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経済の闇・格差社会の問題

今回は、デービッド・アトキンソン氏と山崎 大祐氏の対談をお届けしたい。


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デービッド・アトキンソン(David Atkinson)

デービッド・アトキンソン氏は、イギリス出身で日本在住の経営者。小西美術工藝社社長。三田証券株式会社社外取締役。金融アナリストの経歴を持つ日本の観光・文化財活用・経済政策の専門家。

経歴

オックスフォード大学で日本学を学ぶ。アンダーセン・コンサルティングやソロモン・ブラザーズに勤務し、1990年頃に渡日。1992年にゴールドマン・サックスに移ってアナリストとして活動し、バブル崩壊後の日本の銀行に眠る巨額の不良債権を指摘。不良債権問題が顕在化し、その名を高める。2006年にパートナーに昇任した後、2007年に「マネーゲームを達観するに至って」退社した。
アナリストを引退して茶道に打ち込む時期を経て、所有する別荘の隣家が日本の国宝や重要文化財などを補修している小西美術工藝社社長の家だった縁で経営に誘われて2009年に同社に入社し、2010年5月に会長就任。2011年4月に社長兼務となって経営の建て直しにあたった。その後、日本の文化財政策・観光政策に関する提言などを積極的に行い、東洋経済新報社の著書『新・観光立国論』で第24回山本七平賞を受賞
2015年5月より東洋経済ONLINEにて文化財・観光・経済政策に関する題材を中心とした連載を開始。2016年より三田証券株式会社の社外取締役に就任。2017年6月より日本政府観光局の特別顧問に就任。


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山崎 大祐 (やまざき だいすけ)

山崎 大祐 氏は、日本の社会起業家で、株式会社マザーハウス代表取締役副社長。マザーハウスカレッジ主宰。東京都出身。

略歴

2003年3月慶應義塾大学総合政策学部卒業後、ゴールドマンサックス証券でエコノミストとして日本及びアジア経済の分析・調査・研究や各投資家への金融商品の提案を行う。
2006年、山口絵理子と共に「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念とする株式会社マザーハウスを立ち上げ、2007年から取締役副社長として、本格的に経営に参画。2019年3月より、同社代表取締役副社長に。年間の半分は途上国を中心に海外を飛び回り、マーケティング・生産両サイドを管理。
「Warm Heart, Cool Head (熱い情熱と冷静な思考)」を両立しながら社会を変革するため、挑戦を続けている方々をゲストに招き、対談を通じて現在の挑戦につながるきっかけや、結果を生み出すための戦略・思考を議論する場「マザーハウスカレッジ」や同じテーマで経営者向け経営ゼミなども代表として運営。その他に、ブランドコンサルティングファームである株式会社Queの社外取締役や、日本ブラインドサッカー協会の外部理事なども務める。


①日本は輸出大国ではない

山崎氏:デービット氏の著書によると、ドイツの中小企業の輸出している企業比率5割にも上るが、それに比べ日本は輸出している企業は10%程度しかない

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日本輸出企業数

帝国データバンク 2016 年 11 月 9 日時点企業概要データベース「COSMOS2」

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クラウドシエン2018.4.9データ国内会社の数まとめより

山崎氏:ドイツの輸出企業の多さの要因としては、陸続きという大陸国家やEU加盟国等という側面が影響している。

日本は輸出大国のイメージがあるが、グローバルフィールドで戦っている企業数は、圧倒的に少なく、今や国際競争力は全然ない

MMT(現代貨幣理論)の前提は、経常収支が黒字であるという事が、重要な点で、海外から多くの資金を得ているという状況が続いている。輸出をすれば、当然、元をもらうとか、サービス、例えば日本に来てもらいインバウンド消費していればお金がもらえるという状況は、今でも経常収支が黒字で続いてます。

それが日本のイメージは、沢山物を輸出しているからと思い込んでいるかもしれないが、実は貿易収支や、サービス収支は最近増えてますが、貿易収支は均衡していて、日本は物を輸出して稼ぐ国ではなくなっている。

外からお金が入らず、外にお金が出ていくようになり、財政で赤字になると、外国人投資家が国債を買うようになり、日本になんらかのショックが起き、外国人投資家が引上げ、ハイパーインフレが起きるとか、金利が急騰することが起きる可能性がある。

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ハイパーインフレにより金融価値が下落した状況

1970年代アメリカのスタグフレーション、や、南米などの金融危機みたいに起きたことで、日本はそれが起きるリスクがないといっているのは、経常収支黒字だからであるが、そのほとんどが、所得収支といって、これまで50年積み上げてきた海外の資産が多くあり、日本は、そこから金利子配当から大量にお金が入っている

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スタグフレーション:総需要の高まりが価格を上昇させる場合と異なり、何らかの外的要因によって生産コストが増加し、それが販売価格に転嫁されるコストプッシュインフレーションの場合に起こりうる。需要が変わらない中で価格が上昇するため取引量も減少することになり、インフレ不景気複合=スタグフレーションになる。具体例は、1973-1974年第1次オイルショック1979年第2次オイルショックでは多くの先進国がスタグフレーションに悩まされたことがよく挙げられる。

だから日本はファイナンスの心配する必要がないという状況であるが、中長期的に考えると、競争力がほとんどないと、海外の資産を食いつぶしていく可能性がある。

目先5年とかなら良いが、20-30年のターム(期間)で、日本の競争力を考えると、間違いなく財政的にも危機的状況がくる可能性はあると考えているが、そういうポイントもほとんど語られていない。

短期と中長期の話がごっちゃになっている。日本にとっては中長期が重要でデービットさんも仰っている通り、2050年には現在より労働人口30%減少する。そんな状況が来たら、生産性が現状で成長を続ける事が困難になる。

労働人口

30年のタームで考えたら、この国際競争力だったら、日本は債務国になる。

今やるべきことは、生産性の低い企業に大量の補助金や助成金などの資金を投入する事ではないのではないか。


②危機は突然やってくる

デービット氏:私は、大学でケインズ学を学び、論文を書いたが、そこで政府支出の目的は、インフラを改善する事であり、中長期的な生産性に貢献する事であると書いた。

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初代ケインズ男爵、ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes、1st Baron Keynes、1883年6月5日 - 1946年4月21日)

ケインズ経済学(ケインズけいざいがく)とは、ジョン・メイナード・ケインズの著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936年)を出発点に中心に展開された経済学(マクロ経済学)のこと。

誰でもいいどうでもいいという仕事を多く増やすべき、という事はケインズ学の中には、記載されていない。

基礎研究や社会的インフラであったり、そういう意味では、昔の日本政府がやってきたことで、高速道路や新幹線、大学を作ったりなど基礎的なところ全部プラスになっていて、労働生産性が上がりやすいようにする事は書いたが、山崎氏が仰るように、単に財政により経済合理性のない小規模事業者にも資金支出を大量に行うのがいいと言っても、短期的にはプラスに見えるが、中長期的にはツケが回ってくることが問題

もう一つは、日本は現在大丈夫だから大丈夫という論調は、私が見てきた中で、危機になる事は、徐々に危機にはならない。ギリシャスペインも同様で、昨日まで何ともなかったが、いきなり問題が噴出し混乱に陥った。それはアメリカのリーマンショックもそうです。ビジネスが続いていて、突然流動性が無くなることで、全てが混乱に陥る。

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ギリシャ危機の原因


③今の日本は70年代の英国にそっくり

デービット氏:私はイギリス人として今回の話を聞いて思い出すのが、子供の頃は、大英帝国で世界の1/4の貿易を、ある意味で制覇していて、一時期は貿易船の9割がイギリス隻だと聞きました。世界で動いているものは、イギリスの船に乗っているという実態だった。考えられない富が全世界にあった。

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実質的に、大英帝国がダメになり始めるのは、1930年代。しかし、国が爆発したのは、1970年代になる。40年の間に、ドイツ、ほぼイギリスだけで、アメリカが大戦に参戦するまでは、イギリスだけで、ドイツ、フランスの資源だとかを全部集中させた。欧州全体の資源がドイツのナチス時代のヒトラーに集中し、そこで戦った国がイギリス。その大戦でとんでもない借金をしたが、それでも耐えられた。

実際には、その当時何が起きたかというと、敗戦国に対して、アメリカが借金をファイナンスし、負けた国の債権を放棄する。それで、勝ったイギリスの、アメリカとの債権は支払いを継続させ続けた。

その事により、負けた方が得をし、勝った方が大損を抱えた。この事は、陰謀論好きからすると、アメリカは自分らが世界を席巻するために、対英帝国をつぶす必要があり、棒引きしない事で、帝国を運営していくための財源を奪ってしまえばいいとし、実際にこれは成功した。

第一次世界大戦の賠償


第一次世界大戦の結果、欧州連合国は多額の対アメリカ・イギリス向け戦争債務を抱え込んだ。パリ講和会議では敗戦国である中央同盟国に対して賠償金を支払わせることが決定。ドイツに対し1921年4月29日、ロンドン会議において1,320億金マルクと総額が決定された。しかし賠償金調達のためにマルクの為替レートは急激に低下し、ドイツは賠償金支払いの延期を求めた。しかしフランスは、支払いを確保するためとしてルール地方を占領したが、これは逆効果であった。ルール工業地帯を失い、さらに同地のストライキを支援するために紙幣の大増刷を行ったため、ドイツ経済は破綻し、ハイパーインフレーションに陥った。1ポンド20パピエルマルクだった為替レートは、1ポンド500億パピエルマルクまでマルク安が進んだ。このため連合国も従来の賠償金取り立て方式は継続不可能であるとみるようになった。またオーストリアも経済破綻し、同国への賠償請求は事実上棚上げされた。



1924年新マルク(レンテンマルク・ライヒスマルク)の導入で通貨が安定すると、賠償金の支払いプロセスにアメリカを参加させた。協議の結果、ドイツに賠償支払いのための債権発行を認め、1年に25億金マルクの支払いを行うドーズ案が採択され、ドイツ経済は安定期を迎えた。しかしドイツ経済はやがて減速し始め、ドイツは賠償金総額の再確定と減額を求めた。1929年、賠償金支払い年数を59年とし、賠償金総額を358億金マルクとするヤング案が了承された。ところが世界恐慌の発生で再び世界経済、特にドイツ経済は再びどん底の状態となった1931年にフーヴァーモラトリアムで一年の支払い延期を認めたが、結局、支払い不能が明らかになり、1932年のローザンヌ会議でヤング案の停止と、賠償金残額を30億金マルクまで減額することが決定された。しかしドイツの経済混乱は右派、特にナチスの台頭を招き、ドイツはローザンヌ案を批准することはできなかった。
1933年ヒトラー内閣が成立ナチスが政権を取ると7月に外債のモラトリアムを宣言し、ドーズ債、ヤング債の利子支払いを拒否したが、実際にはアメリカを除く国々に住む債権者に対する利払いは行われていた。第二次世界大戦によって利払いは完全に中止され、その後の冷戦下で継承国が決まらなかったため、1953年に西ドイツ(ドイツ連邦共和国)政府は西側諸国との間に戦前の債務の支払いを約束するとともに、ドイツ統一まで支払いを猶予するロンドン債務協定(en:Agreement on German External Debts)を締結した。
ドイツ再統一後、ドイツ政府はドーズ債、ヤング債の利払いを再開。2010年10月3日、ドイツ政府は支払い要求のあった債権に対する利払いを完了させた。完済まで実に89年を要した。

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第二次世界大戦の賠償

第二次世界大戦の結果、ドイツは、1945年に合意されたポツダム協定で、連合国へ生産設備や動産による現物賠償を行った。1953年に西ドイツはロンドン協定において再統一までの賠償支払いを凍結することを宣言し、1953年8月には東ドイツ(ドイツ民主共和国)とソビエト連邦の間で、賠償請求権の放棄が合意された。1990年9月12日ドイツ最終規定条約により、ドイツ政府の第二次世界大戦交戦国に対する戦争賠償金問題は終結。これはホロコースト被害者諸個人に対する賠償問題は含まれない
日本は各国との個別合意により、総額1兆300億円の賠償金を支払っている。
その他の旧枢軸国は、1947年に締結されたパリ条約で、連合国に対する以下の賠償金の支払いに合意(1938年価格)。
イタリアは、ユーゴスラビア、ギリシャ、ソビエト連邦、エチオピア、アルバニアへ3億6,000万ドルを支払う。
フィンランドは、ソビエト連邦へ3億ドルを支払う。
ハンガリーは、ソビエト連邦、チェコスロバキア、ユーゴスラビアへ3億ドルを支払う。
ルーマニアは、ソビエト連邦へ3億ドルを支払う。
ブルガリアは、ギリシャとユーゴスラビアへ7,000万ドルを支払う。

1947年から帝国が実質的に崩壊している。

1947年からサッチャー政権が始まるまで、32年間ある。その間に、グローバル市場におけるイギリスのブランド、ブランドを持っている会社は激減し、労働生産性が悪化する一方で、1970年のもう一つの特徴である、子供が減少し人口が横ばいになった事が生じた。

現在の日本で起きている事と同じ現象が、1947年以降のイギリスで起きていたという事です。

その問題に対して、イギリスが行った政策は、財政支出により企業を補助したり、国有化することを行った。

1979年になり、その政策が限界になり、経済合理性を戻すしかないとの事で、サッチャー政権が誕生した。


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サッチャー女男爵マーガレット・ヒルダ・サッチャー(Margaret Hilda Thatcher, Baroness Thatcher 1925年10月13日 - 2013年4月8日)

サッチャー政権の政策「現代風のブルジョア革命」の内容

国営企業の民営化、非効率企業への国家援助を取り外し、国際競争に耐え得ない企業は倒産させる。
最高所得税を 83%から 40%減税し、豊かな層の企業活動を一層活発化させる。
慣行の上にあぐらをかいて働かない労働組合に対して、労働法を改正して労働組合活動を制限し、国営企業をはじめ企業から多くの失業者を作り出し、失業の恐怖の下、働くことを強制する。
労働者に公営住宅を払い下げ、所有意識を持たせ、国営企業を民営化する際、株式を払い下げ、900 万に及ぶ株主を作り出し、企業の業績に関心を持たせる。

その間にIMF(国際通貨基金)が入って危機に陥る。


④地方が抱える巨大な財政リスク

山崎氏:もう一つの懸念は、全然違う視点でいうと、今回の話の内容は、産業間の話もあるし、対外的な日本と海外という話もある。もう一つとして、中央地方という話があると思う。

見落とされている視点の1つで言うと、今回の新型コロナウイルスの話でいうと、今、財政のバッファで持っている基金が地方にはあるが、それを第一波が来た時の助成金系の事とか、コロナ対応基金とか色んなことで、全部使い果たしている

リーマンショック以降、10年貯めてきたお金を全部地方は吐き出した。

地方の基金(バッファ):大和総研 政策調査部 鈴木 準/神田 慶司

現在、民間企業が多額の現預金を保有していることが批判的に議論されているが、公的部門においても同じ。公的部門が基金を保有することはその分だけ住民の負担が重くなっている(端的に言えば、基金の保有が不要であるならその分の減税ができる)。行政は真に必要な財政需要が発生した場合、その都度、住民に負担を求める内容の予算を議会で審議するのと、潤沢な基金をバッファーとして保有するのとで、いずれが住民にとって望ましいのか、十分な検討が求められる。

私は、ポピュリズム的なことの危険性を感じていて、今、政府もある意味で、必要な対策で仕方なかったのかもしれないが、お金を支出した。

ポピュリズム(populism)平民主義、公民主義、人民主義、大衆主義

一般大衆の利益や権利を守り、大衆の支持のもとに、既存のエリート主義である体制側や知識人などに批判的な政治思想、または政治姿勢のこと。日本語では大衆主義(たいしゅうしゅぎ)や人民主義(じんみんしゅぎ)などのほか、否定的な意味を込めて衆愚政治大衆迎合主義(たいしゅうげいごうしゅぎ)などとも訳される。また、同様の思想を持つとされる人物や集団をポピュリストと呼び、民衆派や大衆主義者、人民主義者、もしくは大衆迎合主義者などと訳される。

ただ、どこでその支出を止めるのかの判断は難しく、お金をもらって当たり前みたいな状況になると、MMTみたいな議論は、とにかく出せば出すだけ大丈夫という話になるが、地方に関してはそうではないと思っている。

国内でも、地方の選別が起きる可能性は高いと思っており、財政的に厳しい、これはダブルパンチで対コロナでお金を使わなければいけない。

税収も減少する事は想定され、リーマンショックの時は、予算に対しての税収は、10兆円くらいマイナスだった。2年連続で10兆円マイナスになっている。

つまり、今はお金をドンドン歳出しているが、前提として予算は、税収の額がこれだけとしているが、コロナで大幅に減少する部分で地方債を発行しなくてはいけない。

結構、財政の不健全な地方自治体の地方債が買われないことで、北海道の夕張市(財政破綻)みたいなことが起こる可能性がある。


夕張市破綻から10年「衝撃のその後」:NHKスペシャル取材班

「財政破綻」「超高齢化」「人口減少」という三重苦を抱えた、夕張市の衝撃的な現実。夕張市は、財政破綻で2007年に財政再建団体に指定されたことをきっかけに、事実上国の管理下に置かれ、国の同意を得なければ、新たな予算を計上することも独自の事業を実施することもできない「自治」が許されない都市だ。夕張市の財政はいまも火の車だ。税収が8億円しかない夕張市が毎年26億円を返済。
少子化が進む中、7つの小学校4つの中学校1校ずつに統廃合され、図書館や美術館などの施設は廃止公園は整備されず医療機関も縮小55人いた管理職の定年退職を控えた部長は全員課長級は3人を残し退職。残った職員の給与年収で平均4割削減。退職する職員が相次ぎ、260人だった職員数が減少し人件費はさらに圧縮された。
集会所や公衆便所や小中学校などの公共施設は次々に閉鎖され、残された公共サービスの水準も全国最低。老朽化した市営住宅を直すお金も、危険な廃屋を取り壊すお金もない

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デービット氏:そうすると、出来なくなった分は、何らかの形で国が調達して、交付金とかそのような形になりますか?

山崎氏:すでに国はそこを懸念していて、国が代わりに調達するとか財政投融資の資金で地方債買うような話も出ている。一応やりますが、財政健全化団体みたいな風に自治体がなると、夕張市も結局、公的サービスを大幅に小さくされて、人口も1/10程度になった。人口も減少し、かつ財政をマクロで見てしまうと、お金を使えばいいという話になるが、ものすごい歪みが発生する可能性があると考えている。

この国だと全員守れない。ひどい団体や業界はひどいという事が起こってくるので、この歪みが大きくなると、当然、格差社会がより大きくなる現場で働いている人や、自治体間格差とかは広がることを前提に置かければいけないと思っている。


⑤日本はアメリカを鵜呑みにしてきた

デービット氏:日本は、これから格差社会になるといわれるが、先進国ではアメリカに次いで第2位である。

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たまに生産性を上げると、格差社会になる反論されるが、生産性を上げてこなかったのに最初から先進国で2位生産性と格差は、アメリカ以外は、プラスの方で相関関係が強い

途上国に行けば、生産性の低い国で格差は大きい。ごく一部の人がお金を持ち、それ以外の人は貧困にしている。

生産性が上がれば、社会保障制度を充実させていく事は、格差をなくすためのもの。欧州では生産性が高くなるほど、格差が縮む

アメリカだけは違う。

日本はアメリカを今まで、全然事情が違うのに、鵜吞みにしてきた。アメリカの経済学者のMMT理論の話も含まれる。アメリカの事を日本に当てはめていいのかということを、1回も検討することなく、アメリカがやっている事を自分達もやるみたいなことである。

完全雇用もそうですが、なぜアメリカでMMTの理論になりやすいかというのは、人口が増加しているから。人口が増加している中で、完全雇用をどうすればいいのかという問題を抱えいるため。

日本は人口が激減しているにも関わらず、単に言っている事と言っている問題を無視して、違いを無視した形は良いとは思わない。

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日本の人口推移

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アメリカの人口推移


⑥賃金アップが必要な理由

山崎氏:デービットさんが言ってた、最低賃金を上げる議論は、賛成です。

経営者としては、我が社は、最低賃金での雇用はいないが、小売業みたいなとこで、最低賃金が上げられたら、自分らもヒットするのでポジショントークではない。

最低賃金を上げていかなければいけないというのは、格差社会的な話でいうと、世界的な色んな研究があるが、中間層が多い方が安定するといわれている。

厚労省 中間層への課題

中間層の復活に向けた課題:厚労省

アメリカが、今格差社会で荒れているのは、中間層の激減が多く、二極化しているから。

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ここの生産性が大事な事というのは、労働生産性が上がりながら、収入が増え効率が上がる。かつ労働分配率が一定以上維持されることが重要。

労働分配率(労働分配率(%)=人件費÷付加価値額 )

今、起こっている事は、労働生産性が上がらないが、労働分配率も下がっているか低水準にあって、現場で働く人たちに給与が落ちてこない現実が格差社会を作っていると私は思うので、最低賃金を上げ労働分配率を一定以上の維持をして生産性を上げることで、人々の給与も上がり購買力も増える。

購買力が増える事で、経済が回る仕組みを作っていく必要がある。

今までの日本はそうだったはずだが、これまでの30年で完全に失われていて、アメリカ型格差社会の入り口に我々は、完全に立っている。

経済の仕組みだけでなく、社会不安や社会的な問題になりつつあると思っている。

デービット氏:格差の問題、最低賃金の話もそうですが、これは、完全に政府の政策次第最低賃金政策です。

格差社会の定義というのは、上の1割と1番下の1割の倍率。

そうすると格差というのは、アメリカが色々いわれているが、実際には上が大きくもらってできている倍率という面はいうほどない

収入というよりは、ものすごくもらっている人であれば、ストップオプションであったり、株で持っているとか、資産の格差が大きい

税金を逃れるために、所得よりは別の形で得ている

そうすると、格差は、上が広がることで広がることもあるが、下に広がることで広がるともいえる。

多くの日本の専門家は、エビデンスを全然気にしていない。

一部の人から聞いた話を、360万社の企業に聞いたかのように全部当てはめてしまう。それは、エピソードベースの話でしかない。このような話はとても多い。

山崎氏:感じます。あと、政治家の方の会見でも、数字ばかりで現場をしらないというのも感じる。

デービット氏:実際、アメリカは、ビル・ゲイツとかすごいというが、それは一部の人たち。

アメリカの格差はなぜ出来ているかというと、中間層から下の層にかけての部分が原因と考える。

下限の方は、最低賃金で決まる。最低賃金なんで、これ以下は払ってはいけない。

当然平均(中間層)があって、下限との格差が大きければ、その分格差が広がる。

最低賃金の設定の仕方によって、政府が格差を決めている。他の政策により偶然にできたとか、竹中平蔵さんがどうこうとか、そんな俗説感情論ではなく、ただ単に最低賃金いくらかによって、この倍率が自動的に上がっていく。これがポイントになる。

それを、何ではかるか?

最低賃金を決める時に、平均の問題があるわけで、中央値に対して何%にするかという事は、先進国の決まりである。

なので、中央値に対して、日本は、OECD(経済協力開発機構)の中で下から2番目で、1番下は、アメリカになる。

この額は途上国より全然下になる。

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日本の格差はアメリカに次いで2番目というのは、中央値に対する比率がアメリカ33%日本42%ということであり、この格差がある事によって、多少の平均よりは、中央値と下限の差が大きいという事である。

1番高いのは、フランスで62%で、中央値とほとんど差がないという事になる。

山崎氏:これは重要な議論で、政策変数として、最低賃金が注目され始めたのって、ここ数年。

日本では、デービットさんが発言したことで、注目されるようになったと思います。今までは、言う人がいなかった。

格差社会にもそうですし、最低賃金で働いている人たちの所得弾力性というか、消費力が高い。収入が全部消費に回り、貯蓄できない。

最低賃金を変える事で、その現状がかわるのではと思う事が一つと、研究結果で欲しい事が、デフレ経済に対して、最低賃金を上げる事が、1番インパクトあるのではと思っている。

そこをエビデンスで示せれば、デフレのために金融を大量に投入すると言われていた事も、最低賃金を一気に上げるわけはなく、徐々に上げる事で危機を打開できると思います。韓国は一気に10-20%上げて色々な問題が起きてしまった。

適切な労働生産性でカバーできる形で、最低賃金、労働生産性を上げていき、所得弾力性の1番高い人たち収入が増える事は、1番健全じゃないかという風に思います。

デービット氏:経済合理性のない会社というのは、何らかの理由で存続が出来た。

その理由の1つは補助金、もう1つは真面目な人の非常に安い賃金で、本来その方を雇う事が出来ないのに、先進国でありながら、途上国並みの値段で調達することができるから、本来ならば途上国にその仕事を出さなければならないのに、国内で出来てしまう。だから、国内途上国が出来てしまっている。

そのような企業が、継続できるわけがないので、存続する以上は、変えるつもりや、変える必要もないし、最低賃金が低い事が存続の原動力なので、当然、ポジショントークで、アメリカの南の方で奴隷制度を壊すのは反対で、内戦になるという反論があるのと同じである。

今日の議論は全部繋がってますが、労働生産性を上げてこなかった、上がらない、そこで問題になるという事で、MMTをやっていても、ある程度は効果が出るが、また壁にぶつかる

このは、結局、最低賃金を引き上げる事に反対ということ。なんの反対かというと、労働生産性を上げる仕組みになっていないので、当然、猛烈な反対がくることは、私の理論が正しいと実感します

反対する人の自分達の訳の分からない、労働生産性のないところは、継続できないじゃないかと反論しますが、それは、当たり前で継続するべきものではないからである。


⑦最低賃金を上げても雇用は減らない

最低賃金を上げていくと、大量に反対する人たちが失業する事は間違いないが、これまでの6年間のように、最低賃金を引き上げていった場合に失業者が増えるといわれ、実際371万人増加したが、その方たちはほぼ最低賃金。

その間、起きたことは、1999年以降日本企業の数が126万社減少している。ここで日本はエビデンスではない感情論で話されることが多く数字を見てない事が問題であるが、126万社減少している事に対して、雇用が増加している。

つまり、企業数雇用数は、いわれているほど一致しないということ。

世界的にも確認されている事実があり、最低賃金を引き上げると起きる事は、小規模事業者に働く人たちが、中堅企業大企業に移動する。

それによって、規模事業者の数が1企業、日本は3.4人しかなくそこが激減することで、単純計算で、126万社減るということは、300-370万人もの人中堅企業や大企業に動くという事になる。

最低賃金を徐々に引き上げることで、人間が少しづつ移動していく。

問題は、企業数が減ること。

経団連の場合は、大企業の代表であり気にしない。

経済同友会は、主に中堅企業でその影響を受けない。

商工会議所は、百何十万社という会員数だが、大企業と中堅企業で合わせて、54万社くらいなのに、54万社を超えた時点で、主に会員が小規模事業者なので、小規模事業者から会員一律いくらという形で、会員の数が減少すると、自分達の収入が困る商工会議所が、最低賃金の引き上げの中止や凍結を提言している。

それは、日本経済はどうなのか、もしくはそこに働いている人はどうでもよくて、単に商工会議所として、自分達の収入が減ることはお断りするということになる。

そうゆうふうに考えると、この仕組みは、どこも、エビデンスのない中で、自分達はそのままでいいという考えにより、労働生産性が上がらない最大の理由は、今までやってきたことをそのまま継続させてくださいといっていることにある。

日本政府は、その調整が出来ないから、MMTを使いその調整から逃れるためにMMTが使われることは、危険だと思います。

今後、さらに両氏の対談を投稿していきたいと思います。


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