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あなたとほろびてが出会うためのnote 細川洋平インタビュー「ほろびてのこれまでとこれから」

劇作家・演出家・俳優の細川洋平が主宰する演劇カンパニー、ほろびて
12月10日(日)に吉祥寺シアターにて上演を行う「『センの夢みる』リーディング公演」は、来年2月に東京芸術劇場にて上演予定の新作を、ムニ主宰・宮崎玲奈に演出を委ね、作品の新たな可能性を模索するワーク・イン・プログレス形式の公演です。12月8日(金)9日(土)にはほろびての過去代表作の無料上映会を行い、ほろびての演劇をまだ観たことがないという方にぴったりの3日間のプログラムとなっています。
ほろびての演劇をまだ観たことのない方が彼らと出会う第一歩となることを願い、担当職員によるエッセイを掲載いたします。

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まずは、「ほろびて」について簡単な紹介をお願いいたします。
細川:細川洋平作品の上演を主な目的とした演劇カンパニーです。初期は大きなブランクもあり公演のペースも遅かったこともありますが、設立してまもなく14年となります。

ほろびてではどのような作品をつくっていますか?
細川:戯曲としては小さな会話劇に亀裂が入り、ふと大きなテーマにつながるような作品を作ってきました。演技的なアプローチでは、現代口語演劇によく見られるような、細やかな演技を軸に作っています。まだまだ試したいことややってみたいことがあり、今後もいろいろと作品の振り幅を広げていこうと考えています。

『苗をうえる』(撮影:渡邊綾人)

12月9日(土)に上映を行う『苗をうえる』はどのような作品でしょうか?
細川:どうやっても人を傷つけてしまう、ということから考え始めた作品で、ある朝、左手が刃に変わってしまった女子高生を中心とした物語です。

『苗をうえる』に込めた細川さんの思いを教えてください。
細川:加害やケア、それに対する態度とはどういうものがありえるのか、を考えられたらと思いながら作りました。そして善意や好奇心から巨大な破壊を生んでしまったマンハッタン計画やオッペンハイマーのこともこっそり織り込んでいるので、今回の上映で改めて気づいていただけたらうれしいなと思っています。

『苗をうえる』(撮影:渡邊綾人)

12月8日(金)に上映を行う『あでな//いある』はどのような作品でしょうか?
細川:無駄話ばかりで一向に髪を切らない美容師と髪を切りに来たのに切ってもらえない客のおかしなやりとりからはじまり、思わぬ方向へ転がっていく作品です。拒絶や否定について、考えたいと思い作りました。

同じく『あでな//いある』に込めた細川さんの思いを教えてください。
細川:NIRVANAの『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』で、曲の最後にカート・コバーンが「a denial」と連呼するのですが、タイトルはそこから取りました。否定をされた時に黙るのではなく、こんなふうに体を軋ませて叫べたらなんてことを考えながら。同時に、何かを否定したり拒絶するためには、もしくはそれに対抗するためには、力をぶつけることしかできないのかな、という疑問を作品に込めました。

12月8日(金)、9日(土)の上映会にあたってのコメントを頂けますと幸いです。
細川:作っては次、作っては次、とひたすら前に進んでいくだけになりがちな中で、過去作品の映像を上映するという機会を作れたことがうれしいです。しかも両日ともトークゲストをお招きすることができました。8日『あでな//いある』にお付き合いいただく中川瑛さんは、加害者のためのコミュニティ「GADHA」を主宰している方です。『あでな〜』を出発点としてさまざまに思いを巡らせることができるのではないでしょうか。9日『苗をうえる』では臨床心理士の東畑開人さんにご登壇いただいます。東畑さんのご著書は多くの方におすすめしたいです。どのような視点で作品を捉えてくださるのでしょうか。
この2日間はぼくにとってもご褒美のような時間です。お二人と、さまざまにお話ができればと思っています。
とてもいい時間になると思います。無料ですし、いっそトークだけでもご覧いただきたいです。たくさんの方のご来場をお待ちしております。

(『あでな//いある』撮影:渡邊綾人)

12月10日(日)にリーディング公演を行う新作『センの夢みる』はどういった作品になりそうでしょうか?
細川:ふたつの、価値観の違う時代を演劇的なウソで強引に接続しました。それぞれの時代に生きる人々が語る言葉の重みの違いを、登場人物たちは無意識に知っていく。劇的な言葉とその周辺の言葉を探していくような作品に、戯曲のレベルではなってくれたらと思っています。

今回のリーディング公演に対する細川さんの思いをお聞かせください。
細川:本公演と同一キャストを異なる演出家でリーディング公演として上演する、という試みに賛同してくださったキャストのみなさん、スタッフのみなさん、吉祥寺シアターのみなさん、そして演出家の宮崎玲奈さんに感謝いたします。
今回の上演で、戯曲を読む俳優の声を聞き、ディスカッションで劇場にいてくださるみなさんの声を聞き、それを自分の中に持ち帰り、よりこってりした作品に仕上げられたらと考えています。まずは生まれたばかりの剥き出しのままの戯曲をぜひ確かめに来ていただけたらうれしいです。
そして、2024年の2月2日(金)〜8日(木)の東京芸術劇場シアターイーストでの本公演でどのように進化・深化するのか、ぜひ見届けていただけましたら。どうぞよろしくお願いいたします。

細川洋平
78年2月14日、青森県生まれ、埼玉県出身。早大演劇俱楽部を経て劇団「水性音楽」を結成・主宰。俳優として演劇弁当猫ニャーに所属。両劇団の解散後、演劇カンパニーほろびてを立ち上げる。2023年度、セゾン・フェロー。

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ほろびて『センの夢見る』リーディング公演

2024年2月に「芸劇eyes」にて上演予定のほろびての新作。
演出をムニ主宰・宮崎玲奈に委ね、新たな可能性を模索するワーク・イン・プログレス。

12月10日(日)13:30開演
上演後に観客とのディスカッションを実施。

ほろびて過去代表作の無料上映会を開催!

12月8日(金)18:00
上映作品:『あでな//いある』(配信版/ 2023)
トークゲスト:中川瑛(GADHA代表)

12月9日(土)18:00
上映作品:『苗をうえる』(記録映像/ 2022)
トークゲスト:東畑開人(臨床心理士)

・公演詳細

・ご予約
(公財)武蔵野文化生涯学習事業団

Peatix

※無料上映会はPeatixにてお申し込みください。

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