人間を支配するオピオイドとドーパミン

「脳科学は人格を変えられるか?」(文春文庫)という本を読んだので、備忘録ついでに投稿します。

「欲する」物質と、「気持ちよくする」物質

〜砂糖水を与えられたラットの脳内のドーパミンレベルは急上昇する。〜

ラットと同様に人間も、幸福や快感を感じる時、脳内でドーパミンが放出されている。いや、ドーパミンが放出されることで、幸福や快楽を感じていると言った方が正しいかもしれない。生物が「快楽を追求し、恐怖から逃れる」という原則に従って行動を決定しているとするなら、ドーパミンが生物を支配していると言っても過言ではないだろう。

しかし、快楽とは単にドーパミンだけが関わっているものではなく、オピオイドも重要な役割を果たしている。ラットを用いた実験で、「オピオイドを含むニューロンが活性化すると、甘いものはより甘く感じられる。」ことがわかった。オピオイドとは、オピオイド受容体に作用する物質の総称。強力な鎮痛作用を持つため疼痛管理に用いられる一方で、多幸感を生じることから薬物の乱用につながることもある。

さらにその後の実験で、脳内のドーパミンの放出を抑えても、快感自体は変化せず、ドーパミン放出をもたらした事象に対する欲望が減少することがわかった。つまり、生物学的に好ましい経験に対して、オピオイドは「気持ちよく見せる」役割を持ち、ドーパミンはその経験を「欲する」役割を持つということだ。この2つが快感という現象の異なる側面であり、それぞれ別の神経伝達物質が関与している。

まとめ

現在でこそ薬物乱用は違法ですが、人類の歴史を振り返ると、人間と薬物は切っても切れない存在です。しかしそれは、人間、ひいては生物にとって至極当然のことなのかもしれませんね。

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