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08話 透き通る記憶

ある晴れ渡った日、結菜と優斗は小さな公園を訪れた。二人はそこで一緒に写真を撮ることになった。ベンチに並んで座り、赤いセルフタイマーが明滅するのを待った。初めての経験に胸躍らせる結菜の顔は、潤んだ瞳が陽光に反射して輝いていた。

そして、その次の瞬間。優斗はいきなり、結菜のほっぺにちょっとしたキスを落とした。彼女はその予想外の行動に、驚きと照れを感じつつも、その幸せ感に満ち溢れていた。

ちょうどその瞬間、フラッシュが光り、シャッター音が響いた。二人の特別な時間が、あたかも時間を切り取るように、そこで止められた。

しかし、数日後、その写真が優斗の手に届いた時、彼は思わず結菜に告げた。「写真、撮れてなかったんだ…」

結菜は少し残念そうに頷きつつも、思わぬ事実に安堵していた。

そして、まさかの展開。設定が間違えていたためか、強烈なフラッシュが写真全体を飲み込む形で写真は出来上がり、ベンチで微笑む結菜だけが曖昧に浮かんでいた。

それは、二人だけが分かる特別な一瞬の記録。この失敗作が、心の中に温かな感触として残る彼らの記憶となった。

写真の意義や意味、その真実はどうでも良い。あの日の感覚、そして優斗の穏やかな笑顔。それさえもが、結菜にとっては何よりの宝物なのだから。それだけで、全てが十分だったのだ。

(つづく)

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