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マンガがマンガであるために〜真造圭伍「ひらやすみ」が最高すぎる件について。


なにをやってもダメなときはある。 

どうもツキがない。この3日ほどピントがズレてる。

ネトフリもポップな韓流ドラマ観るはずが「ターニングポイント」なる9.11ドキュメンタリーとか見始めてブルーにこんがらがってしまったり。こりゃいかんと思いながらの七転八倒。どうもいかん。

そんなときボクは「クッキングパパ」を読む。
主人公荒岩の部下、田中はじめ。その後輩の江口、通称エグッチ。そして荒岩の息子、まことの幼馴染であるみつぐも加え「三バカトリオ」の行動に癒され眠りにつく日々。ここ1週間はそんなかんじですね。


そういえばなぜかこのnoteでのクッキングパパに関する投稿のアクセスが増えている。この1ヶ月でぐいぐい伸びている。なんで?なんで?

気がつくと現時点で総合アクセス数だと3位まできた。
2位の「きまぐれオレンジロードに捧ぐ」に迫る勢い。

まあたしかにボクは柳沢きみお研究をライフワークにしながらもクッキングパパもウォッチャーおよび読者として30年のキャリアを持っている。
長年読み続けていると様々な発見があり面白い。
サラリーマンで玄人以上の料理の腕を持つ主人公、荒岩一味がどうしてプロの道に進まなかったのか。
そして息子の荒岩まことは沖縄の大学を卒業後、なぜか大阪のイベント企画会社に勤務し、ある日京都のレストランへ幼馴染のさなえちゃんとデート。そこで食事したことで運命のルーレットは急展開。さっさと会社を辞めてプロの料理人を志す、なんてドラマもあるし。
そんなわけで毎晩つい読みふけってしまったんだよなァ、クッキングパパ。

おそらくクッキングパパが連載終わってしまったらモーニングを読むことはないだろう。島耕作の老後をチェックするよりボクは荒岩一家とその仲間たちの今後の人生が気になってしまう。そんなやつは世界中でどれぐらいいるのだろうか。コロナが落ち着いたらクッキングパパについて夜通し語り合う会とか開催したいもんだ。ダメですかね。

さて先日のことだ。

ボクは真造圭伍の新作「ひらやすみ」をようやく購入した。都内某大型書店ではラスト1冊だった。
最近こういうことが多いんだよ。たらちねジョンの「海が走るエンドロール」は初版タイミングでは買えず
重版出来!by松田奈緒子でようやく買えた。あぶない、あぶない。

いよいよ電子主流ってことなんでしょうな。24時間いつでもダウンロード可能。スマホじゃ読みづらくても少々大きめのタブレットなら余裕だし。むしろ単行本で読むよかアリな作品も多い。個人的には「カイジ」のスピンオフシリーズは全部タブレット派。何気に「クッキングパパ」もボクは138巻から全部タブレットだ。そこまでは紙で全部揃えている。

あのね、グルメ漫画は親和性あるんですよ。あの土山しげるの一連の作品も電子でOK、ハートにOKはファントムギフト(名曲)。でも「孤独のグルメ」はアレだな。やっぱ紙で読んだ方が美味しい。

真造圭伍は「森山中教習所」の頃から大ファンなのでほぼすべて読んでいる。独特のビートで綴られるストーリーとあの絵柄が絶妙な味わいを醸し出し、紙で読むとなお格別である。「みどりの星」も「トーキョーエイリアンブラザーズ」も大好き。「ぼくらのフンカ祭」もいいし、「台風の日」に収録されている短編はどれも最高。そしてすでに完結したけどボクの中では異色作だよなァと思ったのが「ノラと雑草」だ。

家庭崩壊ネグレクトに登校拒否の女の子と中年男の切ない再生物語。初めて1巻をよんだときは「ちょっと待ってよ」と思った。これまでのオフビートな青春はどこにもなく、「みどりの星」や「トーキョーエイリアンブラザーズ」のようなSF(少し不思議な)風味は皆無。意外性に横っ面をぶん殴られた。

ヘヴィな内容なんだけど女の子も中年男も自分の置かれた境遇への諦めのダークサイドに落ちていたのに出会い、交流することで互いに明日への希望を徐々に得ていく。だらだらと続くことなくサクッと終わる感じもいい。それまでのホームタウンともいえる小学館から講談社で初の作品ということで作風をがらっと変えてきたことは意外だったけど。そんな新境地のあとの「ひらやすみ」。オフビートな作風は戻ってきつつもボクはやはり真造ワールドは紙で1ページづつしみじみ読んでこそだなと思った。圧倒的にマンガ。マンガ以外の何物でもない作品。好きだなァ、やっぱし。

ちなみにこの数ヶ月でぐっときたマンガは以下。

「東京ヒゴロ」 松本大洋
「海が走るエンドロール」たらちねジョン
「ゆりあ先生の赤い糸」(最新刊)入江喜和
「さよならキャンドル」清野とおる
「初恋、ざらり」 ざくざくろ
「1%の恋」 榎屋克優
「ルックバック」 藤本タツキ

何気に読む量がまたもや増えつつある。「東京ヒゴロ」と「海が走る〜」と「1%の恋」以外はオール電子。ボクの中で電子か紙かってやつはどうやらうまく共存しているみたいだ。

本音はずらっと並べていたい。みっちり詰まった本棚は最高。だけどキリがないのも事実だし
どこにいようともライブラリーからさっと読みたい一冊を取り出せるkindleは便利だし嫌いじゃない。
真夜中だろうと朝方だろうと購入できるし。たとえばアップルミュージックやスポティファイ感覚でさっとアクセスできるようになったら便利なんだろうなァ。電子読み放題は今でもいろいろあるし最初の3冊のみ無料、期間限定で無料とかいろいろある。だけど本気のサブスク感覚でってことになるとまだそこまでは至ってないし今後もどうなるのかわからない。仮にそうなったとしてもレコードのように紙は残っていくでしょうね。これは間違いない。便利で手軽でってことだけで片付けられる問題ではないからだ。てゆうかそうじゃなきゃ意味がないだろうよ。

縦スクロールのマンガも、今後は韓国では当たり前だってことのように日本でも増殖していくだろう。読みやすさって意味でグルメとかもろもろ職業系ジャンルも消えることなく、むしろ定着するだろうし下手すりゃ今新書でよくでている自己啓発本も10年後には全部マンガ、てこともありえない話じゃないしボクも別にそういう現実を憂うつもりもない。自分では買わないだけだ。自己啓発マンガとかさあ、いらねえもんな。結果的に物語になにがしか啓発されるんなら別ですけど。

あとね、コミックの古本。コレが前に比べて実に手に入れづらくなりました。ネットで買えばいいじゃんって言われりゃそれまでの話ですが出来ればリアル古本屋で物色しながら買いたいじゃないですか。どうも品揃え的に90年代〜2000年代初頭ものが品薄な気がする。てゆうか、ない。ほんの数年前ならざくざくあるようなものがない。まったくない。

来月締め切りの某誌の原稿を書くため、とある大ヒットマンガを資料として手元に必要でここ数週間探し回っているが、ほぼ皆無。渋谷、中野のまんだらけにはないし都内大型店舗系のブックオフにもない。おおおおおである。近所のブックオフにはあったけど14巻からしかないし最終巻は欠けている。てそれじゃまったく意味がないよ!

やはり大瀧詠一さんが残した「買えるときに買っておけ」は至高の名言だよなァ。
あんとき買っときゃよかったって後悔ほど切ないものはない。好きなものは無理をしてでも買え、だよ。そんな後悔も含めての醍醐味なんですけどね。安易に買えない「紙」の本ってやつは。

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