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リーダー修行記⑪(地図が読めない女のフロアクラフトが危険すぎる件について)

私は地図が読めない女である。

第一段階として、地図を回して進行方向に向けないと、まず現在地が理解できない。
スマホの地図アプリが出てきたときは救世主かと思ったけれど、初期のアプリは、スマホを回転させると地図も一緒に回転する仕様だったので、役立たずめ!とスマホを投げ捨てたくなったことがたびたびあった。私にとっては、奇跡的に進行方向とスマホの向きが一致したときだけ使える、「存在が謎アプリ」であった。スマホがなかった時代にどうやって生きていたかはもはや覚えていない。

ときは現代。地図アプリは回転をしなくなったが、私の脳は、二次元の地図を三次元の現実に変換することができない。スマホ画面と現実世界が視覚的にまったく一致しないことに気づいたとき、アプリが回転しようがしまいが私は道に迷う、という事実に愕然とした。
ナビが親切にも道案内をしてくれるようになってようやく迷う確率は減ったわけだが、スマホだけを見て歩いているのでまったく道を覚えない。結果、同じ場所に何度行ってもナビに頼っている今日この頃である。ちなみに、アプリ様に音声付きで親切に道案内をされても迷うときは迷う。重症である。

方向感覚がゼロなので、一度入った建物から出ると自分がどっちから来たかわからないし、そもそも同じ出口から出られることの方が稀で、電車を逆方向に乗り間違えることは日常茶飯事である。先日は千葉のホテルデモに向かったら中野に着いていたし、代々木方面の教室に向かったら津田沼に着いていた。

そんな私がスタンダードリーダーをサークルで始めて10ヶ月、個人レッスンを受け始めて4ヶ月。なんとなくそれなりにやってはいるものの、方向感覚に関しては先生の言うことがいまいち理解できないし、どうも周囲の男性陣と空間認識の仕方が違うような気がしてならない。

とぼんやり思っていたら、先日のレッスンで先生に言われました。

けやきさんは、いちかばちかで方向を決めてる感じがするんだよね。

ばれてた(笑)

男性リーダー友に、二次元のフロアクラフト地図を三次元に変換できない悩みを相談したら、「俺は天井からフロア全体を見て矢印を書いている感じ」とか「たとえばスローは台形を描いているイメージ」とかいう返事が返ってきて、彼らは押しなべて「だから俺も二次元の認識しかないよ」と言うのだが、私からすると、それは「二次元ではない」。彼らは立派に三次元の世界線を生きている。

この件について、天才的な空間把握能力を有する夫(ダンスはしない)を激詰めしたら、自分に「世界」がどう見えているかは可視化できず、他人と比較のしようがないからことばにできない、俺にはあなたが地図を読めないことが理解できない、脳科学の研究室にでも行け、と言われました。

そりゃもっともな話だ。

私から見ると、夫は異次元の空間把握能力を持っている。
いまだにナビではなく道路地図を愛用していて、あの分厚い本をパラパラめくって「あ~なるほどね」と呟き、おもむろに車を発進させ、なんなく目的地に着いてしまう。もちろん地図は回転させない。スマホアプリが回転しただけで現在地を見失う私には意味がわからない。

先日、信号停車中に、向かいの横断歩道で右折車同士の追突事故が起こった。その間、2、3秒。

私の認識:なんか車が衝突した。以上。
夫の認識:1台の車が右折しようとした→横断歩道を渡りたい自転車が走り出す素振りを見せた→それを見た運転手が躊躇して止まった→後続車が止まりきれずに衝突した

運転の経験値もあるだろうが、別に事故車を注視していたわけでもないのに、何故あの一瞬でそこまで認知できるのか。そもそもなんでそんなにいろんなものが見えているんだ。私は信号がいつ青になるかしか見えてなかったぞ。なんなんだこいつは。

夫「前の車が進む気配を出しておいて止まったのが悪い。あそこは躊躇せず行ききるべき。そうすれば自転車の方が止まる。後続車にしてみたらそりゃないよって感じだな」
私「あなたが後続車だったらやっぱりぶつかる?」
夫「俺なら自転車の動きを見た瞬間に、前の車が止まる可能性を考えて車間距離をあける」

・・・もうあんたダンスやれよ

夫がダンスフロアに立ったら、そこに存在するすべての状況を一瞬で把握するんだろう。どれだけ回転しても進むべき方向を見失ったりしないんだろう。
思えばクルーズ船のダンス教室に無理やり連れて行ったとき、夫は初めてやるボックスステップ(それも組んでやるやつ)の回転量と方向をイッパツで理解していた。リズムは完全に外していたが。

方や、踏歴4年にしていまだにボックスの右回転と左回転をたびたび間違える私が見ている世界は、どこまでいっても平面図である。奥行きがなく、距離感がない。夫が極めて立体的に世界を認識しているとすれば、私は真逆である。たとえるなら、風景写真のように世界を認識している。

夫はおそらく、自分が立体世界のどこにいて、どの方向に進めば自分自身がどの位置にどういう向きで着地するか、そのとき見える世界がどう動くかを正確に把握する「眼」を持っている。一方の私は、平面世界の中に自分だけが立体構造物として存在していて、自分が動けば見える世界も変わる、ということをまるで想像できない。自分以外は平面なので、距離感という概念もあやふやである。

わかりやすいたとえで言うと。
①    行きたい方向は地図アプリの全体像を見てなんとなく把握している
②    が、実際はナビの誘導に沿って進んでいる(スマホ画面を向けた先に道路が延びていて『20メートル先を右』とかナビが言ってるけどその先の道は表示されないやつ)

この方法だと、進む位置や角度は間違えないような気がするが、なにしろ自分以外の世界が動くイメージがないので、実際に動いてみたら、周囲の環境が想定外に変わったことに驚き、方向を見失いがちである。そもそもあのナビには、「20メートル先を右」に曲がった先に何が待っているかが表示されないという危険性が伴う。

リーダーでトライアルに出たとき、進行方向に他のカップルがいるな~と思いながらナチュラルターンしたら、目の前にそのカップルが突然現れて、君たちワープしてきたの!?と驚いたことがあるのだが、まあだいたいそんな感じである(大迷惑)。

「世界がどう見えるかを言語化できるか」議論をしたとき、夫に「じゃあ、あなたにはどう見えてるか言えるの」と聞かれたのだが、私の答えはこうである。

「何も見えていない」

「何も見えていない」

言うなれば、スマホのナビに表示されるほんの数メートル分の一本道しか見えていない。その角を曲がったら、自分がどういう環境の中でどの方向を向いて立っているかはイメージできない。何しろイマドキのナビは、角を曲がったら画面がくるっと回って道路が進行方向を向いてくれるのだ。おそらく私は、あの手のナビを内蔵した状態で踊っている。角を曲がってまあまあ何も起こらないこともあれば、風景が激変したり、想定外に車が走ってくることもあるけれど、それは曲がってみないことにはわからないよね?というモードで動いている。

結果として。
先生が言うところの。

いちかばちかで方向を決めてる感じ。

になるのだと思われる。

ちなみに、夫は典型的なシングルタスク、私は極めて優秀なマルチタスクである。先日、オンライン会議に参加しながらメモを取りながら臨席の後輩と別件でしゃべっているところを会議の司会に「けやきさんの意見は?」と振られたので普通にぺらぺら答えたら、後輩に「今のなんの技っすか!?」とびびられた、くらいのマルチタスクである。

つまり空間把握能力とタスク処理能力は別物で、さらにいうならマルチタスクであることとダンスのセンスには相関関係は一切ないと思われる。

・・・・・・・。

さて。
私はリーダーとして、リーダーの衣装が似合う、意外の武器を何ひとつ持っていないことが判明したところで。

とりあえず夫にダンスを勧めることから始めてみたいと思います(笑)
分析はできたが解決はできていない

(解決できたらつづきを書くかも)

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