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『不思議の国のアリス』公爵夫人の2つの顔

『不思議の国のアリス』第6章の公爵夫人の屋敷の場面の挿絵を見て下さい。

・・・「醜い顔の」公爵夫人がいますね。

では、上下逆さにしてもう一度見て下さい。

・・・「尖り顎の」公爵夫人が現れました。

第9章のクローケーの場面で彼女が再登場した時、「夫人の顎が尖っている」という描写に戸惑った人も多いのではないかと思いますが、こんな仕掛けだったのですね。

「上下逆さの顔」や「襟巻きを着けたような尖り顎」は『鏡の国』のHDやスズメバチの台詞でも言及されています。

これは単なる挿絵の遊びではなく、別の意味も込められています。
屋敷の場面ではとても怒りっぽかった夫人が、クローケーの場面では妙に優しくなっていましたよね。どちらも説教好きでしたが。

この「正反対の性格」がタロットの正位置と逆位置を表しているのです。
「説教好き」という属性はhigh priestessのカードだから。

『不思議の国のアリス』の物語はトランプのゲームになっていて、前半がポーカー、後半がブラックジャックなのですが、それに加えて物語全編にタロットの寓意が散りばめられているのです。
『地下の国のアリス』の構造も同様。
『不思議の国』よりやや簡素ですが。

第1章でアリスがDRINK MEの瓶を前にしていたとき、「火掻き棒を握ると火傷する」とか「ナイフで切ると血が出る」という表現が出てきましたが、「チェリータルトの味」と合わせてpoker→poker、jackknife→black jack、cherry tart→tarotだったんですね。

この3点セットへの言及は、『不思議の国』だけでなく、『鏡の国』などの他の作品でも繰り返し登場します。

例えば『鏡の国』の白の騎士が乗る馬には、火掻き棒とニンジンと「トゲ付きの足輪」が装備されていますね。
pokerやcarrot→tarotは分かり易いですが、足飾り→anklet→子供用靴下→靴下はJの形→jack→blackjackという連想は、答からの逆算でないと少々辛いような気もします。

ポーカー、ブラックジャック、タロットについては、項を改めてやります。

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