リーダー修行記62(『異次元の視野と目線の話』フェーズ2)
みなさまもう飽き飽きだとは思いますが、引き続き目線の話にお付き合いください。
私の先生がレッスン中、5分に1度は頭の位置、10分に1度は目線、15分に1度は祈りの話をしていることはそろそろ周知の事実かと思われますが、本日は「目線」、つまり「見る」という概念が根幹から崩れ去ったお話でございます。
それは、私がダンスを始めたときから憧れていて、ダンスを始めたときにはよもやリーダー側でやるとは予想だにしていなかったクイックのランの練習をしていたときのこと。走ることでいっぱいいっぱいな私に、先生が突然こう言い放ちました。
「顔は進行方向を向かないで」
ん?
「顔が走る方向に向きすぎ」
いやいやいやいや、進行方向見ないで走れるわけないじゃん、リーダーなのに。
先生「顔は走る方向に向けないで、進行方向はこめかみから見る感じ」
私「???」
先生「眼を向けるんじゃなくて、額全体で広く見る感じ」
私「………?」
何を言われているのか皆目わからん。これはなんの比喩なんだろうか。先生、常日頃あまり比喩を使わないから比喩慣れしてないんだろうか。使うならもうちょっとわかりやすい比喩でお願いしたいのだが。
と訝りつつ、言われた通りの方向に顔を向けてみたものの……。
私「とっても怖いんですが」
先生「怖い???」
私「これだと、見えない方向に爆速で突っ込んでいかなきゃいけないじゃないですか」
先生「こめかみから見る感じだよ」
だからなんの比喩なんだよ。
と突っ込みたい気持ちになりましたが、ふとこれまでフロア上で巻き起こった数々の視野視界の噛み合わなさを思い返してみたら、よもやこれは比喩ではないのではないか、という恐ろしい仮設が私の脳裏をよぎりました。
先生、もしかして、本当にこめかみから「見えて」ます?
先生「こめかみからから広く見渡す感じ」
私「こめかみから広く見渡す……(何語?)」
先生「『眼を向ける』方向と、『目線』がちょっとずれる感じって言えばわかる?」
私(今、なんとおっしゃいました?)
………わかるわけない。
わかるわけない。
わかるわけない!!!
「目線」って「眼を向ける方向」じゃないの!?
ここで、さんざっぱら文字で叫んでいる私ですが、フロアで叫んだことは、古今東西これが初めてではないでしょうか。
私「『目線』って『眼を向ける方向』じゃないの!?」
先生「違うよ(爆笑)」
いや待て、これは「違うよ(爆笑)」ですまされる話ではない。笑ってる場合ではない。リーダー修行を始めて早1年と5ヶ月間、10分に1回指摘される「目線」の話を、私はずっと「眼を向ける方向」だと思って今日まで来たのです。「足を出すな目線だ目線」と詰められたリーダー初レッスンから今日に至るまで、そう思ってきたのです。目線を制するものはリーダーを制すと信じて。
「目線」って「眼を向ける方向」じゃないの!?
先生「視界全体に見える『線』のことだよ」
もはやホラーとしか思えませんが、どうやらこの人は、本当に額全体で世界を見ることができるらしいです。
私「『線』なんて見えない。『点』しか見えない」
私は人間なので、世界は両目でしか見えないし、目の先の一点しか見えないです、妖怪じゃなくて申し訳ないんですが。
リーダーのランは、背中を半分進行方向に向けて、ほぼ後ろ向きに走っている感じなので、点しか見えない私は、どうしても顔を首ごと進む方に向けてしまうけれど、確かにそんなリーダーは見たことがない。顔は身体に対してほんのちょっと斜め左を向くくらい。
なんということだ。あの人たちはみんな、あの向きで進行方向が見えているのか。私は今、鏡に映った自分の姿しか見えないのよ、Do you understand?
先生「あ、だからけやきさんは、目線って言ったらそっちを向いちゃうんだね」
私「だって向かないと見えな&‘#=$&“‘~¥%’」
先生「見てって言うと本当に見ちゃうもんね」
私「‘&#“U~”*W@@|!#>‘+‘=*」
この日を境に、私のリーダーレッスンでは「目線」と「見る」は使用禁止用語になりました。先生と私の概念が違いすぎて、意思が疎通しているようで実は疎通してないことに気づいたからです。
でも先生、日頃のレッスンでも「目線」を多用してますよね?
女性の生徒さんたち、みんな「眼を向けること」だと思ってますよ。人間だもの。
(いつかフェーズ3に続く)
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