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青春は、戻らないらしい。

私が通う高校は、そこそこの都会にある。
新幹線がとまる大きな駅が、最寄り駅のひとつ隣なのだ。
だから遊ぶ場所に困ったことはない。放課後は、「勉強をする」という口実のもとで教室に入り浸って、教室が閉まったら近くの某ファミリーレストランでおしゃべり大会をするのがお決まりだ。お金と気持ちに余裕がある時は、少し足をのばして某コーヒーショップのなんとかペチーノを飲みに行ったり、カラオケでバカみたいに「マジLOVE2000%」を熱唱したりする。

友達と永遠と意味の分からない話をして、散々楽しんで、クソほど疲れて、アホみたいにゲラッゲラ笑う。解散寸前なんてひどいもので、もう何の話もしていない。というのも目が合うだけで、お互いが笑いだして言葉を交わすことすらままならないのだ。もう何が面白くて、何が面白くないなんてわからない。全部が面白いのだ。

自慢みたいになってしまうので気が引けるが、私が通っている高校は県内で2番目に賢いと言われている。しかも120周年を迎える伝統校ときた。まあ、そういう事情もあってだろう。入学した次の日には浪人と進路の話をされたし、3年生になった今、担任からは毎日のように進路の話を聞かされている。親も「うちの子は勉強ができる」と思っているようで、実力以上の大学を目指すように期待される。塾の先生だって、「この高校に行ったのにこの大学に進学するのは恥ずかしいよ。」と平気な表情で暴言を吐く。
いや、勉強ができない私には暴言に聞こえるけれども、ただの事実だと自覚している。でも、気づかないふりをすることでしか、自分の気持ちが守れないのだ。高校生活を勉強に捧げられない私にとって、背水の陣ともいえるこの状況はとてもストレスがかかる。そんな中で、大うつけでバカでアホで、たまに真剣な友人たちの存在は、本当に特別でありがたい。

友人たちと過ごした日々は、忘れたくない。別に詳細は憶えていなくていいのだ。ただ、よく一緒にいる友人の顔や声だったり、楽しかったという事実だったりを漠然と留めておきたい。これに関しては、友人たちも同じように思っているようで、帰り道にはよく、「今日何の話したっけ?」『楽しかったことしかわからん』「わかる~~!でもそれだけ憶えてたら上等じゃね?」と話している。

そういう私たちを見かけた大人たちは【青春だねえ】ってよく言う。でも、現役高校生の私が「どうだ!青春だろ!」とキラキラの存在感を放とうとしたことはない。断じてない。ただ、仲の良い友人と語り合っているだけなのに、それの何が青春なのかなんて私にはまったく分からない。ここだけの話、何もないところから青春を抜き取られるのが気持ち悪くて、そういう大人があまり好きではない。
そのような大人はこうも言う、【青春は戻ってこないからねえ。】と。だから何だよと言い返したくなるがぐ、っと堪える。でもなんか、戻ってこないって言うのは、なんとなく、本当になんとなく、分かる、、かもしれない。だって、私は先ほど「友達と過ごした日々は、忘れたくない。」と言ったのだ。忘れたくないのだ。

それでもやっぱり、今が「青春」という名を冠するほど特別な時間とは思えなくて、このままずっと続いていく時間だと、信じている。













水野

「青春は戻らないらしい」
CW:福部明浩
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