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【ゆきnote】ドイツでも起きている社会における学歴偏重化。現代の子どもたちにあったやり方を考えていきたい。

こんにちは。中野吉之伴の編集アシスタント、ゆきのです。

前回は、小学4年生までの成績で進路が分かれるドイツの学校教育システムについて書かせていただきました。本人の適性を見た上で、親の学歴や収入や職業には左右されずに、1人1人が社会に出るために必要なことを身につけられる教育の場を提供するのが本来のコンセプトだったのですが、 今、その教育システムが充分に機能しているのかが問われています。

ニワトリが先か卵が先か…という話ではあるのですが、現在、高学歴な人材を求める社会の要請は高まる一方ですし、親や若者も、少しでも社会に出てからのチャンスを増やすためにと、高度な専門知識を身につけなければと考える人は増える一方です。 

かつては、必ずしも高学歴でない人であっても、きちんと定職に就いて安定した生活を送ることができていたのですが、現在は必ずしもそうではなくなっているからです。(もちろんそれでうまくいく場合もあります)

これまでドイツでは、マイスター制度が社会の基盤を長年支えてきたと言われています。レアルシューレやヴェルクレアルシューレを卒業した若者が、専門学校と並行しての現場での実習を行い、国家試験を経て、専門性と実務経験を備えた次世代の担い手として社会人になるのがマイスター制度の基本的な仕組みです。

これが、自動車や家電をはじめとする工業技術や、ドイツワインやドイツパン、マイセンの磁器等に代表されるような職人技による食品や工芸品の生産、医療福祉や教育の分野で即戦力となる人材を育てるシステムとして、社会の基盤を支えてきました。

しかし、大量生産・大量消費が当たり前になり、労働市場がより流動的になった現在では、従来のマイスター制度だけでは必ずしも将来安泰とは言い切れなくなっているのが現実です。ただ手に職をつけるだけではなく、より高度な専門知識を持たなくては社会で生き残れないと考える人は年々増え、全体に高学歴志向を強める一因となっています。

また、そもそも小4までの学校の成績で子どもを選抜するような現在の仕組みが、より多様な学びの機会を保証できていないのではという疑問もあります。例えば外国人家庭出身の子どもで、本来もっと学力が伸びる可能性があるにも関わらず、充分なドイツ語が身に着いていないために学校の成績が伸び悩んでいるというケースがあります。

多くの移民・難民を受け入れているドイツで、こうしたドイツ語が母国語でない子どものサポートにより力を入れていかなくては、それが将来的に出自による格差を生んでしまうのではという指摘もあります。


学習障害をはじめとする様々な発達障害を持つ子どもにとっても、現行の学校の授業のあり方や評価の仕組みが不利になってしまうケースが少なくありません。そもそも、障害があってもなくても、子どもの理解力や向学心の成長速度には個人差があって当然なので、現行の一律の評価や進路選択の仕組みを変え、より多くの子どもにフィットする教育の場を求める声が上がっています。

一部の私立の学校や、公立の総合学校では 従来のように成績によって進学先を分けるのではなく、 より柔軟にカリキュラムを選択したり進路を変更したりできる体制を整えることで、子どもに学習の機会を開こうとしていますが、全ての子どもがそこにアクセスできるわけではないのが現状です。

(続く)


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