記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

『鏡の国のアリス』のチェス問題②(物語との関連)

回答手順と物語の関連(主なもの)

1.○Nd4 花壇中央の木、「バウワウ」①
1.●Qh5 赤の女王「2,3,4,5」と数えて去る
2.○Nf5
2.●Nf6
3.○d4 双子との会話、"harf past four"
3.●Nd5 ナイチンゲール来襲②
4.○Qc4 白のクイーン、赤のナイトを攻撃
4.●Nf4 白のナイト孤立(牢の帽子屋)
5.○Qc5 白のクイーン、白のナイトを守る
5.●Ng6
6.○d5
6.●Nf8 赤のナイト、森に潜む
7.○Qf8
7.●Ke5 羊の店の中に木が出現③
8.○d6 HD、アリス後方の木に話しかける
8.●Ng6 赤のナイト、白のクイーンを攻撃
9.○Qc8 白のクイーン、攻撃から逃げる④
9.●Kf6
10.○d7
10.●Ne7+ 赤のナイト、「チェック!」
11.○N×e7+ 白のナイト、「チェック!」⑤
11.●Kg7 白の騎士、詩を聞かせる⑥
12.○Nf5+ 「白の騎士、
12.●Kf6   まず左に、次は右に、
13.○Ne3+  4~5回落馬しながら
13.●Ke5   戻っていく」
14.○Nc4+  (12.○Nf5+から
14.●Ke4    16.○Nf5+まで)⑦
15.○Nd6+
15.●Kd4
16.○Nf5+
16.●Kc3
17.○Kd6+ 雀蜂、アリスの後方から登場⑧
17.●Kd2
18.○Rf2+
18.●Kd3
19.○d8=Q アリス、女王になる
19.●Qe8 女王たちの試験⑨
20.○Qa6+ 白の女王、スープ皿に乗る
20.●Ke4
21.○Q×e8# アリスがチェックメイト
21.●(第11章"Waking"?)⑩

説明

①白のポーンの役を引き継ぐまで、アリスは駒ではなくプレーヤーなので、白の王の棋譜に指し手を書き込んで白のナイトにおかしな動きをさせています。(最善手は○Ng3+)
ここでは8×8の盤面全体が花壇です。

②Tweedledumは「crowだ」と叫びましたが、これは勘違い。「強風と共に夜が来た」のですから、night in gale→nightingale。
転じてknight in gale。
白のポーンがブロックされたのを、アリスが先に進めなくなったことで表現しています。

③赤のキングは、最初こそ「眠る中年男」の姿ですが、後は「樹木」として登場します。
ハンプティ・ダンプティが「アリスの後方にいる木」に話しかけるのも、アリスのポーンがd6、赤のキングがe5のマスにいるから。

④赤のナイトは白のクイーンを攻撃した直後にe7へ移動してチェックを掛けるのだから、それまではh8のマスで待っていたはず。

⑤白の騎士が「チェック」と叫んだのはf1の白のルークの利きがf6の赤のキングに届いたから。discovered check(空き王手)です。

⑥白のポーン、白のルーク、赤のキングがd7、e7、g7に一直線に並んでいます。
赤のキングは「背後の森の黒い影」と文中に書かれていますから、アリスの視点からは「若きキャロル」と「老いたキャロル」が1つに重なって見えているというわけです。

⑦チェス文化圏の人はナイトの駒の動きをL字型ととらえていて、この作品でも前方に2マス進んだ後左右どちらかに落馬して1マス進む、と表現されています。
従って「まず一方に、次はもう一方に4~5回落馬」というのは、e7→f5かf5→e3で始まる4~5手の手順を指していると分かります。
白のナイトが描く円軌道が印象的。
連続王手で玉将を盤の反対側まで運んでいく手法は、長編詰将棋を見たことがある人にはおなじみですよね。

⑧刊行時には削除されてしまった"Wasp"のエピソード。白のキングがd6に移動してd7の白のポーンの後ろに回るという動きが「老雀蜂がアリスの後方から登場する場面」として表現されています。

⑨チェスでは「クイーンのタダ捨て」は普通あり得ない手なのですが、ここではうっかり20.○Q×e8と取ってしまうとステイルメイトという引き分けにされてしまいます(将棋には無い引き分けのルール)。
3人の女王が集う試験の場面で「よく考えてから発言しなさいよ」と繰り返されるのは、このステイルメイトのことなのです。
これに対処するには、詰将棋の打歩詰回避と同じように自分の攻撃力を下げてやれば良いわけですから、2個のクイーンの片方が端へ行く20.○Qa6+がステイルメイト回避の手筋となるわけですね。

⑩本来なら、21.○Q×e8のチェックメイトでゲームは終了です。しかし、キャロルが42という数字にこだわっていたことを考えると、21.●に相当する部分があってもおかしくはないでしょう。
『鏡の国のアリス』の第10章が"Shaking"、第11章が"Waking"に分けられているのは、赤のクイーンが黒猫キティに変わる第11章が「42番目の指し手」だからかも知れません。

⑪最後にもう1つ。問題図に添えられている"White Pawn (Alice) to play, and win in eleven moves."という文の後半部分は、win→white knightから「白の騎士が11手目の局面にいる」という意味になります。

長くなったので今回はここまで。続きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?