ゴルフは「紳士のスポーツ」なのか

ゴルフは「紳士のスポーツ」だと言われます。

しかしゴルフ場にはマナーが悪い人や、スコアをごまかす人だっています。

果たして本当に「紳士のスポーツ」なのでしょうか。


「紳士」とは「ジェントルマン」の日本語訳ですが、そもそも「ジェントルマン」とはイギリスにおける身分階級のことです。

爵位を持つ貴族や、地主領主のことを指しています。

彼らは土地からの収入があるので、基本的には不労所得者です。

とはいえ単に庶民から収奪して贅沢を極めるのではクーデターを起こされてしまいますから、地域社会に貢献する名士として教養や作法の習得が求められます。

こうした「ジェントルマン」に求められる理想像が、現代の「紳士的な」という意味に変わっていったのでしょう。

これは私の想像ですが、ゴルフの技術を身に付けることも「ジェントルマン」の資質のひとつだったのだと思います。

日本の貴族が蹴鞠や連歌を嗜んでいたようなものでしょうか。


「ジェントルマン」の資質としてゴルフの技術を身に付ければ、次にやることは誰が最も「ジェントルマン」なのか、です。

腕試し、ひいては競技会が開催されるようになりました。

だからゴルフは「ジェントルマン」のスポーツなんです。


しかし中世の封建社会から脱却し、経済活動が盛んになったイギリスでは新興勢力が台頭してきます。

産業革命で富を得た労働者階級です。

彼らも貴族をマネてゴルフをするようになりました。

同じゴルファーとして貴族階級と勝負をしたいと思うのでしょうが、彼らは労働をしているので「プロフェッショナル」です。

「ジェントルマン」は不労所得者ですから「アマチュア」です。

スポーツでお金を稼ぐ人間がプロフェッショナルなのではなく、お金を稼ぐという行為をする人がそもそもプロフェッショナルです。


スポーツにおけるアマチュアイズムはゴルフに限ったことではありませんが、ゴルフは今でも色濃くこの風習が残っており、ルールブックに「プロ規定」はないですが、「アマチュア規定」は掲載されています。

今でもアマチュアはプロの試合に出場することはできますが、プロはアマの試合に出ることはできません。

プロでもアマでも垣根なく競う場がオープン競技であり、史上初めてアマとプロが勝負をしたのが全英オープンの舞台です。

だから全英オープンの正式名称は「The Open Championship」なのです。

「ゴルフ」とも「ブリティッシュ」とも入っていないのは、これが当時他のスポーツを含めても全世界で唯一アマとプロが、つまり庶民と貴族が垣根なくゴルフの腕前を競い合ったことに由来します。


最後は少し話がそれてしまいましたが、ただの労働者階級だったプロゴルファーがどのようにして憧れの職業になったのか。

そんなお話もどこかでしたいと思います。


ゴルフギアに携わる仕事をしていますが、ゴルフの面白さ探しを趣味にしています。どうして多くの人がゴルフにはまっていくのでしょうか。それを研究しています。