リーダー修行記69(トライアルがスリルとスペクタクルに満ちていた件シーズン3⑤)
(前回のつづき)
4種目目: スローフォックストロット
これまで数々の失敗を繰り返してきた私ですが、今回ばかりは失敗の仕方がひどすぎて、いまだに動画が観れないスロー。
5種目とも踊り出す場所を決めていたのですが、背番号が遅い私の名前が呼ばれたときには、予定の場所は満席でした。3組しかいないのになんだこの既視感は。
他の種目は、ピクチャーポーズを客席側でやりたいとか、いろいろ理由があって踊り出しを決めていたのですが、スローのルーティンにはそれがなく、逆サイドから始めても全然問題ありませんでした。私、予行演習なしでどこからでも踊り出せる人なのです。
でも、スローは前の種目のヴィニーズワルツから1ヒートしか間隔が空いておらず、1分20秒、ただただPHを回復させるので精一杯で、ぶっちゃけ次の種目のことを何も考えていませんでした。
名前を呼ばれたから出た、的な。
なので、フロアの状況もまったく確認しておらず、フロアに入ったら予定の場所に人がいてびっくりして一瞬焦りました。なにしろ私が最後に呼ばれたので、フロアのカップルも、司会の人も、お客さんも、みんな私たちのことを待っている、という状況だったのです。
これ、内側に行けばいい?
外側に行けばいい?
それとも逆サイドに……
あわあわしている私に、パートナー氏が冷静沈着、もはや冷たい以外に表現のひようのない声で、こう言いました。
「どうする?」
念のために補足しますが、私が先生に聞いたんじゃないんです。先生が私に聞いたんです。
「どうする?」
どうする…
どうする…?
どうする!?
今!
今ここで!
この状況で!
それを、私に聞くの!?
教室じゃないのに、レッスン中じゃないのに、本番のフロアなのに、
助けてくれる気ゼロなの!?
鬼だ…。
私が手を繋いでいるのは、ハイドを通り越して鬼に違いない。
そう確信した瞬間、高速回転していた頭がフリーズ。ついでに身体もフリーズ。
結局、そこにいた先生が場所を譲ってくださいました。
さ、最悪だ。
プロの先生はともかく、踊り出す準備をしていた生徒さんごと移動させるとは…。
スローは練習から一番安定していたので、踊り自体はまあまあでした。練習した2小節のハイホバー(両足ヒールアップで私のパートナーを支えるのはだいぶきつい)で他カップルと接触して1小節しかできなかったことが残念だったくらいで、他はミスなく帰還できたと思います。
というか、踊り出す前に致命傷を負っていたので、踊りがどうとかあんまり覚えてないです。
戻ってからも、なぜあの瞬間に、ガラ空きの逆サイドに行く決断ができなかったのかと落ち込んで、
「さっきのはどうするのが正解だっんですかね?」
とフロアサイドで先生に聞いたら、
「難しい問題だねえ(以上)」
と冷ややかに言われました。
鬼だ。
こいつは鬼に違いない。
(つづく)
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