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サイレント戦法

横断歩道で信号が変わるのを待っていたら、すぐ横に選挙カーが止まった。

選挙期間中ではないのでただただ地方議員のアピールを、地方議員ではないおじいさんが喋っていた。ところで、選挙期間ではないときでもあの形の車は選挙カーと呼んで差支えないのだろうか。こういう車で喋っているおじいさんはウグイス爺と呼んでも差し支えないのだろうか。

そんなことはさておき、かなりの大音量だった。私は選挙カーに対してとりたてて悪い感想を持っていない。選挙は大事だし、この形式でのアピールが長年認められてきていて、現状もこういうアピールを評価する層が一定程度あるのなら、やるのが道理だろう。そのトレンド感の変化に興味がないこともない。

しかし、それと今自分の横でデカい音がしていても良いかというのは別問題なので、単純にうるさいな、と思った。内容も心を揺さぶられるようなものでもなかったので、右耳から左耳へと引っかかることなく抜けていった。

信号が変わり、私は信号を渡った。右折した選挙カーが私の後ろを走りぬけていった。ウグイスおじさんはしゃべり続ける。

「厳しい時代、これからの-」

話が止まった。ふっつりと声がやんだので、私は思わず振り返った。これからどうするというんだ。これからの???えっ???何???

どうやら、小学校の前を通り抜けていることに気づいて黙ったらしい。選挙カーはしばらく黙って走っていき、私から見えなくなったあたりで、また騒音を立て始めた。

人間、どんなに興味がない話でも、急に止められると続きが気になってしまうものらしい。本番の選挙演説でも、ときどき急に黙ってみるとかえって注目が集まるのかもしれないのでオススメだ。今日は路上でそんな


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