漫才ネタに学ぶ、なぜビジネスの会話がすれ違うのか

この文章の射程

この話は、ビジネスや職場での話です。
ので、恋人や家庭の会話のすれ違いイシューは解決できません。
(ゴールに向かうベクトル共有ではなく、無条件で共感しなきゃいけない事があったりする。)

ケース・オープニング

こんにちは、浅野です。
バンコクでMBAを取って、そのあとグローバル企業(日系とのJV)のアジア統括拠点で働いています。

職場での(特に離れた国での)コミュニケーションで、会話が噛み合ってないまま細かい話をしていって、枝葉末節ばかりの議論になる事がありませんか?

無い場合は良い職場ですね。
このままそっ閉じして下さい。

少しでも頷いて下さった方、
例えば職場でこんなケース、ありませんか?

ーーーーー
本社・商品企画部
商品Aの売上を増やしましょう!どこを改良すれば良いですか?アレとかコレとかどうですか?

支店・マーケティング部
(いや何?いきなり訳分からん)
Aは市場価格やスペックがそもそもだいぶ合ってないので、改良よりも新商品がほしいです。

本社
(質問に答えろよォォォ!)
ですので、Aをどう改良したらどのくらい売れますか?
ーーーーー

さて、これは噛み合ってない会話の一例です。
特にどちらかが立場や年齢が上だったり、外国語でのコミュニケーションだと、ハッキリした回答を確認できず、「多分こういう事だろう」と考えて進めがちです。

なぜこのような不毛な事が起きるのでしょうか?

・外国人との会議では日本人は英語力が低いから
 (理解が追いつかない、瞬発的に質問できない)

・立場が上の人に遠慮したり、皆の前で質問して時間を取るのが嫌だ

というのが挙がりやすいですが、
語学や遠慮は勉強したり通訳を入れたり、態度が変わればすぐ直ります。

が、それでもこの問題は無くなりません。

そもそもの理由の一つとして、
・話の前提が合っていないから
という場合が、私の経験上結構多く見られます。

「がんばっていきましょう」というネタ

前提が噛み合わないので積み上がらない会話の極端な例として、
お笑いコンビ和牛の「がんばっていきましょう」というネタがあります。

※公式が無かったのでYouTubeリンクは貼りません。お手間ですが探してみてください。

このネタの面白い点は、
川西さんが「前提」を話さずに話を進めようとするので、
水田さんが「前提」揃ってないよ、
という点をしつこく言い続けるところにあります。

お笑いや友人との会話だと細かい事を言い続ける面倒臭い奴、
という話になりますが、
ビジネスの現場でも結構似たような事が起こっています。

所謂「暗黙の了解」または「ハイコンテクスト」ってやつですね。

前述の例だと、支店マーケは恐らく
「各年度の売上や利益を最大化する」目標を達成する為にどうするか(→新商品がほしい)を話しており、

本社商企は
費用対効果が出やすい「既存製品のテコ入れ(収益良化)」を話しています。

これって一見同じ目的に向けて話しているようで、トピックのレイヤー(階層)が違います。

良い悪いではなく、ピラミッド構造※でいうと
商企のトピックは支店マーケのトピックの下位に位置付けられます。

※論点を構造的に理解するための手法の一つ。大きなゴールからTODOに落とし込む為にも使えます。

この話をシンプルに構造化してみると、こうなります。
※いろんな分解方法がありますので一例として。

レイヤー2・支店A目標」の達成を強く考える支店サイドとしては、
レイヤー3はどれでも良いけど、効果が大きそうなものを優先したいので、新商品の話をしています。(「効果が大きそう」はケースでは出ていない隠れた前提)

一方商企は人員リソースやスケジュール、開発費などの制限から、
レイヤー3・既存商品改良」に絞っています。(この制限はケースでは出ていない隠れた前提)

この議論で支店にとって重要なのは新商品か、既存改良かではなく、
レイヤー2の目標をどうやったら達成できるか、です。
新商品でも、既存改良でも、目標達成できるならどっちでも良い訳です。


嚙み合ってない話をどうするか

会議のあるべき姿は、ここでは
「話すべき内容を明確にして、それに対する違う立場の意見を伝え、合理的な次の行動を考える事」、としましょう。

※私の基本的な考えとして、
会議や話し合いは、「誰かの次or将来の行動につなげるべきもの」で、
「単純な情報共有」はあり得ない、という考えです。
(実際は残念ながらあるんですけどね。)

前提やゴールが合っていないと、いかに優れた施策であってもゴールにたどり着けるかは分かりませんし、測定できません。

ここを合わせることがとても大事なので、
いかに「知っているだろう」話であっても、前提とゴールを「必ず」合わせなくてはなりません。

レイヤー1 (全社目標) は高次なので挙げるかは場合によりますが、
「レイヤー2の達成」がゴールであることは、この会議では必ず最初に確認し合うべき内容です。
※多少会議が進んでいても、擦り合ってないならやった方が後々の大災害を減らせます。

達成目標が確認できると、
限られた会議時間やリソースを既存改良か、新商品開発に注力するか、という点から話し合えます。
(既存改良ルートに入る前に、新商品ルートに進めるか検証できる)

どちらが拡販期待がもてるか、今年の利益貢献はどちらができるか、という目線で話ができる訳です。

一方でレイヤー2が、
「来年以降の目標達成に向けた施策検討」ならば、既存改良と新商品で話すポイントも変わってきます。
市場も現在ではなく将来を見ますよね。

会議の最初にやること

皆さんが会議のファシリテーターをやる時は、
(前回会議の続きだとしても)すぐに詳細検討に入らず、
和牛の「がんばっていきましょう」に倣って
「前提(話のレイヤー・今日のゴール)はこうですよね?」という話をするのがおすすめです。

ケースの例で話のレイヤーを揃えるには、
会議の最初に
「支店目標を達成するために(前提)どの商品へ注力するか選びましょう(TODO)」

または

「支店目標のうち、●%をカバーしている(前提)既存改良案を考えましょう(TODO)

と伝えれば良いですね。

※ちなみに日系以外でもこの問題はよく起きます。勝手に相手の前提を想定せず、水田さんのようにいちいち確認すると後々のトラブル回避ができますよ。
「一々確認しなくとも分かってる」とかいう人は無視です。

会議が始まったら、前提とゴール確認した?と自分に問いかけてみましょう。
(=和牛のネタでいう、「頑張っていきましょう」って言った?)

ではまた。

PS. 議論の構造化に役立つアイデア

(動画) NHK高校講座 ロンリのちから

(本) クリティカルシンキング (グロービス)

(本) 考える技術、書く技術 (バーバラ・ミント)

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