組織の狭間で反復横跳び!プロダクトデザイングループのカイゼン活動
SmartHRプロダクトデザイングループ(プロデザ)所属のkgsiです。
先日、社内の他組織がプロデザに対してどのような印象を持っているかをヒアリングする機会を得ました。その中で「プロデザって凄そうだけど怖い」「活動実態がよくわからない」...といった声に歯がゆさを覚えました。
このような有り様は打ち壊していくぞ...!ということで、今年は積極的に情報を共有していこうと思います。
闇のベールに包まれた、我々プロデザが何をしているかという一端として、プロダクトデザインラボというカイゼン活動について説明しましょう。
我々は「UIの負債」に立ち向かう
SmartHRでは多数のチームが機能単位の開発を同時に行うLeSS(大規模スクラム)を採用したり、アジャイルコーチを招聘してプロダクトのバリューストリームを見直したりと、サービス開発のアジリティを上げるための施策を次々と行っています。
サービスのスケール速度が高まる一方で、プロダクトデザインのクオリティを我々が担保できているか?と尋ねられれば、残念ながら答えは否です。
要因はいくつかありますが、最たるものを挙げると以下のとおりです。
・大規模スクラムで開発する上で、ルール整備、フィーチャーチーム(機能単位のチーム)間の連携・情報共有が追いついていない
・「アジャイルであれ」とする開発現場では、クオリティが優先順位から溢れるケースがある
すでに、SmartHR UIという共通コンポーネントライブラリやSmartHR Design Systemなど、プロダクト全体を意識した仕組みは構築・運用され、自律駆動の精神で個々人やチームが働きかけてプロダクトに反映していますが、上記に挙げた課題が重なり、「UIの負債」が蓄積してしまうことは不可避です。
現在のプロデザの体制は、デザイナーが機能ごとのチームに分かれて担当し、各々は目の前の責務に邁進しがちなため、互いのプロダクトに対しての理解や関心が薄くなりがちなことも課題でした。
「プロダクトデザインラボは」これらの課題に向き合う手段を試行錯誤しながら、歩んできました。
プロダクトデザインラボとは
「プロダクトデザインラボ」とは業務上の垣根を超えて、プロダクトの「UIの負債」をゲリラ的にカイゼンする課外活動です。
発足してから約1年経ちますが、変遷に変遷を重ね、2021年1月現在では以下のような目的を設定しています。
・スケールによって生まれたUIの歪み、ズレを改善する
・画面の負債を整理し、正しい姿を提示する
・スコープや優先順位の都合でこぼれてしまう、ユーザーの体験を損なうカイゼンを迅速に行う
プロデザはユーザーと製品の接点、「ユーザーに見えて触れるすべての場所」の品質に責任を持っています。
その責務の元、後述する緩やかなスプリントやストレッチな割り振りの仕組みによって、自律的なカイゼン活動に取り組んでいます。
バラエティに富むUIの負債にグループ全体で挑む
我々が挑むUIの負債はバラエティに富み、機能開発に相当するものや、レイアウトルール設計、ライティングの修正など多岐に渡ります。当然、その解決方法は画面の再設計もあれば、直接コードで修正したほうがいいタスクなど、一様ではありません。
この多種多様な課題を解決するために、プロデザメンバーのグラデーションのあるスキルセットを活かします。メンバーの能力は一律ではなく得意・不得意な領域がそれぞれあり、フィニッシュワークが得意なデザイナーもいれば、コードに直接コミットするデザイナーもいます。
その差分を補うために、タスクの内容に応じて必要なメンバーとモブプログラミング、モブデザインを行い、能力の補完と学習を行っています。
「許可より謝罪」でカイゼンする
大規模な開発組織のパターンとして、デザイナーとエンジニアの役割が分かれている組織もありますが、プロデザでは良いデザインを提供するための手段に制約は無く、最も迅速に価値提供ができる手段として、直接コードからカイゼンすることを推奨しています。
プログラミングができるデザイナーがペアプログラミングを実施し、2020年末の時点でプロデザの全員がSmartHRのプロダクション環境にコミット、プルリクエストを提出するまでになりました。
(初めてプロダクション環境にマージできたUXデザイナーの喜びのコメント)
機能や組織の枠を超えた連携
通常の機能開発軸から距離をおいたカイゼン活動で、デザイナーの自主的な発露から生まれたタスクはもちろんですが、組織間の連携も積極的に遂行しつつあります。
2020年中盤以降からは、メインの開発に乗せにくい、しかしユーザーの体験を損なうところを迅速に改善するために、ユーザーに一番近いカスタマーサポートチームと連携し、タスクのリファインメントを共同でしています。
より参加しやすい仕組みづくりにも力を入れており、プロダクトデザインラボ外からの課題も積極的に取り入れらるよう、Slackのショートカットからフォーム入力するだけで誰でも要件をまとめたチケットを生成できるようにしました。
また最近では、カスタマーサポートのメンバーがこの活動に参加し、コードに直接コミット、リリースまでする事例が生まれ、組織のクロスファンクショナルな取り組みも加速しています。
(Slackへの自動投稿、組織の垣根関係なく要望を出すことができる)
(カスタマーサポートのメンバーにタスクが奪われる図)
プロダクトデザインラボの活動内容とフロー
プロダクトデザインラボで行うイベントは大きく分けると以下のとおり。
・スプリント
・タスクリファインメント
・もくもく会
・スプリント後のふりかえり会
1. スプリント
プロダクトデザインラボは、1ヶ月のスプリント形式で課題解決にあたっています。リファインメント済みのチケットを各デザイナーが受け持ち、デザインはもちろんコードへのコミット、プルリクエストからのマージまでの責任を持ちます。
2. タスクリファインメント
2週間に一度メンバーで集まり、起票されたタスクを眺めて対応を検討します。完了条件をこの中で確定し、ポイントの見積もりも行います。
起票されたタスクは必ず対応するわけではなく、優先順位やプロダクトへ与えるインパクトを考慮し、やる・やらないを判定、その上で対応策を決めます。
3. もくもく会
もくもくしてお互いの尻を叩きあいます。成果が出ずに雑談に消えることもあります。
4. スプリント後のふりかえり会
1ヶ月のスプリント後に、タスクの消化やその活動内容をKPT(GKPT)方式でふりかえります。失敗した点やスプリントを通して感じた課題の共有、そもそもの方針についてもブレや迷いがあれば炙り出し、次回スプリントのTRYとして設定します。
(miroのふりかえりボード)
活動の課題
と...ここまで良いことを書き連ねていますが、活動の中で出ている課題も明記しておきます。中長期的な活動が継続していることが、そもそも凄いことだと思っていますが、一方で活動そのものへのズレや問題も生まれています。
・重めのタスクにとりかかるハードルが上がっている
・細かい改善タスクしか対応できていない
・タスクの対応をすることが目的になってきている感
目的を見失わず、かつ個々のモチベーションを維持するためには、どう活動を改善して取り組んでいくか… 我々が安堵することはありません。
今後について
ユニットや組織の垣根を超え、手段を問わずにデザイン作成からコードへのコミットもラフに行える、このフットワークの軽いカイゼン活動は、中長期的に見た時にプロダクトの品質を上げるものと信じています。
また、つい先日ユーザーリサーチ推進室の活動報告記事がアップされましたが、SmartHR Design Systemやアクセシビリティ対応の取り組みなど...プロデザの活動は多岐に渡ります。
今後もSmartHRのプロダクトの価値を高める活動を続けていきます。闇より這い寄る我々の活動にご期待ください。
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