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六道 餓鬼編 意地汚い人はどこに行く 1

※地獄のフィクションストーリーです。

第1章 会社で嫌いなアイツ

2人の新入社員も入って心機一転の社内。会社の規模はそこそこ。
言って中小企業だ。
フレッシュ社員に混ざって、4月から新しい支店長がやってきた。
キャリア組ではなく、元々は下請け会社の社員だった人。
転職の時期と、前任の支店長の定年退職とが重なり、年の頃も40代後半。
業界的にはバリバリ上昇志向型でもなく、どちらかと言えば縮小傾向である
ややのんびり目のアパレル関連企業。

「ねえねえ。今度の支店長、知ってる?猫又衣料の社員だった人よ」
社内で、マウント系女子の松井理香。
「そうなんだ。なんでうちの支店長に?」
経理担当の桜田道子。
「コネらしいよ。猫又にいた時に、うちの部長のお気に入りで転職の相談したら
 支店長の空きが出るから来いよ。って言われたらしい」
情報通の理香は、本社の古株といつも電話で話している。
支店長がいない時はあからさまに、誰それの悪口オンパレードだ。
そんな理香に、道子は半ばうんざりしている。
それでも表面上は合わせていないと、この支店の女性は2人。
しかも理香は、支店の立ち上げメンバーで、彼女がいないと仕事が回らない状況を作り出して、ことあるごとに「私に聞いて」と仕事でもマウント管理は怠らない。
少々厄介な性格である。

「お手並み拝見ってとこね」 
理香がにやっとした。

新入社員は若い男性の2人。
営業担当と物流担当だ。
理香はこちらも値踏みする。まったく
仕事以外で大忙しだ。

しばらくは、何事もなく落ち着いた毎日が続いていた。
歓迎会も終わり、ほっと一息。
そのうち代理店の人達が変わるがわる挨拶にやってくる。
支店長も挨拶回りでほとんど事務所にはいない日が自然と増えていった。

「なんかさあ、支店長ってくしゃみデカくない?
 あれさ、なんか威嚇してんのか自己顕示欲がすごいのかわからないけどさ
 きったないよね。
 あたし、支店長 むりぃ〜。
 みっちゃんさ、支店長担当ね」

支店長担当ってどういう事よ! って言い返してやりたいけど、その後のねちっこい嫌がらせが半端ないので、苦笑いしてぐっと堪える道子。

「あ、そうそう。この間の差し入れのプリン美味しかったよね。支店長さ、あれ
 食べてないのよ。もうすぐ帰ってくるからさ、机の上に置いてさ、どうぞって言ったら食べるわよきっと。みっちゃんやってよ」
そのプリン、冷蔵庫に二日は放置されている。
さすがにそれは出来ないわ。と頑なに拒んだので、渋々、理香が古いプリンを食べさせた。意地汚い性格が顔を出す。
「松井さん、優しいね。プリンか。ありがとう。自分も好きなんだよね甘いの」
と言ってプリンを食べる支店長に
「食べないでください」と言えない道子は、モヤッとしていた。
理香は、してやったりのしたり顔。
「まじ、食べてたよね。あれ絶対腹壊すよね。かわいそう〜」
ほんと、この人悪魔だわ。

その後も、理香の暴走は止まらない。
そもそも、社会人生活においては、その人の悪いところなんて
指摘する人は誰もいない。よっぽどの正義感強めか、立場がグーの根も出ないほどの上席か。そんな人でない限り。
理香も例外はなく、その性格的欠点を誰からも指摘されず、諭されず
もちろん自分で反省も振り返りもなく、人生のコマを嬉々として進める。

そんなこんなで、日常的に悪行を重ねた理香(本人は悪行とはつゆほども思ってはいない)も、歳をとり定年退職となった。
性格は相変わらずだ。結婚はしなかった。
が、持ち前の強引さと活発な性格は歳を取っても衰えることもなく、
近所のサークルで、誰それの悪口を言いまくり、グループを仲違いさせ、マウントを取り、派閥を作りながら食い意地の汚さを露呈しつつ、
「〇〇さんにはあげなくていいわよ。
 あの人、いっつも食べてばっかりじゃない。」
それを本人に聞こえるように言って、ターゲットを目の前で仲間はずれするのだ。

もちろん、若い頃から、彼女のことを良く言う人は誰1人いない。
出来るならば、お近づきになりたくにタイプだ。
取り巻きは、おこぼれやその中の利権や優越感を利用する。
これまたタチの悪い連中だ。
類は友を呼ぶとはまさにこの事だ。

ある程度の常識を持つ普通の方々は表面だけのお付き合い。
程よい距離感を知っている。
トラブルになると面倒だからだ。
でも理香本人はみんなの人気者だとご満悦な人生だ。
おめでたい。

そんな松井理香もいよいよお迎えの時が来た。

つづく





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