見出し画像

👴最高の料理

 滋賀県長浜市の余呉湖畔にある「徳山鮓」で最高の料理をいただきました。

 余呉湖は、滋賀県の琵琶湖のさらに北にある小さな小さな湖です。小さな湖面ですから、凪の時には鏡のように滑らかな姿を見せることから「鏡湖」の名前もあります。

 余呉湖の南に聳えるのは賤ヶ岳。織田信長亡き後、羽柴秀吉と柴田勝家が決戦をした地です。余呉の集落は余呉湖と湖北の山々に囲まれた地にひっそりと広がっています。

 徳山鮓では、こうした湖と山と里で採れる自然の素材から、最大限の贅沢を引き出してくれます。

 青紅葉が配された小箱が運ばれてきました。

 蓋を開けると上品な先付けが。猪のハムと芋、小鮎の酢漬け、南瓜と茗荷がバランスよく姿を見せてくれました。猪は柔らかく臭みもなく、小鮎は酢とソースが絡んでさっぱりと、南瓜の甘みと茗荷の刺激も口中に程よく膨らみます。

 次に運ばれてきたのはお造りです。琵琶湖の宝石と呼ばれる琵琶鱒だけでも贅沢なのに、滅多に食卓に上らない岩床鯰も出てきました。鯰というと泥臭いイメージがありますが、捌いたばかりですのでそんなことはまったくありません。川魚や湖魚の先入観を覆すような新鮮で美味しいお造りでした。

 さらにジビエの女王である鹿肉が細かく和えられてきました。鹿の臭みはまったくなく食べやすく調理されています。添えられているのは、焼いたスラック豌豆と茄子、そして人参です。

 ついに天然鰻が登場しました。これも捌かれたばかりの新鮮な鰻を焼いてくれています。花山椒が副えられています。ふっくらとした身と少し硬さのある皮が、歯と舌を通じて頭蓋骨に天然を感じさせてくれます。

 ここでご主人が琵琶鱒で作った鱒寿司をお持ちいただきました。分厚い琵琶鱒の身の上にキラキラした鱒卵がこれでもかというくらいかけられていました。柔らかい身とプチプチした卵が一度に楽しめる親子寿司です。

 膳の途中で趣向を変えて、目の前に余呉湖が広がるテラスに席を移しました。コロナ対策でテラスに屋根を葺いたため、これからの梅雨の季節でも屋外で食事をいただくこともできるようになりました。こごみを始め、山菜の天麩羅を目の前で次々に揚げていただきます。

 珍しいといえば、鰻のピッツアが振舞われました。切り株に載せられて目の前に配膳されるという野趣味あふれる演出とともに、天然鰻とチーズという一見相反しそうな素材が山椒の香りでひとつにまとめられていました。

 再び室内に戻ると、デザートその1が姿を見せました。ジュレの中にはチーズと鮒鮓が包まれています。混然一体として口に運ぶことで、東西発酵の王者がお互いを邪魔することなく、遠慮深くそれぞれの主張をしてくれます。

 メインが登場しました。なんだと思いますか。熊ですよ、熊。さすがに鍋には山椒が文字通り山のように積み上げられています。臭みが気になる人もいるかもしれませんが、そういう心配はまったくなく、しゃぶしゃぶでいただくお肉は、とても柔らかく、美味しいものでした。

 デザートその2はアイスクリームです。しかも、鮒鮓の。クリームチーズのアイスクリームかというような香りが鼻腔を刺激する上品なアイスクリームでした。

 酒は白赤ワインと地元冨田酒造の銘酒七本槍です。本当に最高の料理を堪能しました。ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?