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【小説】丑三つ時ブランチ

生田六介が深夜ラジオを聴いていると、決まって金曜26時にノイズが入ることに気づいた。

耳を澄ますと、「ソーキそばが食べたい」とか「ドーナツ食べたいよう」とか、何かしらの食べ物を所望する声がする。
調べてみたところ同じような現象が観測されたという情報はなく、六介は論理的に考えて「こりゃお化けだな」と結論づけた。

彼らが取りうる選択肢は2つ。お祓いを頼むか、2人でよろしくやっていくかである。
金曜26時のラジオにて交信すると、「パンケーキが食べたいわん」というオーダーを受信した。六介はすぐさま台所で無骨なパンケーキを焼き上げ、メープルシロップをアホほどかけてコーヒーと一緒に出してやった。

翌朝、ちゃぶ台の上のパンケーキは綺麗に平らげられており、洗面所の鏡に「ごちそうさまでした おいしかっタ」とメープルシロップで書かれていた。

六介は顔を洗って鏡を丹念に磨き、万年床に戻って同居人のマグカップを探すのだった。

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