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もし「がんばれ元気」の続編があったら、、なんて考えるのも恐ろしい2021年の夏。

真夜中。終電かなんかで帰ってきたとする。
ふとした瞬間、「ギャラクティカ・マグナム!」とか叫んでる自分に気づくことはないだろうか。
もしくは未遂。急に冷静になり自分を恥じる昭和40年生まれの元少年ジャンプ読者たち。
今思えばあの時代はほんとにほんとに平和だった。

深夜のコンビニ。ボクの住むマンションの真ん前のでかい駐車場つきのファミリー・マート。よなよなノーマスクのキッズが集うようになってしまった。真夜中の扉に足をかけてこの街のノイズにプシュッと乾杯しているノーマスク・キッズ。ファミリーマートのおばちゃんに注意されようと「大丈夫。ここじゃ呑まないから」と言ってるそばからプシュッである。本当の真実がつかめるまでCarry Onってことなのか。そりゃあ心で数々のフィニッシュ・ブローが炸裂しても仕方がない。

たまに本屋に行くと求めている本がないことも増えた。発売日からわずか2日で品切れの都心大型店。きっと部数も僅少なんだろう。だけどさあ、1冊ぐらい基本在庫置いとけよと。またボクの心はざわめく。「うちじゃ最初から注文しないよね。丸善さんとかならあるんじゃないの」レジで在庫確認したら普通にこんなことを言われるのも増えた。「どうします?数日かかるけど取り寄せる?」ボクは精一杯の笑みを浮かべて断る。もちろん心でアッパーストレートを繰り出しながらね。
最近妙に柏木由紀が目につく。先週号のヤンジャンのグラビア、FLASHも同じくゆきりんがグラビアと表紙を飾っている。ボクは思う。この瞬間がすべてと。そして心で繰り出すブーメラン・テリオス。

とにかくNOW。フィーリングとしてはアレだ。デンプシーロールをキメたい日々が続いている。
もしくはアッパーストレート。
ブーメランフックでもいいな。ブーメランスクエア、テリオスじゃないんですよ。ましてウイニング・ザ・レインボーではない。わかるかな、このさじ加減。

前者は「はじめの一歩」の主人公である幕の内一歩の必殺技、後者は「がんばれ元気」の堀口元気、幼稚園児の頃からの必殺パンチ。世界チャンプ関拳児を完璧にマットに沈めた破壊力を持つわけで、泣きながら放った最後のアッパーストレート炸裂のシーンは思い出しただけでもじんとくる。
ブーメランと銘打たれた必殺パンチシリーズは「リングにかけろ」の高嶺竜児のフィニッシュブロー。
ブーメランフックのリアリティったらないよ。実際打てそうっていうかコークスクリューパンチの原理を劇中で説明しているしさ。スクエアはブーメランフックの進化形なんですがテリオスとかウイニング〜あたりになると原理もクソもない、ただ誌面で描かれる迫力にボクらはひれ伏すしかなかったわけで。ちなみにブーメランフックと同じ原理なのがアメリカjr代表チームのブラック・シャフトによるブラックスクリュー。擬音はギュラアアアンだ。アアアとつながる感じがイイ。なんか痛そうだし。

ブーメランフックとスクエアに関しては当時の小学生バカ男子は真似しますよね。問題はテリオス。小学校時代、ボクに少年ジャンプの数々の名作を教えてくれた東海林くんも困ってた。原作中でほぼノー説明で繰り出されたこのスーパーブロー。たとえば竜児と同じ全日本jrの斬り込み隊長、石松のハリケーン・ボルトは説明がつく。だがスパイラルタイフーンとなると現実性は薄れてしまうわけですね。ブーメラン・テリオス。うん、なんかネーミングの破壊力がすげえ。ギャラクティカ・マグナムとファントム。そら宇宙も鳴くよ。なんだかわかんないけど納得させるものがあった。これぞマンガよ。

ちなみに小学生の頃、ボクに数々のジャンプ名作マンガを刷り込んでくれた東海林くんは本気で煮詰まっていた。「ブーメラン・フックは理論的にわかるべ。スクエアもヒットする瞬間ねじり込んでいくパンチなんだから練習すれば可能なんだべな(無理)。河合武士のジェット・アッパーもわかる。志那虎のローリング・サンダーもスペシャル・ローリングサンダーも繰り出すパンチの速さ次第だっぺよ。でもよ、ハリケーン・ボルトもスパイラルタイフーンもあんなに空中に長時間滞在できねえべや。こらまいったべ」(秋田弁イントネーション)と日々お年玉で購入したパワーアンクルとパワーリストで日常生活を営んでるほど「リンかけ」に陶酔していた東海林くんはボクに悩みを吐露した。ああ、バカ男子ここにあり。


そんな全国のバカ男子を魅了し続けた「リンかけ」の続編ってのがある。ボクらは「リングにかけろ2」をどう評価すればいいのか。リアルタイム世代なら誰もがそう思っているはずだ。竜児のライバルにして元全日本jrチームメイト、剣崎順の息子にして竜児の姉の遺児麟童を主人公に、育ての親を香取石松にもってきたのはベリーグッド。ボクシングをやるために後見人の許可を得るべきという石松や志那虎が指示するのもいい。ヘヴィドリンカーと化してしまった河合武士もよかった。だが途中かつてジュニアボクシングシーンを席巻した世界jr世代の後継者たちが続々出てくることで物語の行方が不透明になり、圧倒的に主人公力が欠けた展開になっていく。高嶺竜児や剣崎のようなカリスマ力に欠けるわけです。石松が死んでしまうところで麟童の育成担当は志那虎に本格的にバトンタッチ。カイザーナックルの謎など、「ファーストりんかけ」では語られることがなかったエピソードが判明するという意味では読んだ方がいい。まあ麟童の双子の弟が竜児そっくりで大村のタコおやじのジムで育てられたとか最後の最後で繰り出すオリジン世代泣かせのトラップも心地よいので無視するのはもったいないんだな、この「リングにかけろ2」は。思うにスピード感の差なんですよね。やはり「リンかけ」は週刊連載のマンガだ。これが隔週とか月2回とか途中休んでまた再開あんてペースになると読んでるほうもなかなか巻き込まれにくいのだ。どっか他人事になってしまうんですよ。ああ、パワーアンクルつけて天使の羽をゲットしなきゃって気にならないもんね。

でもどう考えても「ファーストりんかけ」にはかなわない。なので「がんばれ元気」とかスピンアウトというか続編出てきたらショックだろうな。堀口元気の息子と関拳児の死闘とか考えただけでも恐ろしい。息子は芦川先生と元気の間に生まれた子で芦川先生は若くして病死。世界チャンプになり早々と引退、祖父母の田沼財閥の後継となった元気はビジネスに没頭する余り息子との距離感に悩む日々。元気の親友、岡村は東大卒後、一流商社に入社するもリストラにあい、故郷に帰ってきた。わずかな退職金でジムを開くことを決意。そこにやってきたのが元気の息子だった。「とうちゃんを超えたいんだ」息子はそう岡村に言うと毎日ジムに通い自主練を始めるのだった。そしてかつての元気のライバルたち、盲目のトレーナー火山、今やラーメンチェーン「チャンピオン」のオーナー、皆川のぼる(ライバルは日高屋)は元気の息子の後援会を設立、万全の体制でボクシングの天才の息子をバックアップしようと奔走する。だが、肝心の堀口元気は息子がボクシングをやるのに反対していた。って、なんだこの既視感しかないスピンアウト・ストーリーは。まず「父ちゃんを超えたい」と思う息子の背景が具体的ではない。実母が早くして病死の原因が元気にある、とか作り込んでいかないと薄っぺらく感じてしまうじゃないか。とボク作成の妄想ストーリーに自分でツッコミを入れたくなる不出来さなんですけど名作であればあるほど続編やスピンアウトものってハードルがあがるのは仕方がないんですよね。関拳児の子供が娘で元気の息子と恋仲におちるってのも悪くない。というか元気の妻は芦川先生でいいのかとか。石田ともこの立場はどうするんだとか考えようはあるわけで。いや、そもそもありえない続編の内容を妄想だけで書き散らしてる今のオレこそアッパーストレートで吹っ飛ばされるべきなのかもしれない。

近頃、荒唐無稽を地でいくマンガが減ってしまったなと思う。なんだかわかんないけど巻き込まれ事故みたく気がつきゃ読んでる自分も物語の渦中ど真ん中。巻き起こるすべてが他人事じゃないあの感じ。いつから味わえなくなったんだろう。懇切丁寧な設定、展開も悪くないしアリなんだけどたまには強引にぐいっと荒唐無稽な世界にどっぷりハマりこんでみたいよなァ。

とりあえず「風魔の小次郎」でも今夜は読んでみようかな。アハ(ここだけ原秀則風に)。

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