見出し画像

曲面がないので測れません【平面説の路地裏から】

今のところ調べた限りでは、測量の世界では、「狭い範囲」ならば、地面を平面として扱い、平面として測量する。そうして建物などが出来る。それ以上の「広い範囲」ならば、地球球体説に基づいて地面の曲率を考慮して測量することになっている。これを「測地測量」と呼ぶが、この測量はあくまでも平面での測量結果に対して、曲率を組み入れて、数値を修正したものになるらしい。つまり誰も地面のカーブを検出して測っていない。ある資料では、その「狭い範囲」というのは半径10kmほどだというのも見たが、これは今ひとつはっきりしていなさそうにも見える。現場ごとに決めるのかもしれない。

明石海峡大橋では地球の丸さが考慮されて建設されている、とよく聞く。2本ある柱の根本と頂上では93mmの違いがあるというが、これは理論値である。簡単に言えば嘘である。実測値が公開されているが、ここでは93mmのズレは見当たらないからだ。

明石海峡大橋の実測値

明石海峡大橋は建設中に阪神大震災の地震によってズレたので、完成後の測量は、地震によってズレた後のものである。この「地球の丸みによる93mmの違い」は、測量についてのわりとしっかりした教則本にも書かれてあった。めちゃくちゃにいいかげんである。とても考えられないことだが、それは今更言うことでもないと言えばない。

瀬戸大橋や青函トンネルに関しても、同じようなことをよく聞く。それは地球の丸みを考慮されているのだと。ここでピンとくる。明石海峡大橋にしろそれらにしろ、いずれも海をまたいだ建設物である。おそらく建設のための事前の測量の段階で、改めて水準点を設けたがゆえに、そのように言われているだけではないのか?どういうことか説明しよう。

青函トンネルの建設では、北海道側と青森側では測量に使用する基準が違っているために既存の水準点を使えない、という事態になったそうだ。そこで現場である津軽海峡周辺そのものをもう一度測量しなおし、北海道側と青森側で共通の水準点を設けたらしい。そしてそこから改めてトンネル建設のための測量をしたと思うのだが、このときに地球球体説における地面の曲率を組み入れて結果を修正したものを使用した、ということではないのか?それを「地球の丸みを考慮した」というふうにざっくりと語られているに過ぎないのではないか?とまれ、これはあくまで推測ではある。明石海峡大橋や瀬戸大橋に関しては、改めて測地測量をしたかどうかも知らない。なんにせよまた資料に当たりたいと思う。

しかしながら、地球球体説に基づく地面の曲面を測量する方法というのは、少なくとも一般の教則本では見当たれない。これは不思議といえば不思議だし、当然といえば当然である。ひとつには実際にはそんな曲面がないからでもあるし、ひとつには平面としての測量で充分に実用に適うのでそんなことをする必要が無いからでもある。それでももちろん国家資格の存在するような測量の世界でも、地面が丸いことは前提として語られていて、近年では衛星を使った測量もある。でも誰もそれをその手で測れてはいない。ただ神話が息をしているのが聴こえてくるだけである。不格好に編まれてこんがらがった暗い路地の、どこか奥の方から。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?