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プロダクトディスカバリーとデリバリーを繋ぐデザインドックのすすめ

ToCのメンタルヘルスアプリを提供する株式会社Awarefy(アウェアファイ)でプロダクトマネージャーをしています、小田愛莉(@anny_iiniku)です。


先日、プロダクト開発に携わるさまざまな職種の方々が集まるオフラインイベント「プロダクトスクランブル」を主催した際、以下のようなご質問をいただきました。

本noteでは、弊社のプロダクト開発の一端を、できるだけ具体的に紹介します。

これは、1本目の「アウェアファイのプロダクトディスカバリーフロー」の続編です。
今回は、ディスカバリーとデリバリーを結びつける際に使用している「デザインドック」と、チーム内でのコラボレーションの実態についてご紹介します。

Awarefy(アウェアファイ)について

アウェアファイは、毎日に寄りそい 気づきを増やす AIメンタルパートナーアプリです。
AIであるファイさんがユーザーの心の健康と成長をサポートします。認知行動療法やマインドフルネスなど心理学の知見に基づくさまざまな機能を搭載しているC向けのアプリです。

2020年5月にローンチし、これまでに60万ダウンロードを達成。2022年にはGoogle Playのベストアプリ部門大賞を受賞。ユーザーが加入するサブスクリプションモデルでマネタイズしており、毎年数百%の成長率で売上を伸ばしています。サブスクリプションに加入している会員数は数万人規模に成長しました。

プロダクトディスカバリーの成果物「デザインドック」

プロダクトディスカバリーのプロセスで得られたインサイトは、デザイナーやエンジニア(アウェアファイでは心理士も含む)と共に具体的な機能や仕様(How)を決定する上で重要です。解決すべき課題や実現したい目標によって、適切なHowの選択肢が変わるためです。

アウェアファイでは、プロダクトディスカバリーのステップ6である「ユーザーテスト」が完了する頃に、PMがここまでの成果物として「デザインドック」を作成します。

アウェアファイのプロダクトディスカバリーの6つのステップ


デザインドックは、PMの森さん(@kossmori)が以下のnoteで徹底解説しています。森さんのnoteを読んで、チームに導入したらコラボレーションがスムーズになりそう!という期待をもち、導入してました。

アウェアファイでは、森さんが紹介しているデザインドックをアレンジして活用しています。

以前は、開発チームが利用するissueのディスクリプションにPRD(プロダクト要求仕様書)的な内容をまとめたり、その都度専用のページを作成していました。
しかし、現在はデザインドックのフォーマットとNotionのDBを掛け合わせた施策管理がスムーズで、かつ、PMである私が仕事をしていてテンションが上がる(!)ため、この方法を採用し続けています。

デザインドックのフォーマット

まずはフォーマットについてご紹介します。普段作成しているデザインドックのテンプレートは、以下のような構成です。

先ほどの森さんのnoteで紹介されている項目に加えて、アウェアファイでは以下の項目をデザインドックに追加しています。

  • OKRとの関係性
    プロダクトで取り組みたいことは無限にありますが、クオーターごとの目標を達成するために、OKRに紐づかない施策が「本当に今やるべきなのか?」を自問し、優先順位を明確にするために追加しました。
    これにより、チームメンバーが日々の施策を実行しながらも、中長期の目標を意識しやすくなる効果もあればいいなと思っています。

  • UI
    FigmaのUIやプロトタイプの該当箇所を簡単に参照できるように追加しました。これにより、デザインと実装の連携がスムーズになります。

  • ログ設計
    効果測定を行う際に、どんな分析をしたいか、どんなログが必要かを、設計段階で明確にしておくために追加しました。
    個人的に忘れがちな部分なので、確実に記載するようにしています。

赤文字の項目は、どの施策においても重要度が高いため、必ず埋めるようにしています。しかし、すべての施策ですべての項目を埋める必要はなく、プロジェクトによっては自明な項目は記載を省略しています。

最近は、AIにわかりやすさを判定してもらったり、日本語にフィードバックをもらうことも多いです。多くの人の目に入るからこそ、なるべくわかりやすい内容になるよう努めています。

デザインドックの管理方法

次に、複数のデザインドックをどのように管理・運用しているかについて紹介します。

アウェアファイでは、ドキュメント管理ツールとしてNotionを導入しており、私自身も公私共にNotionを日常的に使っています。
デザインドックを管理する際も、Notionのデータベース(DB)機能を活用して、施策の進行や状況を一元管理しています。

普段利用しているNotion DBは以下のような構成になっています。

ビューは、現時点で以下の4つを使用しています。

  1. Active

    • PMが企画中、開発待ち、開発中のアクティブな施策のみを表示するテーブルビュー。

  2. Roadmap

    • スケジュールが一目でわかるタイムラインビュー。

    • ざっくりとした施策の進捗や予定を可視化します。

  3. Backlog

    • 企画前の施策が一覧で表示されるテーブルビュー。

    • PMが未来の施策の優先順位を検討する際に利用します。

  4. Reflection

    • リリース済みで、まだ効果測定が行われていない施策を一覧にしたテーブルビュー。

4つ目の「Reflection」ビューについては、ステータスに「効果測定待ち」を意味する項目があり、それをフィルターで表示しています。これは、リリースして終了!とならないように努める仕組みの一つです。

過去の私は、分析スキルが十分ではなかったこともあり、アウトプット重視になってしまう傾向がありました。長らく課題に感じていたため、ステータスを「効果測定待ち」として区切り、アウトカムのふり返りをしないと次に進めないような仕組みにすることで、自分をマネジメントしています。

また、Notionのデータベース(DB)では、プロパティ機能を活用して以下の項目を入力したり、他の情報と紐づけています。

  • 開発チームが利用するマネジメントツール(Linear)のプロジェクトURL

    • これを開くと、プロジェクトに紐づく開発チームのタスク一覧が確認できます。

  • ざっくりとPMが考えるスケジュール

    • クオーターの見通しを立てる際に記入します。

    • 📣アイコンがついている施策は、広報担当メンバーと連携し、プレスリリースなどの準備を進めてもらうためのマークです。

  • エンジニアが実施するモデリングドキュメントのURL

    • これを開くと、エンジニアが実施したモデリングのドキュメントが確認できます。

  • テストケースのドキュメント

    • これを開くと、Notionやスプレッドシートで作成したテストケースの一覧が確認できます。

    • QA専任がいない体制で、テストの抜け漏れを防ぐための確認や、不具合発生時のプロセス振り返りに活用しています。

これらの運用の微改善は、日毎・週毎の単位で行われることもあり、その都度最適だと思うものを採用しています。

アウェアファイにおけるデザインドックの価値

第一の価値は、チームやステークホルダーとのコミュニケーションハブになるという点です。

デザインドックが完成したら、デザイナー、エンジニア、心理士などプロジェクトに関わるメンバーを集めてキックオフを行います。事前にメンバーにデザインドックを確認してもらい、疑問点やコメント、アイデアがあれば自由に追加してもらうようにしています。

キックオフでは、ドキュメントだけでは伝えきれない部分を補足したり、メンバーから上がった疑問や論点を整理して解消します。その場で出た意見や決まった事項は、デザインドックに即時で加筆修正されていきます。

さらに、開発が始まりデリバリーのプロセスに入ってからも、デザインドックをベースに会話することがあります。
エンジニアから仕様の検討漏れに関する指摘や、新しいアイデアが出た際にもデザインドックにコメントを追加していきます。また、プロジェクトに関する情報を確認したい時は、ここを見れば大丈夫!という状態になっています。

また、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)や広報など、直接プロダクト開発に関わらないメンバーに情報を共有する際にも便利です。

第二の価値は、プロセスの改善のハブになるという点です。

たとえば、デザインドックにテストケースを紐づける運用は、以前QA(品質保証)のボールが落ち、不具合が発生した経験から始まりました。このように、プロセス改善を進める際に、デザインドックとNotionのデータベースを活用して、さまざまなことを試行錯誤できる余白があると感じています。

以上が、アウェアファイにおけるデザインドックを活用したプロダクトディスカバリーとデリバリーの事例です。ぜひ、継続的なプロダクト開発の参考にしていただければ幸いです。

おまけ

本noteは、CTO兼事業責任者であるいけぴさんの後押しと、アウェアファイのバリューである「専門性を高めあう」という文化のもと、社員の発信活動が活発な雰囲気に後押しされ、執筆・公開しました!

アウェアファイの「プロダクト・スクランブル!note支部」では、他職種のメンバーによる様々な発信がありますので、ぜひご覧ください。プロダクト開発に携わる皆さんや、アウェアファイに興味を持っていただいた皆さんの参考になれば幸いです!

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