見出し画像

誰かが何かを

『鏡の国のアリス』第1章、鏡文字で書かれた物語詩「ジャバウォッキー」を読み終えた直後のアリスの台詞。
これには「ジャバウォッキー」を読むためのヒントが含まれています。

"It seems very pretty,"
"but it's rather hard to understand!"
"Somehow it seems to fill my head with ideas—only I don't exactry know what they are! However, somebody killed something: that's clear, at any rate—" 

『鏡の国のアリス』第1章より抜粋

It seems very pretty
第1連1行目のbrilligの発音がprettyと似ていることから、解読には駄洒落も必要ですよというヒントでしょう。

but It is rather hard to understand
斜体で書かれたratherは第1連4行目のraths outgrabeがrather out‐of‐the‐wayになることのヒントでしょう。

Somehow it seems to fill my head with ideas—only I don't exactry know what they are!
「色々な意味で頭がいっぱいになる」
ジャバウォッキーの第2連から第6連は謎々詩。
チェス手順やウェディングケーキの謎にも関係しています。

However, somebody killed something: that's clear, at any rate—
「だけど誰かが何かを殺したのね、少なくともそれははっきりしてるわ」と訳される一文。
少女剣士が怪物を退治するお話の要約としては適切でしょう。
しかし、killには「殺す」だけでなく「(食べ物を)平らげる」という意味もあるので、「誰かが何かを食べ尽くしたのね、少なくともそれははっきりしてるわ」とも訳せるのです。
謎々詩の答は「スナップドラゴン」で詩文中にはご馳走やお菓子がたくさん並んだクリスマスパーティーの光景が描写されていますから、「平らげる」を採っても意味は通るのですね。
···何というダブルミーニング。
ルイス・キャロルらしいというか、何というか。
自分でも気付かないうちに、アリスは正解を口にしていたというわけ。

第6章で、ハンプティ・ダンプティはbrilligを"'Brillig' means four o'clock in the afternoon— the time when you begin broiling things for dinner."と解説していますが、これは第8章の白の騎士の台詞の中のa new pudding during the meat-courseと関連しています。
broilは「(肉を)炙る」という意味ですから、brilligは「肉のコース」。
brilligを含む連はジャバウォッキーの第1連と第6連ですから、「肉のコースの間」というのは第2連から第5連。
第2連から第5連は謎々詩になっていて登場する怪物ジャバウォックの正体はクリスマスプディング。
···というわけで、白の騎士が言う「肉のコースの間の新しいプディング」の意味がわかりました。

ちなみに、謎々詩の答は「スナップドラゴン」「クリスマスプディング」「クリスマスパーティーで行われるスナップドラゴンというゲーム」あたりが候補でしょうが、第3章に登場する虫の中にSnap-dragon-flyがいることから考えると、snapdragonに絞っていいと思います。

さらにこの後、アリスは"Let's have a look at the garden first!"と言って庭園に向かうわけですが、階段の手すりに触れただけで身体が浮いて滑り降りていったと描写されています。
この動きは、白のナイトが火掻き棒を滑り降りたときのものと同じ。
そこで、この2つを合わせると「firstで白のナイトがgarden(チェス盤のd4)に向かう」となります。
これもチェス手順の初手Nd4のヒントだったんですね。

関連記事


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?