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何もない田舎町の沼のようなバー

ほとんどの日本人にとっては、ミャンマーは一生訪れることの無い国でしょう。ましてそのミャンマーの最大都市ヤンゴンから飛行機とチャーターした車を乗り継いでいく何もない高原の町カロー (Kalaw)なんて、耳にすることもほとんどないでしょう。今回は、そんな行くことはないかもしれない何もない田舎町の「沼のようなバー」Hi Snacks & Drinks の話。

何もない高原の田舎町とはいえ、その何もない風情と周囲に広がる山々でのトレッキング目当てに、コロナ前には、世界中からそれなりの数の観光客がやってくるちょっとした観光地でもありました。Hi Snacks & Drinks は、そんな旅人の一部や地元の飲んべぇたちには随分知られたバーなんだそうです。

今年4月のこと。コロナの感染拡大によってミャンマーの国際空港は閉鎖され、せっかくの連休とあって大都会ヤンゴンを脱出し、ホテルを経営する友人がいるKalawへ急遽遊びに来たというわけです。どこか飲むところはないかと探して見つけたのが、この「沼のようなバー」でした。実は前日の8時過ぎに訪れたら満席で入れなかったので、その日は再挑戦でした。

連休とあって19時には満席。地元のんべたちとミャンマー人旅行者でパンパン。中には近くの村から飲みに来ている男性グループも。外国人旅行者は私ともう一人の女性の二人だけでしたが、いかにも金持ちといった身なりの若者グループから、薄汚れたジャージ姿の村人たちまでが入り乱れて、時たま声を掛け合いながら、バーが一つの飲み会のように作りあげられていく様は圧巻でした。このような光景にヤンゴンではお目にかかったことがありません。(ミャンマーはコミュニティがかなりきれいに別れていることが多いのです。)

年季の入ったU字型のカウンターの隅っこで一人飲んでいたらすぐにマンダレーからバイクで遊びにきていたカップルに声をかけられ話が弾みます。地元の若い男女が大型バイクに乗って泊まりで観光に行くなんて、5年前では考えられなかった社会の変化が見て取れました。その後もひっきりなしに色んなお客さんが楽しくからんでくれまして、ある男性などは、帰り際にサラッと無言で私の飲み代(3杯分!)を払っていってくれたのでした。

ひたすらカクテルをつくる若いスタッフは、数ヶ月前にヤンゴンの大学を中退して故郷のKalawに帰ってきたばかり。多少の英語が通じる彼や、陽気なマスターの気遣いもあり、外国人の私も含めたギュウギュウのバーの一体感の中で至福の一時を過ごしました。入れ替わり立ち替わりスタッフや他の客たちと尽きない話に興じ、意識の遠のきを感じながら、このままでは帰れなくなるぞ、と意を決して沼から千鳥足で抜け出し、山間の夜道をヨロヨロと歩きホテルへ辿り着いたのでした。

もしもミャンマーのKalawという田舎町に行くことがあれば、ぜひこの「沼のようなバー」Hi Snacks & Drinks に足を運んで見てくださいね。

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