創作小説(15) 蚊!子!丑!寅!卯!辰!巳!
「6月17日土曜日っと。」
娘の桜が日記を書いている。
「ちなみに今年の干支は何か知ってる?」
母親の宏美が尋ねる。
「今年は、寅年!」
桜が元気よく答える。
「残念でした、今年は卯年。」
意地悪そうな、それでいて優しい目をして宏美が答える。
「え、そうかな?蚊!子!丑!寅!卯!辰!巳!でしょ、午!羊!…。」
え...?
「え、何か変なの混ざらなかった?
もう一回言ってみてよ。」
「蚊!子!丑!寅!卯!辰!巳!…。」
娘の干支にはネズミの前に蚊がきている…。
どうしてこんなことになったのだろうか…。
また何か勘違いをしているのだろうか...。
友達に変な話を吹き込まれたのか…。
そういえば、干支が載っている絵本は桜のお気に入りだった。
調べてみよう。
絵本は先日のキャンプの携行品と共にしまってあった。
まだ片付けが一向に進まない。
大好きな本だから寝る前にと思って持って行ったんだっけ。
本を開いてみると、爽やかな夏草のにおいがする。
もう夏だ。
そして、一直線に並んだ干支の前に潰れた蚊が一匹いた。
あぁこれで間違えて覚えたのか…。
一直線に並ぶ干支。
その前に潰れた蚊。
でも、一匹ぐらい、虫がいたって良いじゃない。
でも、これからは蚊の季節。
「桜、蚊は干支じゃないの。干支だと迂闊に潰せなくなるでしょ。」
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