今、フィリピンでキチママと暮らしてます。 第三期 (1)

新たな火種

フィリピンの首都マニラ首都圏から北へ100kmにあるクラーク経済特区には国際空港やショッピングモール、高級リゾートホテルやゴルフ場、レジャー施設などがあり近年もっとも開発が進んでいるエリアの一つだ。

このクラークで従業員が1200名以上いる日系企業で働く私はその頃7年目の中堅社員として多くの部下を持つマネージャーとして責任がある立場にあったが、そんな私にも、一つ大きな悩みがあった。

それが、私の職場の人たちと度々問題を起こしてきたキチガイなママこと、キチママの存在だった。

その日もいつものようにデスクで仕事をしていると職場の後輩が「自分の部署にいる子が先輩の奥さんから嫌がらせを受けているらしいんですよ」と相談してきた。私は「またか・・」とため息と憤りを感じながらもその話をきいていた。

その従業員というのがヨシコ(仮名)というフィリピン人女性で、もと私の部下だった。

実は相談に乗った時点では、なぜ私の奥さん、すなわちキチママが彼女に嫌がらせをしてきているのかと不明であったがこれまでの経緯から疑いもなく私は「どうせまたキチママが悪いだろう」という考えで話を聞いていた。

その理由がこれまで幾度にもわたりキチママが私が働いている会社の従業員に嫌がらせをしてきて、標的となった従業員をSNS上で誹謗中傷したり、脅迫メッセージを送り付けるなど問題を起こし、そのたびに私が関係者に謝罪した経緯が何度もあった。

だからそのあとすぐに私は「また、うちの従業員と揉めてるの?やめてくれって前、言ってるよな?」
と彼女に感情的なメッセージを送ったのだが、キチママはすぐ返信してきて、「あんたんとこの社員が何をしたのか話させて、きっちり謝罪させなさい!じゃないとまたあんたの会社に迷惑かけるわよ。そうなったら困るのはあんたでしょ」という脅迫するような内容が書かれていた。

昨日まで機嫌がよく、年末は海の見えるリゾートで過ごそうとホテルを予約したり、クリスマスのギフトの話をしたりお互いの関係がよくなっていると思ったが・・。

その後、私は部下に頼んでヨシコの周りでおきている問題を調査してもらったところ、最近従業員の間で「ヨシコが私の後輩に色目を使っている」という噂が流されているようだった。なぜそんな噂が流れたのかさらに調べていったところ、ヨシコは最近新しく配属された部署で社員教育を行っていたが、彼女の強気な性格や物言い、そして若くして役職者に抜擢されていることが昔からいる社員たちから反発を買ったのではないか、というのが私の最終的な見解であった。

そして、恐らく彼女に対して敵意を抱いている社員がキチママにコンタクトを取った。もしくは会社内の情報を誰でもやり取りできるというSNSのグループチャットで出た話だったのかもしれない。

どちらにせよ、ヨシコに不満を持っている社内の人間が単純なキチママを利用して問題を起こしている。私はそう直感した。なぜなら、キチママが絡んだ過去の問題全て、そういった社内の人間関係のもつれから発展していた経緯があったからだ。

本来、そういった従業員間の個人的なトラブルにマネジメントは首を突っ込まない。部署間の問題や業務上のトラブルとなると別だが、私も従業員の噂話一つ一つ聞いて解決していくほど暇でもない。そもそも従業員が1000人以上いる会社で当時半分近くの従業員がいる部署をみていた私にそんなことできるわけがない。

だが、キチママがそういった話を聞き、会社のマネジメントの一員である私に話をするとその従業員に言うだけで、状況が一変するだろう。実際にそういったことが過去何度もあった。

その日、仕事で朝から忙しくてイライラしていたこともあったが、その上で個人的なことで仕事に集中できないことにさらに頭にきた。キチママに対しても、そのキチママを利用している連中に対してもだ。だから私は何らかの形で自分の立場を明確にしたいと思ったが会社でそれをやると自分の職務が絡んで余計に話をややこしくするので、その日の夜、私はこんな書き込みをSNSで投稿した。

 「日本には『虎の威を借る狐』ということわざがある。狐は自分が虎だと勘違いして周りに威張り散らしているし、その周りもその狐を虎のように扱っているので、見るに堪えない。そしてその周りの人たちはその狐を利用して自分の利益を得ようしている。なのでそんな人たちにこう言いたい。その虎は威を借る狐もその狐を利用する者たち、どちらもサポートする気はないし、その虎の邪魔するならどちらも敵である」

その投稿はなんと100件以上のいいね!が押され、多くの人たちから「よく言った!」というコメントが寄せられていた。そのことから、すでにこの話は勤務先の従業員の間で広まっているのだろうと思った。

私のSNSを多くの職場の人たちがフォローしているため、すぐにキチママやキチママを利用しようとしている人たちに情報が拡散すると確信していた。事実、その数時間後、その投稿にキチママから「F〇CK YOU!」というコメントが書き込まれていた。

私のこの投稿がキチママの顔に泥を塗ったのは言うまでもない。

 

キチママはプライドが高い。


だから彼女にとって私の取った行動によってそのプライドを傷つけられたのだ。彼女にとって、面子こそ全てなのだ。

 

この私の取った行動が新たな火種となり、この問題をさらに炎上させてしまったことは言うまでもない。
 
 
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