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靴下の穴から覗く信頼の話
今朝、靴下を履いたら、右足の親指のところに穴が開いていた。
あらゆることに無頓着に生きているタイプなので、普段ならそのまま出かけてしまうことも多いのだが、現在自主的に「新年度だ!まともに生きようキャンペーン」実施中なのだ。ちゃんと気がついたときに捨ててしまおうと思った。
そのとき思い出したのは、高校の友人の言葉だ。
ある日、部活動の時間に部室に入ろうと靴を脱いだ友人が「あっ」と声を上げた。靴下の親指のところに穴が開いていたのだ、それを見た別の友人はこう言った。
「逆にして履けばいいじゃん」
つまり、親指に穴が開いているから目立つのであって、左右を入れ替えて小指の位置に穴がくるようにすれば目立たないというのだ。私は彼女の言葉に感銘を受けた。
もちろん、逆に履けば大丈夫、ということ自体は自分にもあった発想だったし、実際そうやってだらだらと履き続けたこともある。しかし、一般的にみっともない、だらしがないと言われるかもしれない、靴下の穴をそのままに履き続けるという行為を堂々と口にする勇気。ついでにそんなことを言っても糾弾されないだろうという世界への信頼感(実際、穴が開いていた友人は「そだね」と言って左右を逆に履き替えていた。やさしい世界である)。これはなかなか真似できることではない。
そんなことを思い出したので、友人の勇気に倣い、今日は左右を履き直して出ようと思った。しかし、やってみると悲しいことが分かった。その靴下は外側にワンポイントの刺繍がついていたのだ。履いていたパンツの丈では、左右が狂っていることが一目瞭然だった。
私は靴下を脱ぎ、掃除に使ってから処分するためにゴミ箱の横にそっと置いた。悲しい朝だった。まともに生きようキャンペーンは続く。
夕飯に、コゴミとニラを卵でとじたら緑色が異様に濃い何かができた。食べ続けたらそのうち光合成ができるようになるかもしれない。投句用紙になんだかんだ書いて封をした。明日忘れず投函すること。今日はここまで。ありがとうございました。
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