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なぜか、わたしの親友ばかりがモテる。

「とうとう、結婚するのか……」

親友から3ヶ月後に控えた結婚式の招待状をもらっても、
手放しに喜べない自分がいた。

それは、わたしの中でまだ許せない、消化しきれていない彼女への憎悪と
そんな気持ちを抱えている自分をとんでもなく嫌悪していたからだ。

わたしの中では、
「いつもわたしの好きな人が、わたしの大切な友達と付き合うことになる」
というジンクスがある。


あれは一年前だったろうか。
「みなみ、ごめんね! 彼と付き合うことになったの」

彼女が眉毛をハの字にし
今にも涙が溢れなそうほど目をウルウルさせながら言ってきた。

「ちっっっ」

心の中で舌打ちしたつもりだが
音が漏れていたかもしれない。

はぁぁ、またか。
わたしの方が先に好きだったのに!

少女漫画で設定で言えば
わたしは主人公で
さし詰め、彼女は可愛い友達役と言ったところだろう。

可愛げのない主人公が
「えっ!? 私でいいの!」
なんてセリフとともに、最後に好きな人から選ばれるけど、
まあ現実世界ではないわけで……。

この頃の私のカラオケの十八番と言ったら、
杏里の悲しみがとまならいという曲だった。

彼氏に友達紹介したら
彼と自分の友達、
2人がシンパシー感じちゃうやつ。

まさにこの歌詞に恨みをのせて歌った。

もともと彼女との出会いは、
大学のドイツ語の講義の教室で、
「隣に座っていい?」と声をかけられたところから始まる。

いやあ、マジ可愛かった。

華奢で、黒目がちの目がウルウル見つめてきて、テヘヘと笑うのだ。
少し、ヤンチャしたり、
ばかっぽいところがあって……。

いや実際かなりおバカなのだが、
「私バカだからわかんな〜い。みなみ、頭いいね」と言って発言するところが
またあざとく好きなのだ。

女のわたしさえも「彼女を守ってあげたい」という気持ちにさせた。

"こりゃ男にモテるな” という要素の塊なのだ。
反面、女子からは相当嫌われるタイプである。

クラスに1人はいるぶりっこを想像して貰えば早い。
だが彼女はただのブリッコではなく、
生き抜くたくましさも持ち合わせていたのだ。

私が持っていない、
素直さ・可愛げ・あどけなさもありつつ
たくましさと、ちゃんと裏の顔があるところが大好きになった。

案の定、彼女はとにかくモテた。
端から見ていて、彼氏はとっかえひっかえ常にいた。
しかも、間が開かないのである。

付き合っている彼氏が彼女のことを束縛し始めると、
バイト先の男子に彼とうまくいっていないと相談する。
しばらくすると「彼と別れた」と同時に、
バイト先の男子が彼氏に格上げされたと報告を受ける。

このパターンを何回繰り返したか、数えきれない。

当時付き合っていたわたしの彼のことを
「かっこいい!!」と彼女は言っていた。


だから、彼女のいるダブルデートは冷や冷やしていた。


大学卒業後も彼女とは月に一度は会っていた。

就職して間も無く付き合った彼を、
会社の同期で仲良かった女子に寝取られた私は

毎晩お気に入りのバーへ通っていた。
お酒も飲めないのに。

いつもメンバーは決まっていて
会社の男性同期ふたりと一緒だった。


業界的に平日休みで、他に遊ぶ人がいなかったのもあるが
私はのそのうちの1人のことが気になっていたのだ。

そこへ彼女が加わった。
4人で八景島シーパラダイスや彼女の実家に泊まりに行くこともあった。

2人とも彼女の虜になっていた。

最初はわたしの親友、「可愛いでしょ!」と鼻高々だったが
2人が彼女に夢中になりだしたら面白くなくなってきた。

結局、
私のあずかり知らないところで、
私が気になっていた彼と彼女は付き合い始めていたのだ。

どのタイミングで2人がそうなったかはわからなかったが、
付き合う報告と同棲を始めるという報告は同時だった。

「よかったね」

そんなことになって相当ムカついているのに、
彼女と縁を切ろうとは思わないのだ。

なにより、彼女が私のことが好きで、
私との関係を悪化したくないと思っていることが伝わってきていた。
そして彼の口からではなく、
彼女が私に報告してきてくれたことが大きかった。


モヤモヤする気持ちもありがながら結婚式に出ないわけにはいかない。
私は2人のキューピッドなのだから。

気合を入れたヘアメイクに一張羅でチャペルの長椅子に座っていた。
「ねぇ、大丈夫?」
同期が耳元に囁いてきた。

私はどんな顔していたのだろうか。
どんな感情だったのかわからない。

扉が開き、彼女がこちらに歩いてくる。
その姿を見て、すべてわかった。

どんなことがあっても、
やっぱり、
私の親友は最高なのだ。


もはや私は彼のことを好きだったのか、
大好きな友達が彼を好きっていったから、
わたしも好きだと勘違いしたのかもしれない
と思いはじめていた。

よくよく考えたら、
彼じゃなくて、
親友をとられるのが嫌だったんだ。

「あなた」に「彼女」をあわせたことを悔やんでいるのではなく、
「彼女」に「あなた」をあわせたことをくやんでいるのだ。

私の大事な親友を奪いやがって!!


なにより収拾のつかないすべての感情は
私に要因があったのだ。

素直に行動する彼女に私は嫉妬していたのだ。

私は彼を好きかもと思いつつ、何も行動は起こさなかった。
むしろ気付かれまいと隠していた。

振り返れば、過去の彼にも私は素直に気持ちを伝えたり
甘えるなんてことはしてこなかった。

私も次の恋は絶対に素直になろう。
ベタベタ、イチャイチャ、好き好き甘えてやろうじゃないか。


ふと彼女が私に気づき、笑いかけてきた。
それに気付いた彼も私に視線を送ってくる。

くっそ〜。
2人とも、幸せそうじゃないか!


「結婚、おめでとう!!!」

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(おわり)


フィクションかノンフィクションかは
察してください。

アドレスホッパーのリアルをお届けします。みてくれた誰かの参考になるよう、生き方の選択肢の1つになるようお届けします。