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《2012年の「We dance京都」から》

これははっきり言える。「We dance京都」があって良かった。

前年にOffside Dance projectの岡崎さんの依頼で初めて、ダンスプログラム「We dance2011」(YCC3F 横浜クリエイティブセンター) のディレクションをした。偽りのない踊る身体を見たいという願望がつのり、自身のディレクションプログラム【Deep Body】に声をかけさせていただいた舞踊家は、笠井叡×山田うん、黒沢美香×山田せつ子、室伏鴻という大層豪華な顔ぶれ。しかしながら初めてのディレクションで多々私の力不足が生じた。

なので翌年2012年に「We dance京都」のプログラムディレクターを岡崎さんから任された時、前回の力不足を挽回する、責務を全うするのだと意気込んでプログラムを組んだ。そして結果的に私にとって「We dance京都」は大事件となった。ダンスはもっと豊かになる。と信じたい、だから次の行動をしないといけない。と、つきうごかされ「We dance京都」から「RE/PLAY Dance Edit」と「Dance Fanfare Kyoto」がプロジェクトとして生まれた。

「We dance京都」開催時の実直の言葉はこちらからお読みできます。きたまり:「ダンスの閉塞感から、身体の可能性へ」http://wedance-kyoto.blogspot.com/2012/03/blog-post.html 一部抜粋を記載します。

"行動しない者には文句をいう権利はない "ということを肝に命じて、次世代のアーティストがこれからを作ること、上の世代が作ってきてくれた状況に感謝と敬意を払いながらも、移りゆく身体の覚悟と共に、ダンスが、身体が、もっともっと面白いものになればいいと思っています。 そのために何が必要か、しっかり考えていきましょう。


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2012年2月「We dance京都」チラシ 宣伝美術:相模友士郎

でも本音を言うと「We dance京都」で呼んだ演劇の演出家がダンサーを上手に演出する様を見て嫉妬のような感覚もあった。振付家がダンサーを振付することの意味、演劇の演出家にできないけど振付家にできるダンサーの見せ方とはなにかを考えこんだ。
振付という行為を理論的に整理して身体の細部を扱う。そのために必要な練習量、技術について深める作業をしたいという思いが強くなった。

「We dance京都」の影響は直後の自身のソロ作品である野毛シャーレで上演した木ノ下歌舞伎【娘道成寺】の踊りや、その年の12月、最後の3年目伊丹市アイホール新作共同制作 「Take a chance project029」 【結婚】【戯舞】にも現れた。

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2012年12月【結婚】伊丹市アイホール新作共同制作 「Take a chance project029」チラシ 宣伝美術:納谷衣美

【結婚】はストラヴィンスキー作曲の名作/バレエリュス時代にニジンスカが振り付けた最高傑作のオマージュで、ダンサーにユニゾンとフォーメーションを徹底的に振り渡しした群舞をつくった。
【戯舞】は民衆の芸能形成を現代に行うとどうなるのか、稽古の中で即興で見つけた出演者それぞれの記憶やエピソードを芸能化するという実験的な試みだった。

古典とコンテンポラリーの境目や、西洋と東洋の違いはなんだろうと自問しながら扱った。ダンスへの問いが充満していたが、それらの問いを作品で回収することができなかったと思い返して反省する。

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2012年12月【結婚】伊丹市アイホール新作共同制作 「Take a chance project029」 ( 伊丹アイホール ) 撮影:相模友士郎

そして、この公演を境に私の振付に対する創作意欲は減退していった。
当時のきっかけをあえて記載することではないかもしれないが、戒めのために言葉で残そう。本番で振付どおり踊れなかった【結婚】出演のダンサーに対して終演後に怒り狂ったのだ。歯止めの効かない怒りをぶつけていた。ダンスだぞ。たかがダンスを理由にこんなに怒り狂う自分に驚いた。振付家から怒りの暴力をぶつけられて、追い詰められるように本番終わりの疲れた身体で稽古を始めたダンサーを見ながら、我に返り胸が締め付けられた。

正解が無数にあるということがダンスの豊かさのひとつであると思っていたが、真逆のことをした。もう私は振付から離れたほうがいいのではないか、他者に振付する力量がないことに気づいた。心底己を恥じた。お手本を見せて、身体の細部の使い方を指示し、振付を渡し、まるで自分の正解を伝えている気になることで、そこから外れることを目の当たりにして怒りという感情が生まれるのであれば、他者に振り渡しという手法で振付することはやめようと決めた、振付の方法は他にもあるのだ。

オファーをもらって作品をつくるプライドとプレッシャーのバランスが崩れていた。傲慢で未熟だった。これで「Take a chance project」3年目を終えた。

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2012年12月【戯舞】伊丹市アイホール新作共同制作 「Take a chance project029」 ( 伊丹アイホール ) 撮影:相模友士郎

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