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『源氏物語』桐壺系10帖と帚木系10帖(仮)

いわゆる「生成論」の私家版です。

『源氏物語』は1桐壺~33藤裏葉を第一部、34若菜~41幻(雲隠)を第二部、42匂宮~54夢浮橋を第三部と分けるのが定説ですが、私は1桐壺~20朝顔を第一期、21少女~40幻を第二期、41雲隠~54夢浮橋を第三期とする見方もあると考えています。

第一期の20帖は、桐壺系10帖→帚木系10帖の順で発表されたと推定しました。

「原型の物語」桐壺系10帖
①1桐壺
②5若紫
③7紅葉賀
④8花宴
⑤9葵
⑥10榊
⑦12須磨
⑧13明石
⑨14澪標
⑩17絵合

「原型の物語」は①と②、③と④、⑤と⑥、⑦と⑧、⑨と⑩と2帖ずつ対になっているのが特徴です。「起承転転結」の5部構成。

「外伝+後伝」帚木系10帖
⑪2帚木
⑫3空蝉
⑬4夕顔
⑭6末摘花
⑮11花散里
⑯15蓬生
⑰16関屋
⑱18松風
⑲19薄雲
⑳20朝顔

⑪以降の二条院時代が「外伝」、二条東院が落成した⑱または⑯以降が「後伝」です。
「後伝」からは両系統の登場人物が合流。

ちなみに六条院落成の21少女からは第二期に入ります。建築が物語の区切りですね。

上記のように分けると、登場する女君たちが対の関係になっているのが見えてきます。

【桐壺系10帖⇔外伝】

藤壺&若紫⇔空蝉&軒端荻
(光源氏と一度関係した後逃げ回る人妻と、身代わりにされる親族の少女)

六条御息所&葵の上⇔六条御息所?&夕顔
(六条御息所?と取り殺される子持ちの女)

明石の君⇔末摘花
(唐物の衣装を愛用する外地の女)

朧月夜⇔花散里
(弘徽殿の女御の妹と麗景殿の女御の妹)
(父の妃の妹=系図上では光源氏の叔母)
(捜していた女に会えなかった帰り道で)

【後伝】

後の秋好中宮⇔朝顔の君
(伊勢神宮の前斎宮と賀茂神社の前斎院)
(どちらも光源氏の求愛を拒絶)

朝顔の君は、もしかすると帚木系10帖で追加されたキャラクターかもしれません。
(初登場が2帚木なので。桐壺側に加筆?)

また、空蝉の話は3空蝉(小袿を残して去る)と16関屋(義理の息子に迫られて出家)の2帖があるので、「桐壺更衣+藤壺」とも考えられます。

同様に、末摘花の話は6末摘花(光源氏と頭中将が1人の女性を争う)と15蓬生(荒れた場所で光源氏を待つ)の2帖があるので、「源内侍+明石の君」とも考えられます。

私としては、こちらの解釈の方が本命です。

「帚木系10帖」は「桐壺系10帖」のセルフパロディのような意味も込めて構成されたというイメージでしょうか。
桐壺系が「上品の女」で外伝が「中品の女」のようにも見えます。

そして、「雨夜の品定め」で話題に上る女性たちが「帚木系外伝」に登場する女性たちと対応しているようなのです。

【雨夜の品定め⇔帚木系外伝】

「木枯しの女(浮気な女)」⇔空蝉
(関係を強要したのは光源氏の方ですが)

「常夏の女」⇔夕顔
(残した子どものことが気がかり)

「葎の屋敷で待つ女」⇔末摘花
(15蓬生のエピソード)

「博士の娘」⇔花散里
(花橘は香りが強い、蒜も・・・)

「帚木系10帖」を仮定した場合、2帚木の「雨夜の品定め」は外伝シリーズの冒頭部分ということになります。

青年貴族たちが好き勝手なことを言い散らすこの場面は、帚木系全体の予告としての役割も果たしていたという仮説なのですが。

・・・どうでしょうか。

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