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ボーカロイドの深淵を覗こう #17

こんにちは。ボカロが好きです。ボカロはいいぞ

 さて、「アンダーグラウンドボカロジャパン」「感性の反乱β」「POEMLOID」「VOCALOIDよれよれ曲リンク」「ボカイノセンス」の全曲周回を目指して感想を書いていくシリーズの17回目です。最終的にこれらのアングラボカロジャンルの目録として機能するようにするのが目標です。第一回はこちら

 クレジットについて、概要などに表記がなければ作詞作曲を投稿者本人が行ったとして表記します。絵や動画については概要欄/タグ/動画内にクレジットがある場合のみ表記します。

 また、万が一ですが、クリエイター様御本人で自分の曲を紹介してほしくないということがありましたらご連絡ください。その番号を欠番として紹介を取り下げます。

それでは いきます。


0161. 破 棄ぬ もすと見け / 問題児P

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:問題児P
ボーカル:巡音ルカ
投稿:2009/4/12

つぶやくような意味のあるのかないのかわからないような歌詞と過剰なまでのノイズエレクトロ。ノイズと言っても三分弱の中で展開が何度も変わり惹き込まれます。


0162. 抵抗しない、殺して早く / 楽しいのかP

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:楽しいのかP
ボーカル:初音ミク
投稿:2009/4/12

 ローテンポでダウナーなロック。2:30頃からのギターが特に好きです。「まだかなぁー?」というコーラスがよれたギターのメロディ、タイトル、ローテンポと響き合ってすべてを諦めたような諦念の境地を感じます。


0163. おめが / SCP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:SCP
絵:まちざわ
ボーカル:初音ミク
投稿:2009/4/13

 伸びやかなミクの声が美しい聞き入るエレクトロ。「君を探していた」というミクが部屋にとじこもる「オメガ」に話しかける内容。救い主のようなミクの精神的大きさが透き通って広がるかのような声にとてもあっています。ピアノもとてもきれいで好きです。


0164. お話教室 / konsyoku

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:konsyoku
ボーカル:初音ミク
投稿:2009/4/13

 今までの中でもかなり強烈なノイズです。音楽ジャンルとしてのGlitchにふさわしい「お使いのPCは正常です」な高音ノイズや音飛びが不規則なランダム性を曲に与えています。それに合わせてモールス信号のようなミクのコーラス、サンプリングされたようなサウンドの不規則な挿入が、古いラジオを聞いているようです。
 ラジオのようなサンプリングといえば、「4分33秒」で有名なジョン・ケージに「Radio Music」という作品があります。これはラジオを楽器に見立てて、その時に放送されている音楽を混ぜ合わせて作品とするものですが、その本質は偶然性です。偶然性は聴衆を評価者とすることを拒みます。ケージはこれを次のように述べています。

 線形リニアな芸術は常に予測されます。必ずそれを手に入れることができる。それは足跡を辿って追いかけることに似ています。遂にはそれに追いつき、そして一度摑まえてしまえばそれを自分のものにすることができるのです。しかし枠のない芸術はひたすら逃れていきます。ですから私は評価を下せない立場に自分を置きます。判断を下すとき、私は自分が小さくなったような気がする。そういうわけで私は豊かさを、非-線形ノン・リネアリティなことを好むんです。

ジョン・ケージ, 青山マミ訳『小鳥たちのために』1982,清土社,p.110

 機械で入力の通り発するボカロや打ち込みはその偶然性の対極にあります。しかしながら、このようなサンプリングの不規則さやノイズによってあたかもイベントに巻き込まれたような不意打ちを与えている面白さがあります。


0165. でかいガキ一人 / FuzzP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:FuzzP
ボーカル:初音ミク
投稿:2009/4/14

 これまでも何度か登場しているFuzzに並々ならぬ愛情と情熱を持ったFuzzPの楽曲。遂にミクそのものにFuzzを通しています。マイリスコメントによると使用したのはeffector13 torn's peaker。「ああああああ」というがなりがとてもかっこよくその目指すところの魅力を見せつけられます。それに合わせたギターもとてもセンスが良く気持ちいいです。


0166. acutecare / ちゃぁ

タグ:感性の反乱β
作詞・作曲:ちゃぁ
絵:riria009
ボーカル:巡音ルカ
投稿:2009/4/20

 低音の響きがとてもかっこいいルカ曲。ルカとインダストリアル似合いますね……。2:41からのメロディやノイズとともに歌われる狂気さがとても良いです。それでいてキャッチーさもあるメロディで狂気と楽しさは紙一重なんだなと実感します。
 イントロの今からすごいのが始まるぞという感じもとても良いです。そしてそれに見合った濃い内容でとても良いです。


0167. I Don't Wanna♪ / 村雨の大吉P

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:村雨の大吉P
ボーカル:初音ミク
投稿:2009/4/21

 オケのメロディと響きがとても好きです。よれた声の「やだーやだー」がその無気力さをよく表現しています。オケの不安定さもやだやだの地団駄のようです。


0168. 補給待ち空想日常うわーん / broiler

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:broiler
ボーカル:鏡音リン
投稿:2009/4/23

 電波的な歌詞が魅力のリン曲。間奏での不協和音な音のグワーーンという感じや、何かを暗喩しているような分かるような分からないような内容で不気味ながらも聴き込んでしまいます。


0169. Industrial (Miku) Walk / Tookato

タグ:アンダーグラウンドボカロジャパン
作詞・作曲:Tookato
ボーカル:初音ミク
投稿:2009/4/24

 イラストからも伝わるミニマルなインダストリアル。工業的な電子音と一貫した繰り返しが流れ作業で大量生産の工場をそのまま表現しています。それでいて騒音ではなく音楽となっているミクの声に楽しさを感じます。
 サムネの話になってしまいますが、組み立てられるロボミク概念いいですね。ドラえもん誕生でもこんな描写ありましたね。『南極点のピアピア動画』でも自律的に材料を調達して自身を作っていくミク(っぽいキャラ)と生産工場が登場します。ロボット工場って夢があります。


0170. Kuraaa / アンテナP

タグ:VOCALOIDよれよれ曲リンク
作詞・作曲:アンテナP
絵:時田
ボーカル:鏡音リン
投稿:2009/4/25

 時田トリビュート。時田さによるイラストの題は「くらぁ」です。鼻血でくらぁとなるリンの意識の遠のきのようなものが刻まれたサウンドから感じます。40秒位からの刻み方が特に好きです。
 そして最後にフェードアウトして意識が遠のき、「鼻血がでるほど…最高です。」と製作者からの想いに再変換される視点と意味の転換が好き。リンちゃんや時田さんへの思いが伝わります。


今回はここまで。それでは!


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周回の中で特に気に入った曲をマイリストに入れておきます



日記 2022/5/27

 一般ミーハーインターネッツオタク丸出しで申し訳ない(?)んですけど、この間にじさんじでデビューした壱百満天原サロメお嬢様の配信が面白すぎる。

 Vtuberはあんまり見ない(GYARIさんのところのVOMS、兎鞠まり、月ノ美兎あたりをたまに、周防サンゴちゃんの切り抜き、おにくるちゃんくらい)のですが、単純にオモロパワーが強い。あと発される喩えが全部わかってしまって(嗚呼、この人は私と同じ世代のインターネットを通ってきたんだな……)となります。絶望先生とかすきそう(偏見)

 Vtuberはほぼ見ないんですけど、キズナアイを初投稿から二動画目くらいで知ってチャンネル登録したのは密かな自慢です。アセットのキャラモデルを友だちって言ったり、誤BANされてニコ動に急遽動画投稿したり、それが巨大コーラのボトルに飛び込む動画の直後で、「服も身体も等しくバーチャルだからある意味では全裸」という理屈で全裸で飛び込む動画を投稿されたからBANされた、とか冗談を言われてたのが懐かしいです。まさかこんなに大きなムーブメントになるとは。

 さてVtuberといえば時々、「結局2次元に命を吹き込むのではなく2次元が3次元の代わりになっただけ」みたいな意見を批判的に見かけることがあります。私はその「命を吹き込まれた二次元」としてのVtuberも現在主流の形態のVtuberもどちらも違った良さがあると思っていますが、なぜ前者が主流にならなかったかを考えたとき、前者があまりにもオタクにとって理想的であるがゆえのことではないかとも思います。

 もちろんその世界観やブランドを構築し維持するのにあまりにも手間暇やコストがかかるというのもあると思います。それに加えて個人的には市場としての枠のレイヤーが両者で異なると思っています。

 後者の「三次元の代わりとしての二次元」においてはキャラクターの数だけ枠があるといっても過言ではありません。「お嬢様」「委員長」「ピエロ」「アイドル」「悪魔」「アンドロイド」「モンスター」……枠の数は無数にあり、その枠の中でもあらゆる方法で個性を演出でき魅力を発揮できます。そのため多くの人が参加してもそれぞれに居場所があるように思います。

 対して前者はそもそもその枠そのものに強烈すぎるまでの魅力があります。アニメその他いわゆるオタクならば誰でも願うような存在です。そういったものが実際に実現されたとき、そのキャラクターが「アイドル」であることよりも「生きた二次元である」ということのほうが認識の前面に表象されます。その結果として前者は「生きた二次元である」という一枠しかないことになるのではないでしょうか。そしてその枠はキズナアイが完璧に達成してしまっている。

 だからこそキズナアイと異なる方向性を模索した結果、キャラクターを演じることに力点を置く枠が開拓され今に至るのではないか、そうぼんやり考えています。理想的すぎたゆえに、そしてその開拓者があまりにも強いがゆえに、それがメインストリームにならなかったのかもしれません。

 音声合成シーンも最近はCeVIOやSynthesizerVなどAI系のソフトが主流になってきて周波数接続系は徐々に下火になってきてしまっているように思います。そしてAI系は「人間の再現」としては途轍も無い速度で進歩しています。

 しかしながら人間を模倣した声はミクが目指した「未来からきた初めての音」ではありません。

 これもまたVtuberと同じことが言えるのではないでしょうか。初音ミクが打ち出した「未来からきた初めて音」というコンセプトそのものがあまりも強力であるがゆえに、一枠とは言わないまでも、あらかたその枠は埋まってしまっていて、そうではない道の模索として「人間の模倣」が主流になったのかもしれません。「人間の模倣」ならば人間の声の数だけ枠がありますから。

 存在の概念そのものがあまりにも強力だからこそ、傍流と思われた在り方が主流になる、というのは探せば他にもあるのかもしれません。

 とはいえこんなに変化や刺激があるシーンもそうないので、ボカロ(広義)もVtuberも永く広く発展してほしいものです。

 バーチャルお嬢様といえばオモコロライターの金輪際雑魚お嬢様も大好きなので最後に布教しておきます。


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