あなたと東京夜光が出会うためのエッセイ①

2023年9月8日(金)~18日(月)、吉祥寺シアターにて上演される、劇団 東京夜光の新作公演『fragment』。
2017年の設立以来、2020年には「MITAKA “NEXT” Selection 21st」へ選出、2022年には本多劇場で公演を行うなど、驚異的なスピードで躍進を遂げてきた東京夜光が描く、1944年と2023年の東京の物語。
一人でも多くの方が彼らと出会うきっかけとなることを願い、吉祥寺シアターでは全3回のエッセイを掲載いたします。

全部、今思ってること、書き留めておこうと思って。この感情、今しかないんで。

『fragment』より

2023年5月。
私が東京夜光と出会ったのは、ほんの3か月前、吉祥寺シアター稽古場にて行われた制作打ち合わせでのことだった。
作・演出の川名幸宏さんのまっすぐな演劇観に、私はすぐさま魅了され、同時にどこか懐かしいような深い親しみを覚えた。

東京夜光は、演劇界の希望だ。
わずか6年という恐るべきスピードで躍進を遂げてきたそのあゆみを抜きにしても、私は東京夜光に光り輝く演劇の未来を見出さずにはいられない。
彼らはどこまでも実直に演劇と向き合い、演劇を信じ、演劇を疑い、奇跡を待つように祈りを捧げ、そして何より(これは私の憶測でしかないが)、演劇を愛している。

真実へと繋がる長い長い道のりを一歩ずつ着実に踏みしめるように、彼らの創作は丁寧に丹念に行われる。
緻密に構成された物語、力強く鮮やかな演出、劇団員をはじめとする力量抜群の俳優たち。
そのどれを取ってみても、彼らが高い演劇的素養を持ち、鋭いセンスと優れた技術を兼ね備えていることが伺える。

私が東京夜光を愛し、彼らを信頼してやまないのは、単に優れた演劇を作っているからという理由だけではない。
東京夜光の演劇を観ていつも気付かされるのは、いつの間にか私の思いまでもが「舞台の上に乗ってしまっている」ということだ。
流れるように展開する物語に夢中になるうち、気付くと私はひとつひとつの台詞やキャラクターに自身の断片を見出さずにはいられなくなってしまう。
そして物語が最高潮に達したとき、「ああ、これは私のための話だったんだ」と錯覚し、大きな感動のうねりが私の中で生まれるのだ。

それは、川名さんにはじめてお会いしたときに感じた、あの懐かしい親しみにも関係しているのかもしれない。
いつかどこかで私たちが体験した感覚を通し、どこまでも普遍的な人間ドラマを描き出そうとするそのまなざしに、私は深い信頼を寄せている。
それこそが、東京夜光が演劇界、いや、「私の演劇」の希望なのだと、無防備に心を許してしまう所以なのだと思う。

次回は作・演出の川名幸宏さんへのインタビューを掲載いたします。
少しでも多くの方が東京夜光と出会い、彼らの作品に触れ、その極めて純粋で実直な演劇世界に魅了されることを願っています。

世界が変わっちゃうわけじゃないですか。多分。忘れちゃうんじゃないかと思って書いてて。

『fragment』より

劇団 東京夜光『fragment』

その記憶は、誰の真実か――

2023年9月8日(金)〜18日(月)
吉祥寺シアター

公演詳細

(担当:小西力矢)

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