い星。
牡羊座の守護星。(マツキヨ説では蠍座)
闘鶏やるくらいなんだから雄鶏ってとても火星的。なんならうちのクロちゃんもめちゃ激しくてパンチ効いてるし。
カシミールチリと沖縄の島唐辛子を効かせた「辛くて赤いチキンカリー」

木星=豊穣さと幸運、発展の星。太陽系でいちばん大きな星。
射手座の守護星。
木といえば緑、緑といえば青菜。
農家さんいわく、「どんどん増えるから畑が覆われて困るくらいなのよー」という空芯菜をチョイス。
「空芯菜のサグ」

土星=秩序と制限の星。土台を築く。どっしりしてる。
山羊座の守護星。
「土の安定感を表すには芋が最適じゃ!」という啓示を受けたので(嘘)「じゃがいも」を抜擢した。
じゃがいもって安心するよね、主食にもなるしね。
「じゃがいもとカレーリーフのフライ」

お次はトランスサタニアン、土星以降である。

天王星=発見と閃きの星。先鋭的な視野。
水瓶座の守護星。
ココナッツってすごい。果汁はジュースとして美味しいし、オイルもとれるし、発酵させたら酒にも酢にもなるし、果肉はしぼったらミルクにもクリームにもなるし、乾燥させて粉にしたらグルテンフリーの人にも重宝されるし、甘いから砂糖も作れるし、外殻は器にもなるし、タヒチアンダンサーのココナッツブラにもなるし(下記参照)、

満面の笑み

繊維もとれるからタワシみたいにも使えるって、これらを考えて思いついた人たちの閃きたるや。
「ココナッツチャトニ」

海王星=曖昧で漂う星。なんにでも溶け合う。で、海といったら魚。
魚座の守護星。
中津の道の駅で目が合ったピッカピカのキビナゴ!きれい!
「キビナゴのピックル」

冥王星=破壊と再生の星。いちばん遠くにあるけど、その影響力は甚大。
蠍座の守護星。(マツキヨ説では牡羊座)
破片は小さいながらも、ものすごく辛くてものすごく酸っぱい。おまけにレモンの皮の苦味も相まって覚醒されそう。
「青マンゴーとレモンのピックル」

まずは、ひとつひとつの惑星を味わってから、最終的には全部混ぜる。全惑星ぐるぐる混ぜて食べることによって、「わたし山羊座なのー」といった、太陽星座のみに偏った意識を変革させる目的のミールス。なんて大それた!笑

せっかくなので、参加者の方には「手食」をお勧めした。
はじめはぎこちなかった指先も、「お寿司だって手で食べるじゃないですか〜」と声掛けしたら、とたんに恐れを手放したのか、最後には本来備わっているプリミティブさをみなさん発揮されたようだった。

なによりである。

この日は50人分、4回に分けてサーヴした。
朝の6時から仕込みし、ほぼ休みなしで終わったのは22時半。
合わせて各回ごとに本を購入してくれた方にはもれなく手相観のサービス付き。
ワーカホリックの我が妹の、「まだまだ!気合い入れて行くどー!」の怒声が厨房に響くなか、根本、40代最後の大仕事であった(多分)。

有無を言わせず、次の日は温泉へ。だーれもいない、「もみじの湯」という秘湯に末っ子とふたり、泳いだり浮かんだり岩に寝そべったり水を掛け合ったりで満喫した次第でありました。

さて、今月末は「森岡書店」でトークショウがあります。
夫に「suica持ってる?」と確認されたくらいに超超久しぶりの東京!

銀座でお待ちしてます!




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