詩 みっちゃん(2006年)

そういえばみっちゃんは
よく化学の授業中に消しゴムを食べるあたしの事を
注意してくれたのだと彼女は思う

なんて素敵をするんだと
男の子たちは
何でもかんでも感心するので
棚の上に置いてある
ちいさな縫いぐるみを見るように
かわいく思ったり
畳の上を這いずり回る下心を見つけ出して
毛虫のように
踏み潰してやりたく思ったりした
そのあと
真っ赤に真っ赤にすり減らされて
黒とか白が せめぎ合うのをやめたあと
 
何も知らない表面が見えたので
これはしまったことをしたと思い
そのままごめんねと呟き
両手でていねいに折り畳んで
抽斗の中に入れておいた
あとで
乾燥剤を買いに行かなければいけない

あたしはまだまだどこでも行けると
彼女は思う
彼女が思うに
彼女のまわりの人たちは

あらゆる台詞を吐き出しながら すり減らされて
細工を消して
見ている自分の反射になって 
あたしはそのまま盲になった
波打ち際の 盲になって 

面接帰りに池袋にある水族館に立ち寄ると
メキシコの洞窟に生息している
目玉を持たない朱色の魚に
変身をして

すいすい泳ぐと気持ちがよかった

(2006年)

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