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【こんか漬けとお酒】日本酒のうま味①

今まで自分の地元・石川県の日本酒の紹介と、自分のところの商品・魚のぬか漬けで、昔からの発酵食品である「こんか漬け」との組み合わせや相性を投稿してきました。その際に紹介してきたお酒はいずれも純米酒、しかも山廃仕込みのものばかりでした。

純米酒とは、アルコール添加がなく米と米麹、水だけが原料のお酒のことです。また精米歩合(米の磨き具合ですね)でいうと、純米吟醸酒の精米歩合は60%以下、純米大吟醸酒の精米歩合は50%以下に規定されているので、単なる純米酒はこれらに比べ米が磨かれていないお酒(以前は精米歩合70%以下との製法の要件がありましたが、2004年1月1日から規定は無し)ということになります。

吟醸酒はフルーティーで華やかな芳香と繊細な風味が特徴であるのに対し、純米酒の方は旨味がありコクやふくよかさが感じられ濃いお酒であるとよく言われます。実際に今まで自分が紹介してきた地酒もこのように表現しました。

ところで、旨味とはどんな味と聞かれたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。甘味といえば甘い味、酸味といえば酸っぱい味、辛味といえば辛い味や塩っぱい味と容易に想像できると思いますが、旨味はどうでしょうか。今回はお酒の旨味についての話、まずはそもそも旨味とはという話をしようかと思います。

旨味の発見の歴史

旨味とは、甘味・塩味・酸味・苦味とならんで、五味といわれる基本的な味のうちの一つで、認知されている味です。

旨味の発見・認知の歴史を辿ると1908年に東京帝国大学の池田菊苗博士によって発見(だし昆布の中から発見)されて、「うま味」と名付けられました。最初に発見されたうま味物質はグルタミン酸です。また、1913年に小玉新太郎が鰹節から抽出したイノシン酸もうま味成分であることを確認し、1957年には、国中明がシイタケの中から抽出したグアニル酸が新たなうま味成分であることを発見しました。

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しかし欧米では懐疑的に受け止められ、うま味とは塩味・甘味などが程よく調和した味覚に過ぎないと考えられていましたが、 2000年に舌の味蕾にある感覚細胞にグルタミン酸受容体が発見されたことによって、うま味の実在が世界的で広く認知されるようになりました。 

旨味とは

味の一つとして認識されたのは最近である旨味ですが、その味を表現するならこうなるでしょうか。

旨味とは、舌で感じることが出来るが、単体でよりも他の味…甘味や塩味とバランスよく合わさることで、その味わいにコクや深みを与え、美味しさを美味しさを膨らませ、倍増してくれる、そんな味であり要素である。

旨味物質の分類

旨味を呈する物質は、大きくアミノ酸系、核酸系、有機酸系に分けられます。

アミノ酸系…アミノ酸はたんぱく質を構成する最小単位の物質です。たんぱく質自体は無味ですが、それを構成するアミノ酸には甘味・苦味・旨味などを中心とした様々な呈味があります。旨味を呈するアミノ酸の代表的なものはグルタミン酸です。

グルタミン酸は旨味を示すアミノ酸の代表的なもので、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の中の一つです。グルタミン酸は昆布や野菜類、発酵食品(醤油、味噌、あとチーズもですね)に多く含まれています。

昆布

核酸系…核酸はリン酸を含んだ物質で、その中の旨味物質として知られるのはイノシン酸(煮干し、かつお節、魚、肉類に多く含まれてます)、グアニル酸(干しきのこ類に多く含まれています)です。

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有機酸系…有機酸とは一般に窒素を含まない炭素化合物のことを言い、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸が有名です。この中で旨味を呈するものはコハク酸(貝類に多く含まれる)が知られています。

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旨味の相乗効果

旨味物質は単独で使うよりも、アミノ酸の一種であるグルタミン酸と、核酸系旨味物質であるイノシン酸やグアニル酸を組み合わせることで、旨味が飛躍的に強くなることが知られています。

例えば和食では昆布(グルタミン酸)とかつお節(イノシン酸)、洋食や中華では野菜類(グルタミン酸)と肉類(イノシン酸)を組合せて出汁を取る理屈といえば分かりやすいでしょうか。

出汁旨味

旨味の増加

また、旨味成分はその該当食材を熟成させることで増加します。例えばトマトは緑から真赤に完熟するにつれグルタミン酸が増加します(且つ酸度が減少します)。チーズや生ハムなども熟成期間中にたんぱく質が分解されることによってアミノ酸が増加して旨味成分であるグルタミン酸が増えていくことが知られています。

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さて、ここまで旨味の本質、旨味を表し示すものの種類や名称、それらを組み合わせることで更に旨味が増す事、長期寝かせることで旨味が増す事を書き連ねました。次回は日本酒にもそういった旨味が入っているという話から続けたいと思います。


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