漫画家目指してたらプレゼンが上手くなった話
いきなり手前味噌ですが、僕はプレゼンを褒められる事が多い。
「分かりやすい」
「飽きない」
「太った?」
「気づいたら時間があっという間に過ぎてた」
「頭にスッと入ってきやすい」
「二重顎」
「そのシャツ、皺だらけじゃない?」
「太った?」
などなど。営業時代からコンペのプレゼンにはそれなり自信があり、「意外と自分は大人数の前で話すのは得意なのかもしれない」とは思っていた。でも独立してからこんなに講演や講座の仕事の依頼がくるとも思っていなかった。ちゃんと数えてないけど、講座や講演、イベントのファシリで多分年間200回はやってると思う。
ではプレゼンについてどこかで学んだり修行したかというとちょっと本読んだことある程度で特にしていない。それまでの経験が結果的にプレゼンに生きているというだけ。今回はそんなお話。
「緊張」は、高校時代に卒業した
プレゼンのハードルの一つに「緊張」があると思うけど僕は基本的に緊張しない。多少の高揚感はあるけど、緊張でガチガチ、というのは高校2年生以降一度もない。
高校2年生の春、僕はボクシングのアマチュア公式戦デビュー戦に出場した。その時、運がいいのか悪いのか、僕の対戦相手はテレビ番組の企画の選手だった。不登校の不良がボクシング元世界王者(渡嘉敷勝男)に出会って更生していく、という番組だ。なので、アマチュア大会なのに僕の試合だけ観客が大勢入り、テレビカメラに沢山囲まれて試合した。あの時は緊張した。
緊張のあまり試合のことはほぼ覚えていない。最後に覚えているのは試合開始前、相手の目を見た時だ。目の前にいるこの男は、間違いなく僕のことをぶん殴るためだけにそこにいる。四方はリングに囲まれていて逃げられない。え、何で僕はこんなことやってるんだ?なんでボクシングなんて始めてしまったんだろう。怖い。嫌だ。逃げたいー。
そんな事を思ったのを覚えている。そこから先は記憶がないのだけど、結果は2ラウンドTKO負けだった。主役である元不良のあざやかな勝利。僕は見事にテレビ番組の引き立て役になって、僕が無様にリング上でうずくまる試合は全国放送された。
あの日から、僕はあらゆる事に対して「大したことない」と感じられるスキルが身についた。そこから緊張しなくなった。
プレゼンのヒントは、読み切り漫画
で、まぁそれはいいとして本題だ。僕は全く意識も工夫もせずにスライドを作って話をしてるだけなのだけど、どうやら分かりやすいらしい。
何でなんだろうなと考えつつ、他の人のプレゼンを見て「なんでこんな分かりづらいんだろう」と考えたことがある。
そして気づいた。そうか、僕のプレゼンのルーツは漫画なのだ、と。昔、漫画を描いていたことが、回り回ってプレゼンのスキルになっていたのだ、と。
僕は漫画家を目指していた
実は僕は漫画家になりたかった。小さい頃から絵が好きで小学校の時には漫画を描いていた。当時は今ほど漫画やアニメが市民権を得ていなかったのでこっそり書いていた。
大学生になり、周りが就職活動を始めた頃、僕は自分のやりたい事を考えたけど、やはりそれは漫画だなと思った。そこで読み切り漫画を描いて、京都から夜行バスに乗って東京のヤングジャンプ編集部に持ち込みを行った。
運良く僕には担当がついて、デビューに向けて担当編集の方と打ち合わせを進めていた。結局僕は、打算的に考えてしまって漫画ではなく普通に就職を選んだのだけど、まぁそれはまた別の話。
で、何故漫画を描く事とプレゼンが繋がるのか、という話。僕はデビューに向けて頑張っていたので、いわゆる読み切り漫画を描いていた。はっきり覚えてないけど、31ページとかのページ数指定があった。
で、読み切り漫画というのは、その指定されたページ数の中で世界観や設定、キャラクターの紹介と起承転結をしなければならない。連載作品だったら読者はそれまでの経緯やキャラ設定を知っているから毎回わざわざ説明する必要がない。でも読切漫画は読者は初めましてなので「何も知らない人に対してゼロから説明して流れを作り、魅力を感じてもらう」必要があるのだ。
「これは読者は分かりづらいよな」
「読者が途中で読むのをやめないように冒頭のインパクトは大切だよな」
「クライマックスはここで持ってきて伏線回収」
などなど、色々考えながら漫画を描いていた。
そしてこうした試行錯誤の経験が、そのまんまプレゼン作りにいきたのだと思う。僕はプレゼンスライドを作る時は必ず最初から最後までストーリー性を大切にしている。一枚一枚のスライドは全て繋がっている。どの順番から話したらわかりやすいか、話についてこれる流れか、途中で飽きないか…。スライド一枚の順番にも時間かけて試行錯誤する。
本当に運がいいことに、こういう事を無意識でやれていたのだ。世の中にはプレゼンスキルについて解説する本や動画コンテンツは大量にあって、僕も勉強のために見たのだけど、そこで語られていることはほとんど僕が漫画を通して学んだ事だった。
僕のプレゼンの作り方は、読み切り漫画の書き方と同じだったのだ。
あの時のあれは、どこかで繋がっている
という事で、僕がお伝えしたいのは無駄になる経験はない、という事。ボクシングは僕を緊張から解放してくれたし、漫画はストーリーの作り方を教えてくれた。
何かに夢中になって取り組んだことがあるのなら、あなたの身体に中にも染み込んだ思考パターンやノウハウがあるはず。そしてそれは、他の物事にも適用できるかもよ、というお話。
それを振り返ってみると、ちょっと面白いことが発見できるかもしれません。
余談だけど僕が学生時代に描いていた読切の漫画の設定は、壁に囲まれた世界の中でくすぶっている少年たちが巨人を使って壁を破って外に出ていく、というお話だった。
大人になって進撃の巨人を初めて読んだ時、驚いたと共に「僕も意外と才能あったんじゃね…?」と少し悔しい気持ちがした。
やりたい事があるのなら、それに全力で取り組んだ方がいいよ、というお話でした。
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