詩 知らない言葉で(2005年)

透明を
予感している卵の
半透明の白いから
一つの亀裂
自己という事故
良いきみだって
何かが喋っている

古ることを知らない雨の中で
一つを忘れた
目己たちは踊る
繰り返されていく近親相姦
白子の赤い
眼球絨毯の上で
連続性の畸形字が時を指さし
視えないものを数えている

淡い匂いのやわらかい肌理に
血の涙を流す海月たちが沈んでいくのを
ずっと高みにある向こう側の窓に手をかけたまま
きみは見ていた
消えたものが棲む子宮を孕ませたまま
濁ったものを澄まわせた耳
ほとんど蒸留されたまま
宙吊りになったまま
永遠に形にならない弧を描きながら

あらゆる温度が壊れた世界で
あらゆる湿度が遅れた世界で
蛋白質の黒い曲線と
輝きだけで響きあっていた
きみを見ていた
あまりにも緩やかな瞬き

ぼくたちみんなの枷である風

(2005年)

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