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椅子の梱包があまりにもPだった日

イケアに行った。
でかい、と思った。
旗が揺れる様子に、国技館みたいだ、とも思った。

目当ての椅子は決まっており、目的地に向かってズンズン歩く。(トイレは最初に行った。)
でかい、コストコみたいだ。
見た目があまりにも倉庫だが、看板が出ていて、人が親切で、レジがある。
みち行く人々がその道の広さからこぞってど真ん中を歩いている。お客様は神様だもんね。
ああ苦手だ。でかいカートが真ん中を走っている。子供も走る。そりゃそうだ。
こんなでかい場所、俺だって走りたいよ。自意識が邪魔してるだけなんだ。
俺と君との間にはただ履修済みの道徳の単位と、自意識の大小しか違いが無いんだ。大人なんてそんなもんなんだよ。いいかい、わかったね?わかったら指ささないでおくれ。結構刺さるんだそれ。心技体に。

椅子を見つけた。
そこにはPが横たわっている。いや、bかもしれない。なんとなく言わんとしていることは伝わるだろうか。
なるほどよく考えられている。2つの梱包を互い違いにすることで省スペースかつ、え〜〜、省スペースな、ん〜、とにかくちょうどよい形になる。

購入するために、自分のなで肩にえいっと担いでレジへ。
あれ、この大きさ、ベルトコンベアに載せていいんだろうか。
ちょっと中途半端な大きさだな。バーコードの場所も変な位置だし。
悩んだ末に巨大なbの字にしてベルトコンベアに載せてしまった。
間違っては、いると思う。
でも仕方ない。あれが一番バーコードの読み取りがしやすかったんだ。
でも店員さん、倒れないか心配そうだったなあ。

お会計〇〇○円です。
カードで。

ピ~
レジから間抜けな音がする。
なんだと思った。間抜けは俺だった。

これは困った。カードが使用できない。しまった、暗証番号をこの前間違えすぎたんだった。でもパスモにチャージはできるんだ。それで止まってないことを確認したはずだったんだ。なんでだろう。カードは使えるんです、信じてください。ちゃんと毎月支払ってるんです。
ふと自分の前の方に気配を感じる。
見ると後ろの家族連れにいた少女が俺の前に来てこちらを睨んでいる。なんだいお嬢ちゃん、後ろにきちんと並んでておくれ。お母さん困ってるよ?俺の前に来て仁王立ちしてもなんにもならないよ。弁慶ごっこかい?最近の子供はハイカラだねえ。俺はもう牛若丸になる元気は無いよ。だってカード使えないんだもん。なんで?

「すいません、ペイペイ使えますか?」

やっとのことで会計を済ませ、家路につく。

今日は天気がいい。イケアの店内は子供運が悪く、多少疲れたものの、青空の下を歩くのは気持ちがいい。
ふと横のビルに写った自分を見る

あまりにも梱包がPである。

それでいてbにも見える。

しまった、これではアイドルマスターの同人誌によく出てくる
「プロデューサーさんっ♪」そのものではないか。
とかなんとか考えて笑ってしまった。俺まだPMだよ。

これは困った。
しかもなで肩のせいかどんどんずり落ちてくる。
トートバッグ以外でこのずり落ちは経験したこと無いな
と思いつつ、Pの笑いが堪えられない。
なんならPの頭の方を肩にひっかけているので、横が見えない。
とんだ欠陥椅子だ。返品してやろうか。
とかなんとかヘラヘラしながら思っていたらギャルにぶつかりそうになってしまった。ごめんな。LOVE。

いろいろあって疲れてしまったので今は珈琲館で休んでいる。
そしてだんだんPはbになり、いつの間にかグッドボタンに見えるようになってしまった。

ねえ、いつも褒めてくれてるみたいで結構好きだよそれ。

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終わり

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