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動詞に憑かれたひと④:夏目漱石

漱石と言えば、「坊ちゃん」「吾輩は猫である」「こころ」などの作品が有名な作家。これはイギリス留学中、日記に書き残していた言葉だ。考える、語る、行なうという動詞の繰り返し文から彼自身の殺気に満ちた心象風景がうかがえる。そう、イギリス留学は彼にとってあまりよい思い出になっていない。それは作品や随筆から垣間見える。留学中の自分自身を省みて、この3つの動詞に決して満足できなかったのだろう。そんな息苦しさをかなぐり捨てる決意。さらに動詞の前の副詞も印象的だ。まるで韻を踏むかのよう。真面目に、誠実に、摯実(しじつ)に。これでもか!これでもか!ぶつかっていく。逃げられない現実に立ち向かう勇気。まさに動詞に憑かれた漱石。この文章にはこんな続きがある。汝(なんじ)の現今にまく種はやがて汝の収むべき未来となって現れるべし。

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