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着信蟻

着信音が変わった。

スマホの着信音は特に設定をいじらずデフォルトで使っていたのだが、機種が変わってデフォルトの音も違うものになった。前よりも緊張感を煽らないメロディになったので良い。

電話はかけるのも取るのも嫌いだ。なんだか”逃げられない”感じがするから。

対面で喋っているときは、言葉に詰まったり返答しにくくなったりしても、なんとなく余裕があるような気がする。ジェスチャーをしたり、手元に目をやったりしても場が持つ。電話だと会話に集中しなければならない。私は別にコミュニケーションに自信がある方じゃないが、親しくもない人と1on1で会話のラリーを続けるのは苦手ではないので、そういう小手先の技術を封じられるのに恐怖があるのだ。

掛けるのも、相手が忙しくしていたらどうしようと考えて、いつまでもうじうじしている。うじうじすればするほど掛ける恐怖がでかくなる。

とはいえ、電話が嫌いとか言っておいてあれだけれど、私はメールも嫌いなので、正直電話してくれたほうが嬉しいこともある。メールは逃げられるが、電話は逃げられないので、逃げちゃダメな案件のときは積極的に逃げられない状態になったほうが良い。メールは最悪そのまま放置してしまう。

着信音が穏やかになったので、ちょっとだけ出るときの憂鬱さみたいなものが減った。いつもドキッとさせられて、その動揺を抱えたまま電話に出るのが本当に嫌だったのだ。100メートルの選手だって、クラウチングの姿勢を取っている最中に不意にピストルを撃たれていたら万全のパフォーマンスはできないだろう。

音じゃない方法で着信通知を出す方法ってないのだろうか。電話がかかってきたらかけてる眼鏡の縁がビカビカ光るとか。視覚とか触覚とかでなんとかならんもんか。もうあるのかな。そういうやつ。


今日はここまで。ありがとうございました。


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