月が綺麗ですね問題

みなさんこんにち和訳。

<冷凍チャーハンをチンしたら量(かさ)が半分以下になってしまう現象>に名前をつけたいきくっちゃんです。
なんか哀しい。
あと、冷凍食品の一口目の美味さとげっぷの臭さが正比例してる現象にもそろそろ名前を与えたい。

月食

数日前、皆既月食でした(※アメブロ、2018年2/3の記事です)
1月31日です。

綺麗でしたね。
僕も5分おきに家から出ては空を眺めてました。
さて。
これです。 

月といえばこれです。

定期的に目にしたり耳にしたりする、これです。

先に言っておきますけど、これ、死ぬほど嫌いです。
この話自体も、それを嬉しそうに言うやつも、さらにそれを聞いて感心するやつも。
※これを送ってくれた人が絶対この記事見ませんよーに。

では本題。↓これです↓

「月が綺麗ですねって、昔の人はI LOVE YOUって意味で使ってたらしいよ♪素敵だよね」

きつい。きつい。
きびしい。つらい。しんどい。香ばしい。

1.夏目漱石
そもそもは
“夏目漱石がI love youの訳として言ったらしい”
って都市伝説がスタートです。
生徒が「我君ヲ愛ス」と訳したのに対し、あほかお前、日本人はそんな台詞言わん。「月が綺麗ですね」とでも訳しなYo。
って。
かの漱石先生が。

この部分の伝承だけならまだ理解できます。
あるいは本当に漱石が言ったかも知れない(そんな原典は見当たらないらしいけど)。
何より、前後の文脈がイメージできる。
その時代の空気もイメージできる。
おいおいおいもっと自由にやろーぜ!って微笑ましいシーンかもしれないし、生徒のセンスのなさをdisったわりと大人気ないシーンかもしれないし、こんな風に表現しちゃう俺(漱石)カッケーっしょ?って得意気なシーンかもしれない。
なんなら、毎日違う訳を披露していたのかもしれない。
まあ、阿呆が飲み会でウンチク垂れる話としてはいいと思います。


2.公式和訳
腹が立つのは、なぜかここから、
「I love you」=「月が綺麗ですね」
って訳した時代があったのよロマンチックじゃね?
みたいな、どう考えても脳ミソの短い展開になってきてること。

夏目漱石つったら偉くて凄くてセンス良くてみんなの憧れ、レペゼン「昔の日本人」で、その人がそう訳しちゃったすげーよね。 昔の日本人やばいよね。
って。

森鴎外がSymphonieを「交響曲」と訳したように、
西周がPhilosophia(Philosophy)を「哲学」と訳したように、

夏目漱石がI love youを「月が綺麗ですね」と訳してさ、あの時代にはそれが公式和訳だったんだめちゃロマンチック、むしろ今の俺らそれ忘れてね?
って。


ばかか。


ばかか。


んなわけあるか。

仮に、仮に漱石がそう訳したのが事実だとして(しつこいようだけど、そんな事実はないっぽい)、あくまで文学的表現の話であって、また、日本人と対象との距離感の問題であって、決して「そういうロマンチックな時代が日本にはあったぜ」って例ではない。


3.文学的表現
あなたが好き、ってのをどう表現するか。
これこそがそもそも表現者の腕の見せ所なわけで、
相手との関係や、文脈や、周りの状況によって
「月が綺麗ですね」だったり
「朝が来ないで欲しいです」だったり
「味噌汁が好きなんです、豆腐だけの」だったり
「赤いバッタ知ってる?」だったり
「はじめようか天体観測」だったり
「安心な僕らは旅に出ようぜ」だったりするんじゃい。

文学的表現なんじゃい。

日本人はそういうの得意なんじゃい。
直接対象に思いを伝えるよりも、別のものに思いを投影させたり、同じ時間や空間を共有したり、そういう方が好きなんじゃい。
そこには昔も今も、漱石も芭蕉もくるりもカリスマドットコムもない。
ずっとずっと続く日本人の素敵な一面なんです。

だから

古池や蛙飛び込む水の音

が気持ちいいんじゃい。

月が綺麗ですね

が時としてI love youの代わりになるんじゃい。

それをI love you公式和訳の引き出しに一回しまってから、偉そうに取り出して感心すな!
披露すな!


4.披露すな
えー、小中学校くらいん時、クラスに必ず 昨日のテレビの面白かったところを“報告”してくれるやつ、ってのがいました。

「昨日おまえ、まっちゃんおまえ、ごっつええ感じでなんかカメレオンのカッコしておまえ、ほんでお尻から卵産んでおまえ、、めちゃおもろかったっちゅーねん」

・・・・・。

どうしたらええねん。
その報告、俺らはどうしたらええねん。

でもまあいい。
俺らはガキンチョだった。まっちゃんではない上にお笑い芸人でもなかった。
だからまあいい。

ではもし、今大人になった僕たちの前に大人の報告君が現れて

「昨日見ました? もうすんごい日村さんがもう面白くてー、後藤さんがそれに突っ込んでてえ、、、温度差ありすぎて風邪ひくわー、って。例えツッコミ? もうめちゃ面白くてー」

って報告してきたら。
披露してきたら。

しかも、もっとひどいことにその報告君がお笑い芸人だったり放送作家だったりしたら。。。

そんなやついねえよ、って思いますよね?

いるんです。
確実にいるんです。

クリエイターとか代理店の人とか、もっとひどいと作家とかミュージシャンとか。なぜかそういうやつの中に一定数いるんです。

「夏目漱石ってI love youを月が綺麗ですねって訳したんすよ。すごくないっすか?」
って言い出すやつが。


#人の手柄
#そこお前関係ない
#それがお前の仕事ちゃうん
#むしろ漱石ライバル
#何をクリエイト
#そもそもが都市伝説

報告すな。
披露すな。
呼吸すな。
ほんで、こっち見るな。


一応僕(きくっちゃん)も、そういうことを仕事にしてるんです。
月が綺麗ですって言うかわりに、どうにか自分の「あなたが好きなんです」を探してるんです。
分かってくれ。


あ。えーっと、教えてくれようとしたのかな?
助けてくれようとアイデア出してくれたのか?


そっか。
どうもありがとう。
助かる。
すんごく助かったのでもう二度と来ないでほしい。


って、消えゆく月を見ながら思いました以上ですまた来月。

(2018.2.3のアメブロ記事より移植)

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