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お洒落な泥棒になれそうな話

 財布のチャックを閉めながらコンビニを出ようとしたら、財布を落とした。

よく物を落とすのだが、別にとりたてて不器用だというわけではない。どちらかといえば自分の器用さを過信して物を落としている。今日もおにぎりの入った持ち手のない薄手の袋を左手の小指と薬指で掴み、さらに自動車の鍵を左の脇の下に挟んだ状態で、歩きながら右手に持った財布を閉めようとしていた。バカなの?

チャックが閉まってない財布だったので小銭も札も全部放り出されてしまった。とっさにまず紙幣数枚を押さえることに集中したので、お札を風で吹き飛ばすことは避けられた。

その後、地べたに這いつくばって小銭を拾い集めながらなんとなく想像したのは、映画とかで見たことがあるような、何らかのハプニングによって上空から高額紙幣が大量にバラまかれるシーン。大泥棒か大金持ちか、なんだかんだの事件があったニューヨークかなんかの大都会で、摩天楼から降りそそぐのだ。

実際自分が街を歩いていてそんなシーンに居合わせたとしたら、どんなリアクションが取れるだろうか。なんとなく、ワッと声を上げて拾い集める、みたいな行動には即座に出られない気がする。なんか怖いし。わけわかんないし。

でもどうだろう。なんとなくスルーするのも経験として惜しいので、記念に1枚ぐらい拾っちゃうかもしれない。誰の物かもわからないし、偽札だったら怖いので、財布のいつも紙幣を入れるのとは別のポケットに入れておくんだろう。そして半年後に、なんでこんなとこにお札入れといたんだっけ?と思いながらうっかり使っちゃうんだろうな。ちゃんちゃん。

撒く方になるなら、バラ撒くために盗み出す義賊なんかよりは、うっかりさんで撒いちゃった、みたいなほうが文学として美しい気がする。大金を首尾良く盗み出すんだけど、途中で気づかないうちにはずみで全部撒いてしまうのだ。華麗に逃げおおせて、アジトで確認してみたらあれ?無い!!オチとしてはこっちの方がちょっとオシャレっぽい。結果にとらわれない純度の高いスリルのみを味わえる気がする。

私もコンビニ前で財布をぶちまけるようなうっかりさんなので、そういう大泥棒になれる素質は十分あると思う。オーシャンズみたいなチームに、うっかりさん枠で入れてください。


良い天気でした。今日はここまで。ありがとうございました。


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