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ロングスカートで階段を駆け上がる

何かの機会で小学館のエントリーシートを見たとき、「私のちょっとした喜び」という題の作文が課せられていた。タイトルを見てふっと思いついたのは、「ロングスカートで階段を駆け上がる」こと。

私の身長は155cm。平均身長にやや達していない。ヒールのある靴は慣れてないので、平日あんまり履かず、身長は盛れてない。そして移動時間の見積もりはいつもぎりぎり。

この状態でロングスカート・ロングワンピースを着たらどうなるか。

乗換は毎度走る羽目になり、そして階段の上りで必ず、裾に足をつっかける。

何度も転びかけ顔から地面に、いや階段にダイブしそうになって私は学んだ。これは手でスカートをたくし上げなければならない、と。

なので裾の長い服を着るたび、左手でスカートをひっつかんで、ホームに滑り込む電車に向かってダッシュしている(これが毎回なのもどうかと思うが。)

でもこの瞬間が、いつだってちょっと楽しい。12時になってしまったシンデレラ、というのはかなり図々しいが、多分走っているシンデレラも、こんな気持ちだったに違いない。

上品な系統の服を着てきたのに、もう全力疾走しているのがおかしくて愉快。

左手でさりげなくスカートを持って、「こんな感じのデザインの服なんですよ、今だけ」感を演出する。ささやかな抵抗。

紺のスカートから赤いぺったんこのパンプスを履いた足がのぞく。完璧な色の取り合わせを自画自賛。

風が吹くと、丈が短くなった分思いっきりスカートがはためく。人知れず汗が垂れていた足に気持ちがいい。

なんて考えているうちに、階段はあっという間に終わって、電車の列に並ぶ。

だから階段の上りも辛くない……とまではいかないのが運動不足学生の哀しいところだが、その時だけ、自分が画面のど真ん中に来るシーンを撮っている気分になる、と言ったら言い過ぎでしょうか。

ああ、夏服が欲しい。丈が長いやつ。



それじゃあ、また。

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