そのco.jpも俺らのものだ! -2つ目の属性型ドメインを取得した話-

これは「corp-engr 情シスSlack(コーポレートエンジニア x 情シス)#1 Advent Calendar 2020」14日目の記事です。

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ある日のコーポレートIT定例ミーティングにて。

CTO:「そ、そんなことが本当にできるのか!?」
ーー「へえ、これで理屈上は可能でやんす」
CFO:「しかし、金を積めばなんでもできるだろう?それじゃあ、フィージビリティがないんだよ、フィージビリティが。
ーー「へえ、1万円でお釣りが来る見込みでやんす」
CEO:「こいつができると言ってるんだ。とりあえずやらせてみたらいいじゃないか。ただこれだけ啖呵切ったんだ。奪(と)れなかったときは、わかるな...?
ーー「へえ...!」

※上の寸劇はフィクションです。弊社にはヘマして詰め腹を切らされる文化もないし、嫌味なCFOもいません。念のため。

結局、何の話なんだよ

2,800人にものぼる情シス同志の皆さん、こんにちは、note株式会社でコーポレートITエンジニアとして働いているヒガシといいます。

noteでは今年それはそれは本当に本当にいろいろなことが起きたのですが、その中の一つに「note.co.jpドメインの取得」があります。

これ自体はさほど大きな出来事でもないんですが、この経験は割とレアだよなと思ったので今回のアドベントカレンダーのネタとあいなりました。今回はそんな「2つ目の属性型(co.jp)ドメインを取得した話」をお送りします。

不意に見つけた "Suspended"

弊社は今年の4月7日に、「株式会社ピースオブケイク」から「note株式会社」へと社名が変わりました。これに伴い、コーポレートドメインが「pieceofcake.co.jp」から「note.jp」へと変更されました。

この時点ではまだ「note.co.jp」は弊社のものではなく、他のどなたかのものだったので、2019年までに得ていた「note.jp」ドメインがコーポレートドメインに納まりました。(note.comはプロダクトのドメインに使っています)

既に弊社は「note.com」と「note.jp」を手中にしているため、「やはりnote.co.jpも俺たちが!」的な欲自体は妄想レベルではありました。ただ「note」なんて一般名詞のドメイン、そうそう手放されるわけがありません。上の記事にもある通り、note.comもnote.jpもかなりの苦労と時間をかけて取得しています。

しかし、積年の妄想は何故か成就してしまいました。社名変更してしばらくして、ふと思い立ってnote.co.jpをwhois検索してみると、Suspendedの文字が!

「Suspended」とは元の持ち主が更新をせず期限を迎え、さらに猶予期間もオーバーしてJPRSに見限られ、JPRSのデータベースから登録情報が削除されるまでの待機状態のことです。「Suspended」期間中は新規登録が凍結されますが、その凍結期間が終了しさえすればドメインは取得可能となります。(詳しくは↓のサイトをご覧ください)

奪(と)れる...!」とわかったので、その旨を経営陣に報告して、「note.co.jp奪取作戦」作戦がひっそりと始まりました。何しろライバル(候補)がとにかく多いのです。作戦は水面下で抜かりなく、かつ、スピーディに行われる必要がありました。

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奪(と)りにいく前に

ここで経験豊富な情シス各位は思ったはずです。「co.jpって2つ持ってていいんだっけ...?」

答えは「原則ダメ」です。JPRSが公開している「属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名登録等に関する規則」には、属性型JPドメインの登録可能数について以下の通り定められています。

第9条(登録できる属性型地域型JPドメイン名の数)
  登録できる属性型地域型JPドメイン名の数は、1組織について1とする。

しかし、同じ9条の2項に以下の記載があります。

2 前項の規定にかかわらず、下記各号のいずれかの事由がある場合は、1組織について2以上の属性型地域型JPドメイン名の登録をすることができる。

〜(中略)〜

(5)組織名変更を理由として新たに属性型地域型JPドメイン名の登録または仮登録された属性型地域型JPドメイン名の登録が承認されたとき

YES!!!(※)

この例外規定を踏まえて2つ目のco.jpドメインを取得しました。取得に際してはドメインを購入・確保した上で、JPRSと元のco.jpドメインを管理しているレジストラの双方に「1組織1ドメイン緩和申請」をすればOKです。(レジストラがJPDirectであれば、JPRSだけへの申請でOK)

※正確には「組織名変更」「合併」「事業譲渡」が2014年2月17日以降に発生していることも要件となります。

ミッション決行

さあ、いよいよミッション決行です。

志ある社内のメンバーがnote.co.jpが空き状況を断続的にウォッチし、空いたのを確認したと同時にドメインを購入しました。ここでかかったのはJPRSへの登録費用として¥5,500。上述の通りライバルは多いので、まずは第一関門クリアです。ドメインが手元に無ければどうにもなりません。

無事note.co.jpがwhoisに登録されたのを確認し、次へ進みます。

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次に「1組織1ドメイン緩和申請」をJPRSにします。費用は¥0、タダです。下のフォームから申請すると、JPRSの担当の方からメールが来て、適宜手引きしてもらいつつ処理が進みます。

手続きの内容は以下のような感じです。理由とその正当性を確認されます。

・管理したいドメイン名(note.co.jpとpieceofcake.co.jpのこと)
・適用理由(組織名変更)
・適用理由の詳細(どう社名が変わったのか)
・適用理由発生日(登記上の社名変更日)

この手続きの過程で、履歴事項全部証明書のPDFデータ及びその原本をJPRSに提出する必要があります。今回は総務担当メンバーが用事のついでに法務局に取りに行ってくれました。一通¥500、交通費込みで¥1,000くらいです。

JPRSの確認が済むと、元々持っているco.jpドメイン(pieceofcake.co.jp)のレジストラにも「1組織1ドメイン緩和申請」をするようメールで指示されます。JPRSの時と同じように、レジストラのフォームから「やりたいんですが」と申請しました。

すると、pieceofcake.co.jpドメインはまだ「株式会社ピースオブケイク」が管理していることになっていたので、平仄を合わせるためにまず「記載事項変更」と「技術担当者情報変更」をするように言われました。これにかかった費用は¥2,000。登録完了までには2,3日かかりました。

その後JPRS同様、履歴事項全部証明書を今度はデータで要求されたので、前回取得していた謄本のPDFデータを送付しました。

最後に閉鎖事項証明書のデータ(取得費用¥500)を送り「株式会社ピースオブケイク」は過去のものである旨の確認を取ってもらい、手続きは全て完了です。

レジストラから手続き完了がJPRSに連携されると、JPRSから手続き完了のメールが送られてきます。これで長きにわたるミッションは完遂です。かかったお金は約¥9,000でした!

これでnote.co.jpも、俺らのものだ!

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最後までご覧いただきありがとうございました。

昨年は全然情シスっぽくないネタをぶっ込んだ情シスSlackのアドベントカレンダーでしたが、今年は業務に寄った話を投下させていただきました。同志各位の参考になる箇所があれば幸いです。

ちなみに、JPRSへの申請のところで正当性をしっかり目に確認しているため、例えば社長がラーメン好きだから「ramen-daisuki.co.jp」も欲しい的な申請は普通に却下される可能性が高いです。あくまで「属性型(組織種別型)・地域型JPドメイン名登録等に関する規則」第9条2項に照らして、望ましい組織だけが適切なドメインだけを追加取得できるとお考えください。

さて、明日はMacOSを業務で管理している方であれば、必ず一度はその知見に触れているkenchan0130さんが登場します。毎回学びが深いので、楽しみですね。

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上記の話と直接の関係はないのですが、奇しくも今日、SmartHRさんとForkwellさんが共同主催の Corporate Engineering Study #1「コーポレートエンジニアのこれから」でお話をさせていただくことになりました。(このアドベントカレンダーに参加するのを決めた後に登壇が決まったので、日付被りは偶然です)

note株式会社のコーポレートIT環境の変遷を通じて、どういう風にコーポレートエンジニアリングをしてきたかをお話しする予定です。

出番はなんと21時!みんな寝ずに見てくれよな!



より長く走るための原資か、娘のおやつ代として使わせていただきます。