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『鏡の国のアリス』ジャバウォッキー第1連「古詩」への私の回答

ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』(Thorough the Looking-glass, and what Alice found there, 1871)第1章に出てくるJabberwockyの第1連(第7連)の4行詩は、「アングロサクソンの古代の詩の断片」と称されることもあるパズルです。

'Twas brillig, and the slithy toves
Did gyre and gimble in the wabe;
All mimsy were the borogoves,
And the mome raths outgrave.

作者が『鏡の国』や『スナーク狩り』の序文に寄せたヒントを参考にしながら、第6章のハンプティ・ダンプティとアリスの会話に添って私の回答を述べていきます。

1行目

①brillig, and the→brilliant
brillig+and+the→brilliant
②slithy t-→play that
ハンプティ・ダンプティの説明にlithe and slimyとありますから、sli-と-thyに区切って考えます。ヒントに「iは長く発音する」とあるので、長音もしくは二重母音。lithe, slimyの発音と前後の文脈から考えてplayとします。
-thyはtovesのt-と繋がってthat。
(2022/12/01追記)
当初sliの解釈をlay(物語詩、歌)としていましたが、play(劇、戯曲、脚本)に修正しました。
第6章のハンプティ・ダンプティの台詞"'Lithe' is the same as 'active'."のactiveが理由です。
文の意味はほぼ変わりません。
③tove-→wove the
ヒントに「tovesはgrovesと韻を踏む」とありますから、[ouv]を含むwoveとします。
④-s→the
sの発音[z]からの洒落でthe。

2行目

④Did gyre and→disguised
「gyreのgはhardに発音する」ので[ガイア]、アナグマにもトカゲにも栓抜きにも似ているというのは正体を偽装しているからですね。
よってDid+gyre+and→disguiedとします。
⑤gimble→gamble
日時計の下に巣を作る→カジノのルーレット
⑥in the wabe→in a way
会話の中でa long wayが3回連呼されます。

3行目

⑦mimsy→mimicry means
カバン語のmimsyはflimsy and miserableとあります。flimsyからは「複写紙」の意味があるのでmimicを連想。miserableからは「貧しい」の意味でmeanを連想。
ただし、mimicとmeanの組み合わせでは、カバン語にしたときsとyが足りなくなるのでmimic→mimicry、mean→meansに。
辞書の用例を見る限りmeans of mimicryが正しいのですが、ハンプティ・ダンプティの台詞が「flimsy, miserable」の語順なのと、詩では多少の破格文法も許されることからmimicry meansとします。
ofが入ると語呂も良くないですし。
⑧were borogove-→were borrowed of
作者のヒントにborogovesのoはborrowのoで、とあります。素直に従いましょう。
⑨-s→the
1行目の行末と同様です。

4行目

⑨And the mome→anthem or
momeはfrom homeを縮めたものとあるので
m-と-omeの2語と考えられます。
and+the+m-→anthem
mの字にはrの字が含まれるので-ome→or
⑩raths out-→rather
作者のヒントに「rathはbathと韻を踏む」とありますから、rathの発音は[ラァス]。
しかしbathの複数形bathsの発音は[バズ]なので、rathsも[ラズ]となるはずです。
次の単語がoutですから、2語にまたがってラズ+アウト→ラザー→ratherとなります。
⑪outgrave→out-of-the-way
bellowingとwhistlingの間にsneezeが入るという説明から、outの[au]とgraveの[ei]を含む2語の間にn'やo'を挟んだ複合語でしょう。
辞書を見るとout-of-dateと out-of-the-wayが候補として挙がります。
更に、ハンプティ・ダンプティが「この先の森の中で聞くことになるだろう。1回聞けば十分」と言いますが、この場面より後の森といえば白騎士と遭遇する森だけ。
そこで第8章の本文を頭から読んでいくと、2人の騎士の戦闘開始直後にこんな箇所が。
…Alice got behind a tree to be out of the way of the blows.
これでout-of-the-wayに確定しました。

完成形

'Twas a brilliant play that wove the
disguised gamble in a way.
All mimicry means were borrowed of the
anthem, or rather out-of-the-way.

(それは偽装したギャンブルで構成された素敵な物語。全ての言葉遊びの手法は古典から借りてきたもの、いやむしろ奔放な思い付きによるものです)

2行目のin a wayと4行目のout-of-the-wayが対になっているのが分かります。
この2つのwayに3行目のmeansを加えて
way×2+means×1→Ways and Means。

これは白の騎士の台詞"The song is called 'Ways and Means': but that's only what it's called, you know!"に出てきます。

4つのTheが指すもののうちの1つが、この4行詩だったというわけですね。

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