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【レビュー】異世界の創造者 の魅力を語りたい(ネタバレ無)

執筆時バージョン:v1.1.9


◆はじめに

 本記事は、タイトルの通り、ただただ語りたいという筆者の欲求を満たすために執筆したものです。しかし、一応、
 購入を検討している方の参考になる
 ような内容にしたつもりです。ついては、先んじて記事の傾向を記しておきます。
 なお、本記事にはネタバレ等は一切ありません

§ 筆者のゲーム嗜好について

 筆者がゲームに求めるものは
 「思考と試行の場の提供」
            です。

 「何かアイデアを思い付いたら、実際に試して、結果を見てみたい」
 人には誰しも、このような欲求があると考えます。しかし、実際の社会生活では、思いついたアイデアを好き放題に試すことは、難しい場面も少なくありません。
 そんな社会生活で満たすことが難しい欲求を満たす場所の1つとして、ゲームが有効であると考えます。
 
 1人用ゲームにおいては、どのような行いも、誰からも制限されません。
 与えられた情報から、方法を思考し、実際に試行し、結果を得る。
 これを、満足するまで、好きなだけ繰り返すことができます。

 これが、筆者がゲームに求めているものです。本記事は、そのような嗜好の人間が書いていることを踏まえて、お読みいただけますと幸いです。

§ 本記事ではRP(ロールプレイ)については触れません

 このジャンルのゲームの楽しみ方の1つに、RPを楽しむことが挙げられます。
 筆者はRPを重視するプレイヤーではないため、本ゲームについて「RPを楽しむ上でどうか?」という観点で記述することができません。

§ フリーゲーム「ELONA」との比較はしません

 本ゲームは、noa様製作のフリーゲーム「ELONA(Eternal League of Nefia)」と比較をされることが多いと認識しています。筆者も、UIやゲーム性が標記ゲームと類似していると感じたため、本ゲームを購入した人間であり、標記ゲームとの類似点が知りたいという需要があることは深く理解します。
 しかし、本ゲームの魅力を語る上で、標記ゲームを引き合いに出す必要性がなく、また両作品への敬意を示す上でも、あくまで一作品として語りたいと個人的に考えるため、比較は行いません。
 
 なお、ELONAも大変に面白いゲームです。
 未プレイの方は、是非プレイをしてみてください。



◆このゲームをおすすめしたい人

◎こういう人に向いています

・自由に試行錯誤を楽しみながらゲームを進めたい
・戦闘面でのキャラ育成が好き
・ハックアンドスラッシュが好き

×こういう人に向いていません

・濃密なシナリオ/美麗なグラフィックを楽しみたい
・高難易度なゲームを楽しみたい
・際限のない稼ぎ作業が好き

 なお、敷居が低く設計されているため、このジャンルのゲームをプレイしたことがない方でも、十分に楽しむことができると思います。ジャンルの入門として、とてもおすすめです。


◆ここがステキ!異世界の創造者

§ ストレスなく、序盤から常に自由に《やりたい》ことができる

 もうこれです。
 これだけでこの作品を推したくなるほどの魅力ポイントです。

 このゲームでは、簡単なチュートリアルが終わった後、ポンと世界に放り出されます。
 プレイヤーは、右も左も分からぬまま、ゲームを手探りで進めていくことになります。

 手探りで進んでいると、どんどん《やりたい》ことが見つかります。
・このアイテムを沢山集めたい!
・このアビリティを覚えたい!使ってみたい!
・このイベントを進めたい!
・新しい町に行ってみたい!
 そうやって《やりたい》ことをする内に、また新たな《やりたい》ことと出会うことになります。もう、やりたいことスパイラルです。

 その《やりたい》ことは、いつ・どこから手を付けても大丈夫です。
 そこには、何一つ心配ごとはありません。
 あなたはあなたの自由に、あなたの《やりたい》ことができます。
 このゲームは、そういうゲームです。

 さて、概要をポエムにしたところで、硬い表現で語ります。
 本ゲームでは、プレイヤーは序盤から一貫して自身の《やりたい》ことだけを自由にやり続け、そのままゲームクリアに至るというゲーム体験ができます。
 これを可能にしているのは、次の2点によります。

(1)細かな目標が、ゲーム内に適切に散りばめられている

 本ゲームでは、ゲーム開始時点に大きな目標が示されません。
 メニューに「次にやるべきこと」という項目があり、そこでゲームから提示される目標を確認することができますが、そこには「レベルをあげよう」というフワッとした目標や、直近で取るべき行動程度しか示されません。
 一方で、色々な場所に行ってみたり、NPCに話しかけてみたりすると、「特定のアイテムを手に入れると、新しい能力を習得できる」ことが分かったり、イベントの発生条件が提示されたりします。
 この、ゲーム内への細かな目標の散りばめ方が、とても良い塩梅です。意識的に目標を探さなくとも、ゲームプレイをしていると、自然と新たな目標に出会うようにデザインされています。
 また、この目標に全く強制力がなく、順番も任意であることも肝要です。これにより、プレイヤーの自由意志が尊重され、ゲームに《やらされる》のではなく、自発的に《やりたい》ことをしているというプレイ感覚を得やすくなっています。

<余談>
 特に個性的なのが、メインストーリー進行の一部でさえも、プレイヤーが意図的に進めるのではなく、自然発生的に起こるようにデザインされていることです。
 「目標を達成すること/結果」ではなく、「楽しいゲームプレイ/過程」に重きを置いた視点を持っているからこそできるデザインであり、作者様の理念が表れていると感じるため、個人的にとても好きなポイントです。

 なお、一つ注意すべき点が、
 このゲームで得られる目標達成の報酬は、ほとんどが「キャラの戦闘能力の強化」に繋がります。そのため、「戦闘面でのキャラ育成に魅力を感じない」「そもそも戦闘が好きではない」方は、自発的に目標を設定することが難しいかもしれません。

(2)リソース負荷が最小限に抑えられている

 本ゲームでは、自然発生するリソースへの負荷が最低限に抑えられており、これにより快適かつ自由なゲームプレイが強力に保証されています。
 リソース負荷は、特にゲーム序盤において、プレイヤーの自由な行動を制限する大きなストレス要因となったり、過度になればプレイヤーがゲームを投げ出してしまうことにさえ繋がります。

<リソース負荷の例>
例:回復に必ず「お金」が必要なゲームの場合
→「お金がなくなること」が詰みにつながりかねないので、まずは「お金が減らないプレイ」を模索する必要がある

 本ゲームでは「睡眠」「食事」など、時間経過によりプレイヤーに悪影響が生じるシステムが存在します。しかし、これらはゲームシステムさえ理解すれば、リソースなしで解消することができます。また、そのシステムを理解することが非常に容易です。
(加えて言えば、その解消方法がユニークで面白いです)

 他にもリソース負荷は存在しますが、いずれもこのゲームでは負荷が非常に小さく設計されています。
 これにより、「あれをやらないとまずいな…」とリソースを懸念して行動を決定する場面がほぼ存在せず、序盤から「次に何をやろうかな~」と、やりたい行動に専念することが可能となります。


§ 自由なゲーム操作をできない時間が、ほとんどない

 本ゲームでは、「自由なゲーム操作ができない時間」を生む要素が、徹底的に排除/簡素化されています。
 そのため、ゲームプレイ時間のほとんどで、自由なゲーム操作を楽しむことができます

 以下に、3つの具体例を示します。

(1)シナリオ及びテキストが簡素
 シナリオは「よくある展開」を必要最低限の要素で構成したような内容です。ドラマティックな展開や どんでん返しなどはありません。テキスト自体も非常に短く、しっかりと読んでも1分未満で終わる場面のみです。テキストを読み飛ばしても、全くゲーム進行に差支えありません。
 これにより、「テキストを読んだり、世界観を理解する必要があり、自由なゲーム操作をできない時間」がほとんどありません。ムービーなどの演出も全くありません。

(2)頻繁に発生する基本的な演出が、総じてスピーディ
 例えば、一般的なRPGでは、場所の移動時に「トランジション(画面のフェードアウト/フェードイン等)」が発生します。このトランジション中は操作を受け付けないため、「場所移動の度に待ち時間が発生する」ことになります。本ゲームではトランジションが基本的にないため、この「待ち時間」が生じません。
 戦闘エフェクトも必要最低限の演出に留められており、戦闘中にゲーム操作を受け付けない時間がほとんど発生しません。
(特定のスキルや、大人数の戦闘ではウェイトが発生しますが、それはあくまでも仕様の限界であるため、ここでは言及しません。あくまでも「演出が最低限である」という趣旨です)
 例を挙げればキリがありませんが、ほとんどの場面で、このような演出の簡素化がなされており、ゲームプレイ中の待ち時間がほぼありません

(3)チュートリアルが簡素
 本ゲームは要素が多く、その中にはゲームプレイに大きく影響するものも少なくありません。これらを全てチュートリアルで理解させるとすれば、かなりの時間を要し、ゲーム最序盤に「自由にプレイができない時間」が長時間発生することが想定されます。
 しかし、実際の本ゲームのチュートリアルは、必要最低限の操作説明のみに留められており、スピーディにプレイを開始できます
 一見不親切にも見えますが、これにより快適なプレイが阻害されることはありません。それは、本ゲームでは「①最低限のシステム理解でゲームを進める」ことも、「②ゲームシステムを理解した上で効率的にゲームを進める」ことも、快適に行えるゲームデザインとなっているためです※。

※①について
 前述の通り、このゲームでは序盤のリソース負荷が非常に小さく設計されているため、どのようなプレイでも「詰み」が発生することはありません。また、レベルが上がりやすいため、詳細なシステムを理解せずとも、無理なくストーリー攻略ができるゲームバランスとなっています。
※②について
 本ゲームでは、ゲームヘルプが充実しています。また、公式掲示板で作者様に質問をすることができ、ヘルプ外の情報についてもサポートが行われています。これらにより、システムをしっかりと理解したい方も、自由なタイミングで情報収集をすることができます。


§ キャラクターの多様な育成方法

 本ゲームでは、キャラクターの育成方法が非常に多岐に渡り、プレイヤーは好みの方法でキャラクターを強くすることができます。

【育成方法の例】
・敵を倒してレベルを上げる
・ダンジョンで強い装備を探す
・食事による能力UPをアビリティで強化する
・鍛冶アビリティを極めて強い装備を作る
・盗みで能力強化アイテムや強い装備を集める
・戦闘系アビリティを育成する
 など

 特に、育成の幅を広げているのはアビリティの要素です。
 アビリティは、種類毎に特定の条件を満たすことで成長します。その条件を満たす方法には工夫の余地が大きく、いかに効率的に成長させるか、方法を考える楽しみがあります。
(もちろん効率的なプレイをしなくとも、ゲーム進行に支障は全くありません)

 また、本ゲームには明確な「穴」として意図的に設計されたであろう要素もあります(例えば、強力な装備を有する弱いNPCの存在など)。そういった「穴」を見つけることで、ゲームを効率的に進めることも可能です。
 
 加えて、戦闘バランスの設計が非常に丁寧です。
 戦略や育成方法を工夫することで自分より遥かにレベルの高い敵を倒すことが可能な一方で、レベルアップによる恩恵も十分に実感することができる、絶妙な戦闘バランス設計がなされています。
 これにより、「低レベル進行」でも「地道にレベルを上げる進行」でも、どちらでも楽しみながらゲームを進めることが可能となっています。
 また、基本的に成長スピードが早い点にも併せて触れておきます。「地道にレベルを上げる進行」の場合にも、長時間のレベリングを強いられる事はありません


§ 高いユーザービリティ

 本作品は非常に高いユーザビリティを誇ります。
 所要時間5分ほどのチュートリアルを経れば、基本的にはほとんど迷うことなく、快適にプレイができると言っても過言ではないと、筆者は考えます。

 まず、できることが多いゲームではありますが、操作に必須のボタン数は非常に少なく設計されています。そのため、ゲーム開始直後から直感的に操作することができます。ショートカットキーも整備されています。
 ゲームヘルプも充実しています。基本的なゲームプレイにおいては、ここを確認すればまず困ることはありません。
 さらに特筆すべきは、迅速かつ柔軟なアップデート対応です。本ゲームには公式掲示板に「要望」を出すことができる場所が設置されています。実装の可否は作者様の判断によるものではありますが、筆者の視点から見て、特にユーザービリティに係る要望は積極的に実装されています。アップデートも非常に頻繁です(発売後3か月現在で15回ほど)。


◆ひとつだけ注意点

 本ゲームには、レベル等に「上限」があります。また、この「上限」は、このジャンルのゲームとしては、かなり低く設計されています。敵レベルにも限りがあり、これも天井が低いです。加えて、敵の強さもかなりマイルドで、ゲーム全体の難易度は低く抑えられています。
 「キャラを育成して強い敵を倒す」という楽しさを求めるゲームプレイであれば、100時間もすれば、「もうやることがない」状態に至るものと思います。
 こういった理由から「際限なくキャラ育成作業をしたい」という需要とはマッチしない可能性が高いです。

※ver1.2.0にて、レベル上限が300から3000に変更されました。それに伴い、稼ぎを楽しめる時間も、大幅に延長されました。

もちろん、活用する場面がなくても
・ステータスを全てカンストさせる
・装備につくランダムな能力値について、理論値で最高のものを揃える
などを目指すのであれば、より長い時間遊ぶことも可能です。

 また、本ゲームは町/地形/キャラクターなどがランダムに生成されること、周回引継ぎ要素が充実していることから、リプレイ性が高いです。
 最初からゲームを始めて、異なる育成方法でゲームを進めてみたり、縛りを追加してプレイしたりなど、「縦」ではなく「横」に広い遊び方をするプレイヤーであれば、とても長く遊び続けることができるかと思います。


◆まとめ

 異世界の創造者は、
 自由な箱庭で、気の向くままにやりたいことをして、キャラクターを育成する
 という作業を、非常に快適な操作性とゲームテンポで行うことができる作品です。
 特に、リソース管理でプレイヤーが苦しくならないよう十分に配慮されているため、序盤から安心して自由な行動を取ることができます。
 また育成作業では、効率化のために様々な工夫を凝らす余地があるため、「思考と試行」を愛する方にも、大変おすすめです。

 世に「自由度の高いゲーム」と言われるものは多くありますが、
 あるものは、リソース管理が厳しくて、多くの時間をリソース確保に専念せざるを得なかったり
 あるものは、チュートリアルや退屈なイベントで長時間自由に操作させてくれなかったり
 あるものは、おつかいクエストの数が多いだけで、工夫の余地もなく、ただ同じような作業を強いられるだけであったり
 ゲーム側の都合を押し付けられて、自由な行動ができない時間が長いものも少なくないと感じます。特に初見プレイの序盤で、そのような時間が長いと、私個人は正直、やる気を失ってしまいます。
 このゲームは、そのようなやる気を削ぐ要素を徹底的に排除し、序盤から一貫して快適なプレイヤーの自由な行動を保証してくれています。
 このようなプレイヤーの自由な行動への配慮が、このゲーム最大の魅力だと思います。

 初回プレイ時はぜひ、事前情報なしで、思うまま気の向くままに、プレイをしてみて下さい。


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