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若草のコンダクター 〜山本理仁〜

まだ寒さも残る4月のある日、僕は1人の若き選手に"恋"をした。当時彼はまだ高校2年生だったが、先輩達と一緒に立ったピッチの中央でその「背番号14」は誰よりも輝いていただろう。その選手に僕は一目惚れをしたのだ。

歳下のアイドル

皆さんにとってのアイドルとはどういうものだろうか。ひと握りの人たちを除き、その多くは少なくとも歳上ではないだろうか。しかもまだ自分がティーンエイジャーの時のアイドルなら尚更だ。
ことサッカーに置いてはプロとして本格的に活動を始めるのが早くても18歳だからより顕著になるだろう。自分もそれまでのアイドルはズラタン、中村憲剛、カカ、CR7、などなどなど。皆自分よりいくつも歳が上のプレイヤー達だった。
そんな17歳のころの自分に衝撃を与えたのが当時16歳の少年、山本理仁だった。
その頃のチームには彼より1つ歳上の森田晃樹が絶対的なエースとして、チームの心臓として君臨していたが、まさに山本はもう1つの心臓といったところだった。そんな彼は最上級生としてのプレーを待たずしてトップチームに昇格し、そこでもチームの心臓になった。

中盤の底を天職とする彼の最大の武器はやはり左足のキック精度だ。長短問わず正確なパスを中盤の低い位置から供給できるのは、ボールを握るスタイルを敷く上では必須である。とくにグラウンダーのパスはまるで地面を滑るかのようにスッと味方の足下に収まる。
そんな彼のパスを支えているのは視野の広さ、そして正確なターンとトラップだ。
スラッとした背筋でピッチを俯瞰して、先に見えているのでCBやGKからのボールでも綺麗に前を向き、攻撃の起点を作ることができる。
左利きのテクニカルな選手にありがちな守備の弱さというのもCBでプレイさせられるぐらいにはしっかりできるのも強みの1つだ。
ユース時代から彼を指導する永井監督に言わせれば、「中村俊輔を超える」才能だ。

そんな彼だが、チームでのポジションは安泰とは言いきれない。それは同い年の藤田譲瑠チマの存在だ。たしかにテクニックでは山本に劣るが、機動力により長けているプレイヤーだ。どうしてもアンカーというポジション柄守備範囲は横に広くなるので、彼の能力が重宝されてくる場面は多々あるだろう。彼は車に例えるならまさしくエンジンだ。
それに対してボールを散らし、ゲームをコントロールする山本のその様は例えるならチームを繰るハンドルだろう。

そんな強力なライバルがいるが、いや、いるからこそ僕は彼にとても期待をしている。
そんなライバルとしのぎを削り、より完成された選手になり、そしてあの日惚れ込んだ才能が青い代表のユニを着て、そして緑の心臓としてチームを繰る姿を僕は心待ちにしている。

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