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「東京回想」

オオシマゼミの鳴く声は、高江の森を思い出す。
四方八方、キュイーンキュイーンと規則性を持って響くせいか、目をつむるとあちらの世界に連れ去られそうになる。
たぶん、UFO的な音なんじゃないか、と。
初めて聞いた人はそれがまさか蝉だとは思わずに、「この電子音なんですか?」と怪訝そうな顔をする。この蝉、内地にはいないけどジャマイカにはいるそうです。

連休明けて今日、店で出している「きょうのひと皿」(ワンプレート定食)をおかわりしてくださった方がいた。すっごく稀有、嬉しい!
「だって、カレーだったんですもの」とお客さんも嬉しそうで。
わたしの人生はカレーに支えられている。
ちなみに今日の献立は、丸麦と揚げ茄子のヨーグルトソース、島南瓜と百花蜂蜜とカシューナッツのマリネ、ベビーリーフサラダ、ミニミニしめじとごぼうとオクラのタマリンドスープ、鶏肉団子のカレー、バスマティライス&ヤーマンライス。
北海道東川で買った百花蜂蜜が思いのほか超フローラルで焦ったのなんの。なーんにも考えずに「蜂蜜ね!」と南瓜にかけてしまったから、それを中和すべくローズマリーとキャラウェイの力を借りることに。ごはんに合わせるから調整せねばなりません。
今日のカレーは豊洲市場のスパイス屋さんで買ったスパイスミックスを使ってみた。商品のポップには、「インド人が調合してます!」と油性ペンで堂々と書いてあって、うっかりそれに反応してしまったのです。
「インド人が調合してます!」って、「本場ですよ」ということを伝えたいのだと思うけれど、なんか可笑しみ溢れてていいなぁ。
わたしが海外でおにぎりを結んだら、「日本人が結んでいます!」って書かれるのかと思うとなんか照れるけど、てか、そこまでおにぎりはメジャーかな?

豊洲市場では百合根と利平栗とイチヂクを。
イチヂクは長男が「今すぐ食べたい」ということで、その場で洗ってもらって買い食いに講じた。鼻歌うたいながら、まるでブレードランナーのような近未来的な豊洲市場内でイチヂク丸齧りする姿は場にそぐわず実によい。
他には林屋海苔店の上等海苔、帆立の貝柱(福田リカさんに習って本味醂に漬け込むつもり)、切り昆布と切りスルメ(松前漬け用)、花椒などなど。
わたしと長男、潤ちゃんはウキウキしながらルンルンでショッピングできるけど、長女と次女にはさほど興味がないようで、「ベンチで座ってるねー」と待機。唯一、フォークリフトには「あれ乗りたい!」と興味津々だった。
そういえば前日は、秋葉原の「アニメイト」組と、珈琲「蕪木」組に分かれたのだった。
成長するにつれ、興味の矛先もいろいろになる訳だ。

今回の東京ステイは友人の結婚式のため。
彼女のことは9歳くらいから知っているので、なんていうか現時点での集大成を垣間見た感じであった。
胸元がスーッと大胆にあいたデザインは、ティーンの頃の彼女のとんがった感性が、さらに逞しく研がれ磨かれたようなウェディングドレス姿だった。すなわち、すごく似合ってて素敵でした。
それに結婚式って、ちょっとずれると「借りてきた猫」みたいになりがちだけど、ちゃんと場を自分のものにしてて流石だなぁーって。
そして、スピーチの際に次々泣いていく様子は、彼女いわく「集団セラピーみたいだったでしょ?」と。確かに!
「ここで言わないでどこで言うの?」といった手紙は、気迫と想いが相まって、ある意味、来客を全幅で信頼してる前提の式だった。

うちの子どもたちにとっては初めての「格式ある」結婚式。

わたしたちの結婚式は葉山の海の家で、なんならスイカ早食い競争もあったり、ウェディングドレスはギリギリまで過ごしていたたサイゴンで急ピッチで仕立てた白別珍のアオザイと、すべてがオープン(行き当たりばったり)だったので、後から「あのとき、きこさんたちの結婚式にたまたま居合わせたんですよ」と知らない人から声を掛けてもらうことも。

だからこそわかる。
今回の友人の結婚式は、「結婚式」というものをちゃんと信頼するべき行事として執り行っていたことを。

さすが、山羊座の彼女だけある。(落とし所はそこ)



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