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2023/8/13 郷さくら美術館

その日は私の30歳の誕生日で。落語公演の予定があったから、それなら思いっきり文化的な1日にしたいと思って、記念すべきぐるっとパス最初の日を記念すべき30歳の誕生日の日にした。

最初の美術展に選んだのは、郷さくら美術館の「水ー巡るー現代日本画展」。なんとも涼し気なチラシに誘われて、炎天下の中、中目黒へ。

私は日本画が好きだ、と確信した最初の美術展になった。

実はこの数日前に京都の京セラ美術館で上村松園作「人生の花」2作品を観たとき、「なんだろう、この感じは…どことなく懐かしくて、ものすごく心惹かれている感じがする…」と感じ、あれ私日本画好きなんだっけ?と首を傾げていた。
もともと、日本的なものは昔から好きで、それこそ陰翳礼讃的なものが好きだった。中でも漆塗りの工芸品なんかは大好きで、暗がりにぬらっと艶めく漆に、暗く輝く金蒔絵、その世界観が大好き。好きな時代はたぶん平安時代と江戸時代。会津に旅行に行ったときは「どうしても蒔絵の硯箱が欲しい」と探し求めて親が笑っていたくらい。
でも私は絵画といったら印象派の油絵ばっかり鑑賞していた。なんで今まで日本画をちゃんと観てこなかったんだろう。

今回の美術展で、岩絵の具の美しさを知った。近づいてよく見ると、砕けた岩がキラキラ輝いてる。あれは郷さくら美術館さんのライティングのこだわりあってのものなんだと思う。輝く岩絵の具で光を表現すると、ほんとうにそこで光っているように、でも同時にファンタジーのように、絵の中に浮かびあがる。
一粒ひとつぶがとても細かくて繊細だからか、どの絵も繊細だった。儚く散る桜を愛でる日本人の心を描くのにぴったりな画材なんだろう。


それでは、お気に入りの作品をメモ(館内の絵画は撮影OKだった)。写真撮影ができる美術館だと、あの時の感動をもう一度呼び起せるのが良い。

チラシにもなっている、鳴門の渦潮を描いた作品。
躍動感と、碧と蒼。
渦巻く波の音が聞こえてきそう。
こんな屏風に囲まれてうたた寝したら、
大洪水の夢とか見るのかな。
今まで光をテーマにした作品が好きだったけど、水をテーマにした作品もいいなぁ。水というテーマをなぜかずっと思いつかなかった。
この作品は実際に滝のように絵具を流したんだろうか。
滝飛沫がほんとうに細かく描かれていて、自分が滝飛沫の中にいるみたいだった。
足立美術館で観た横山大観作品(「雨霽る」)みがある。
あの頃から、少ない色で空気感を描いた作品が好き。
わかりますか。奥に輝く金色の光が。
どうしてもあの光が気になって、何分もこの絵の前に立ちすくんでいました。
吸い込まれるような美しさ…この作品を観てから、月に心が奪われるように。
かぐや姫にでもなってしまいそうだ。笑
印象的な作品。目が離せなかった。この絵は作者の見た光景と作者のファンタジーが合わさった作品らしいけど、こんな光景に出会ったら、自分は黄泉の国にでも来てしまったのかと思うだろうな。
ああ…美しい…
この絵を手に入れて(この絵でなくても気に入った美しい絵ならいいのだけど)、その前にずっと座って世界観にずっと浸っていたい…そんな風に思った。こうやって、コレクターになっていくのかな。今なら、よく物語に出てくる、美しさに生気を吸われておかしくなってしまう人たちの気持ちがわかるよ…
相変わらず、金色の光の向こう側が気になる。

撮影したお気に入りの日本画を見返して、やはり、どれも涙が出そうなほど美しい。「美しい」という言葉がほんとうにぴったりだと思った。


油絵ではなく、日本画。
光ではなく、水。
古美術ではなく、現代美術。

新たな世界に足を踏み入れた、ぐるっとパスの旅の始まりにふさわしい美術展だった。これからいろんな新しい世界を巡っていきたい。


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