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クッキングパパなしでは生きていけない!〜荒岩家に夢中〜

もうおとといのことか。コロコロコミックについてを書き上げて着手したのがクッキングパパ。しかも荒岩まことについてだ。間違いなく世界中でオレひとりだろう。荒岩まことについて考え続けていたのは。

クッキングパパのキャラクターの優秀さについてほぼ誰も語ってこなかったのはヤバい事実だと思うんですよね。この作品のスケールのデカさ、おそらく肩を並べるのは「サザエさん」であり「ドラえもん」であり「こち亀」だ。つまり国民的マンガなんですよ。気づいてないだけ。少なくとも「うむ。うまいゾ」のキメ台詞は刷り込まれているはずだ。昭和40〜50年代生まれであれば。

思い出して欲しい。荒岩の部下、田中の独身時代の荒れっぷり。定年退職後にいきなり蕎麦屋に転身する大平さん(特技はテニス)、虹子さんのパパはコーヒー好き、最近影が薄いぜなみつぐの妹、荒岩の妹夫妻も最近エピソード少ないよなァ、、ちなみにライター業やってて旦那はカメラマン。種子島ちゃんと工藤くんは職場結婚で子供は双子、そういや当初偏食だった梅田くんは早々に結婚、自分で家庭菜園やってんだよね、、とまあどのキャラもそれなりにエピソードを持っている。

この手のほのぼのホームコメディ的な作品って闇を描かないじゃないですか。ところが「クッキングパパ」は平気でやっちゃうんです。そして絶妙な深みを物語に与えている。

たとえば上田まもるですよ。物語に登場してきたときは予備校生でなんの取り柄もない、ただブータレてる少年が料理に目覚め、居酒屋で修行して今やどんぶり専門の屋台のオーナーだ。人生に挫折して夢も希望もない状況もさらりと描く。

魚屋のにいちゃんだってバンドやりながら実家を継いでいる。その葛藤もちゃんと描いた。悩みなさそうな梅田夫妻も実は子供がいないことを時々軽く思い悩むサマが描かれている。江口の学生時代の友人は働きながらバンド活動を続けてメジャーデビューを果たした。江口はそんな彼を応援しながらも「オレ、なにやってんだろ、、」と落ち込む。あ、江口のヘヴィネスはなかなかいいんですよ。元パチプロで現在新聞社勤務のすーちゃんとうまくいってる中、「このままの自分ですーちゃんをしあわせにできるのか」と自己葛藤のダークサイドに取り込まれて無断欠勤→失踪ですから!闇ですよ。

グルメ漫画なんだから別に踏み込んで描かなくていいわけです。ところが「クッキングパパ」はソレをあえてやるんです。「うむ。ウマイゾ!」だけで通用しないことが人生だってことをわかってるんですよ、作者は。

ライバル作品「美味しんぼ」も当初はそんな雰囲気はあった。初期の山岡士郎を思い出して欲しい。うらぶれてヨレヨレのスーツに前夜の酒が確実に残ってるだろう的不健康さと無精ひげ。実父との確執、隠された過去とハードボイルドな作品だったはずが、いつのまにやら絵柄も洗練され栗田ゆう子が髪型変わったあたりから明らかに物語のコクが薄まった。それでも質の良いかっちりした物語は嫌いじゃなかった。人情話と割り切って読めばいいわけだし。だがマンネリ化と長期化による金属疲労は究極vs至高の対決シリーズの失速を生み出し、山岡と栗田さんの結婚、出産、海原雄山との和解と人情話らしいハッピーな着地となったわけで。最初のうらぶれた山岡士郎はいったいなんだったんだとボクは今でも思っている。

結局ボクが思うに「美味しんぼ」は人情話であり、現実にはありそうで「ない」という意味でのファンタジーだったんだと。対する「クッキングパパ」は絵柄こそほのぼのとしてるが人生の苦味から逃げない描写力により圧倒的リアリティありきの作品だと思うんです。まあ荒岩が勤める金丸産業のブラック企業から遠くかけ離れたアットホームさは実際なかなかないと思いますがね。でも地方企業とかああゆう会社、ありそうな気しませんか?博多っていう街を拠点にしてるからあったかい雰囲気の会社なんだろうなァとか思い込んでるだけかもだけど。

アットホームさという意味では「美味しんぼ」の東西新聞社文化部も負けてはいない。社員が持ち寄る貧乏グルメシリーズは好きなんだよな。もっとああゆうエピソード増やせばよかったのに。教科書チックな知識先行型のエピソードが続くと読んでるほうも疲れてしまうわけです。実際初期と後期の1ページあたりの台詞の量、かなり違う。特に日本全県味巡りシリーズが顕著。嫌いじゃないんだけどね。結局主役は料理でありウンチクなのかなと終盤は特に思ってしまったわけ。

「クッキングパパ」ってあくまで人間ありきなんですよ。人間があって料理がある。生きていくためひとはモノを食べる。生きていく中でさまざまなことが巻き起こる。受け止めるのも逃げるのもそのひと次第。そんな当たり前の業を「クッキングパパ」は真っ正面から描いている。あくまで主役は人間なんですよね。荒岩一家であり田中と夢子、梅田夫妻、金丸産業の面々、、。毎回レシピは掲載されてるけど主役は荒岩と仲間たち。うえやまとちの登場人物への暖かい目線がそれぞれの人生を味わい深くボクらに届けてくれる。

きっとボクは「クッキングパパ」が続くかぎり単行本を買い続けるだろう。できることなら金丸産業の荒岩の部署で働きたいものだ。毎晩田中とエグチン、みつぐの3バカと中洲で飲み明かしたい。シメはもちろん屋台でラーメン。そのまま田中の家に泊まって朝ごはんを二日酔いのアタマで食べたい。メニューは夢子さんが作る味噌汁でグー。

なんか突発的に「クッキングパパ」について一方的な愛情を炸裂させてしまったけど誤解のないように書いときます。ボクは「クッキングパパ」も「美味しんぼ」も両方全巻揃えてるしどっちも好きなんですよ。ただ「クッキングパパ」はあまりに過少評価されてる気がしてるので爆発するボクのアムールを2日連続でテキストにしてみただけのこと。

とりあえず「クッキングパパ」をナメちゃいけない。マンガ喫茶で「はじめの一歩」を最初から読み直す(やりがち)のも悪くないけどちゃんと読んだことないひとは全巻読破オススメします。荒岩なしでは生きていけないカラダになるよ。間違いなく。


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